アルフォンス・ミュシャの大傑作「スラヴ叙事詩」の見どころをチェック!

アルフォンス・ミュシャの大傑作「スラヴ叙事詩」は全20作!見どころは?

アルフォンス・ミュシャの大傑作「スラヴ叙事詩」は全20作!民族の想いをこめた大傑作

アルフォンス・ミュシャは、アールヌーボーを代表する芸術家の1人です。その作品は、現代の日本でも高い人気を誇っています。「ミュシャ」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、淡い色彩で、端正で優美な曲線を特徴とする女性の絵でしょう。

人体のフォルムを太い曲線で囲うことで、独特なデザイン性のアルフォンス・ミュシャ手法のイラストもちらほら見られます。しかし、そうした作風とはまた異なった絵を描いたのも、アルフォンス・ミュシャのすごいところです。特に、大傑作といわれる「スラヴ叙事詩」は、全体的に暗い色調の中に、人々の姿が描かれています。

「スラヴ叙事詩」を構成するのは、1910年から1926年という長い時間をかけて完成した、壁画サイズの20作品。絵の題材は、チェコとスラヴ民族に受け継がれた伝承や、神話、そして歴史です。完成後は、1928年にプラハ市に寄贈され、2012年までは、チェコ共和国にあるモラフスキー・クルムロフという街の城館に展示されていました。2012年以降は、プラハ国立美術館のヴェレトゥルジュニー宮殿に展示されています。

アルフォンス・ミュシャ「スラヴ叙事詩」の見どころは?鑑賞前に歴史的背景を知ろう

アルフォンス・ミュシャが、長い歳月をかけて完成させた「スラヴ叙事詩」を観るにあたり、彼の祖国であるチェコの歴史的背景を押さえておくことをおすすめします。アルフォンス・ミュシャが「スラヴ叙事詩」を制作したのは、「チェコの国民が自分たちの歴史と向き合うための絵画をつくろう」と考えたことがきっかけだそうです。

大国に囲まれた小国であるチェコは、多くの民族から支配を受けていました。ドイツの植民地になったり、近隣国の支配を受けたり、ハプスブルク家の支配を受けたりといった政治的・宗教的な抑圧が長く続いたチェコ。第一次世界大戦後には、他の民族や他の国家からの干渉を認めないという民族自決権を掲げて、同じ西スラブ系民族のスロバキアと統合し、チェコスロヴァキア共和国の独立を宣言しました。

しかし、チェコスロヴァキア内部では、文化的に異なる点もあったチェコ人とスロバキア人が対立を深めることに。アルフォンス・ミュシャの「スラヴ叙事詩」は、こうした民族の背景や、時代の流れに大きく影響を受けて制作されています。3作目の「スラヴ式典礼の導入」は、9世紀のモラヴィア王国(チェコ共和国)で、ローマ教皇側の反対を押して、母国語でキリスト教典礼の普及を実現した姿を描いています。8作目「グルンヴァルトの戦いの後」は、中世ヨーロッパにおいて最大の戦いであるグルンヴァルトの戦いを題材としていますが、勇ましい絵ではなくその後の惨状を描くことで戦争の虚しさを訴えました。

アルフォンス・ミュシャのグッズやポスターの魅力!美術館の所在地は?

アルフォンス・ミュシャのグッズやポスターの魅力!アールヌーボーの本領発揮

アルフォンス・ミュシャの作品の中で、もっと広く知られているのは、女性と花を淡い色彩で描いた連作である「四つの花」でしょう。美しいモチーフや流麗な曲線が魅力なこれらの絵は、リトグラフで大量生産されたため、一般の人でも比較的、手の届きやすい価格だそうです。

アルフォンス・ミュシャのこうした作品群は、生計を立てるために、彼がポスターや挿絵として描いたものです。広告を目的に描かれた作品であるため、ポスターやグッズという形態と抜群の相性を誇ります。アールヌーボーを代表する芸術家の作品を手軽に飾ったり楽しんだりできることは、愛好家には嬉しいですね。

アルフォンス・ミュシャのグッズが入手できる美術館の所在地は?本拠地プラハ以外に堺市にも

アルフォンス・ミュシャのグッズを手に入れようと考えて真っ先に浮かぶのは、本拠地であるプラハの「ミュシャ博物館」にあるミュージアムショップでしょう。ここには、ミュシャ博物館だけのオリジナルグッズがあり、絵はがき、写真、カレンダーの他、グラス、アクセサリー、スカーフ、ランプなども販売しています。

「プラハまで行けない!」という場合は、日本の大阪府堺市にある「アルフォンス・ミュシャ館」がおすすめです。月曜・年末年始以外は基本的に開館しており、アルフォンス・ミュシャの作品が常設展示されています。ミュージアムショップでは、ポスターやブックマークの他、オリジナルグッズのクリアファイルや一筆箋、マグネット、ステッカーを販売。堺市の「アルフォンス・ミュシャ館」は、JR阪和線「堺市」駅近くにある、「ベルマージュ堺」という2つの高いビル(弐番館)に入っています。

アルフォンス・ミュシャ「スラヴ叙事詩」全作品が来日!世界初のミュシャ展で新しいミュシャに出会う

アルフォンス・ミュシャの「スラヴ叙事詩」全20作品が、2017年、なんと日本へ初上陸中です。それが、3月8日から国立新美術館で始まった「ミュシャ展」。「スラヴ叙事詩」がチェコ国外に出るのも世界で初めてのことで、この展示の実現は「奇跡」とまでいわれています。

もちろん、「スラヴ叙事詩」以外の作品約80点も一挙公開されており、これほど大規模で本格的なミュシャ展は、これからの日本でもいつ実現するか分かりません。通常の展示ではなかなか味わえない、縦6m×横8mという巨大な作品群を含むミュシャ展は、2017年6月5日まで開催されています。

アルフォンス・ミュシャが心血を注いで完成させた「スラヴ叙事詩」ですが、完成当時のチェコの人々からは、「作品の意図が保守的だ」として、なかなか受け入れられませんでした。1960年代以降は、人前に出されることもほとんどなく、全20作品が再び公開されるのは2012年5月のこと。それから5年を経た2017年は、日本とチェコの国交回復から60周年であり、かつ国立新美術館が10周年を迎えることから、今回の夢のような「ミュシャ展」が実現しています。

アルフォンス・ミュシャの作品としてよく思い浮かべられるのは、ポスターやグッズにあるような、美しい女性が描かれた優美なデザインの絵です。しかし、チェコ人の重い歴史と、民族としてのアイデンティティを真摯にとりあげた「スラヴ叙事詩」という作品を観ることで、芸術家としてのアルフォンス・ミュシャの想いをより強く感じることができるでしょう。

アルフォンス・ミュシャのファンのみならず、アールヌーボーのテイストは苦手だと感じる人でも、「スラヴ叙事詩」にはまた違った印象を抱くはず。これまで見てきたものを改めて見つめ直すとともに、別の視点を得る良いチャンスですね。

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