朝井リョウ小説「何者」は「何様」のサイドストーリー!あらすじネタバレ!

朝井リョウ小説「何者」は「何様」のサイドストーリー!あらすじネタバレ!

朝井リョウの小説「何者」は現代の就活事情を鋭くえぐる問題作!

朝井リョウは、岐阜県出身で、1989年生まれ。27歳の若き直木賞受賞作家です。これまで、芥川賞や直木賞を受賞した若い作家の作品の多くは、各時代を生きる若者たちの、尖鋭的なサブカルチャーを描いたものが多かったように思われます。しかし、21世紀も10数年も過ぎると、時代や体制に対する反逆や、大人対若者といった、明確な対立軸がなくなり、圧倒的な管理社会の中で生きる、脆く不確かな個人といったがテーマが多くなっているようです。

2013年、戦後最年少で直木賞を受賞した朝井リョウの「何者」は、大学の就職活動を通して、自分とは一体何者なのかを描く、一見青春小説のようにも読める作品となっています。しかしながら、友情や恋愛より優先されるリアルな就活事情は、極めて辛辣な、現代の寓話ともいえそうです。

朝井リョウ「何者」の登場人物をさらに深く知りたいなら「何様」を読め!

朝井リョウの「何者」は、就職をめざす男女の大学生5人が、情報交換を目的に作った就活サークルを舞台に展開します。メンバーの就活ぶりを冷ややかに、また密かに見守る物語の語り部となるのが「拓人」。彼の目を通して、ほとんど就職活動していない光太郎や、光太郎が好きな端月、真面目に就活に取り組む理香と、就職活動には興味を示さない理香の同棲相手・隆良が、就活活動を進める中で感じる一喜一憂が語られます。

現代の就活は、情報集めが全て。友人であっても、公的なアドレスと私的なアドレスを使い分けるのが当たり前の現在、実は、拓人は、他のメンバーの私的なアドレスを知っています。拓人だけが、メンバーそれぞれの嘘や本音を知っているはずの秘密が暴かれるどんでん返しや、最初に就職を決めるのは誰かという、サスペンス的要素が、読者を飽きさせません。

しかし、若者たちの人間的葛藤と成長が、就活であるというのは、あまりに現代的で世知辛く、矮小な世界観であるという批判が否めないのも事実。朝井リョウによる、「何者」に続く「何様」では、この5人が、それぞれ物語の主人公となって、就活前後のアナザーストーリーを展開。それぞれの生き方、生き様が、より深く描かれています。

朝井リョウが就職先の会社を退職!プロフィールは?

朝井リョウは戦後最年少の直木賞作家

朝井リョウが「何者」で直木賞を受賞したことで、現代の就職事情に、あらためて関心が集まりました。同時に、23歳という最年少で直木賞の受賞者となった朝井リョウ本人にも大きな注目が集まりました。なぜなら、実は、朝井リョウ自身が、就活のリアルな勝ち組であったからです。

朝井リョウは、1989年生まれの27歳。早稲田大学在学中の2009年に、「桐島、部活やめるってよ」で、小説すばる新人賞を獲得。2012年には、同作品が早くも映画化されたことから注目されます。そして2012年、「もういちど生まれる」で、初めて直木賞候補となると、翌2013年「何者」で、史上最年少の直木賞受賞という快挙を成し遂げました。

朝井リョウは就活でも勝ち組で映画会社の東宝へ入社していた!

朝井リョウ本人は、早稲田大学在学中から作家を目指していたわけではありませんでした。就職活動もしっかり行った上、難関中の難関、映画会社の東宝に入社しています。その後も作家活動を続けながら、サラリーマンとしてもそつなく仕事をこなしていた朝井リョウ。

しかし、さすがに直木賞を受賞してまで、二足の草鞋を履くわけにもいかず、彼のサラリーマン生活は、3年ほどで終わりを告げました。21世紀の若き直木賞作家・朝井リョウは、従来の作家のように、この時代や社会に対して、何かしら批判めいたことを口にするわけでもありません。

テレビ番組に出演して趣味のダンスを披露したり、ファンである乃木坂46と対談したり、自作の装丁をジブリに描いてもらうなど、人生の勝ち組として、リア充を満喫しているようです。この感じは、1980年、「なんとなく、クリスタル」で注目を浴びた田中康夫と似てなくもありません。さて、朝井リョウは、これからどのような作家となり、人生を歩むことでしょうか。

朝井リョウが「何者」で主演した同い年の佐藤健に「誰よりもひねくれた性格」と指摘された?!

朝井リョウのマスコミへの露出が、若手人気俳優が結集した映画「何者」が10月15日に公開されることをきっかけに、最近また増えています。朝井リョウと同い年で、映画の主演だった佐藤健は、朝井リョウを評して、「彼以上にひねくれた人間を僕は見たことがないです」と、興味深い発言をしています。これは、主人公の拓人をはじめ、登場人物それぞれのエグい心の裏表を描くことについて、佐藤健が問い質したところ、「あれは小説のことだから」「自分は絶対にそんな人間ではない」と認めなかった朝井リョウを評しての発言です。

しかし、この発言は、朝井リョウの本質を思いのほかに突いているかもしれません。別のインタビューでも、朝井リョウは、謙遜ともうぬぼれともつかないことを語っています。曰く「自分の作家性は、ストーリーの構成や展開ではなく、ストーリーとは関係ない部分の描写や、どうしても伝えたいメッセージの部分にある」。そして、「どちらかといえば、ストーリーを作るのは苦手なので、人工知能が今後発達するなら、プロットは人工知能、執筆は朝井リョウというような合作をしてみたい」と。

しかし、どんな作品も、ストーリーは後から膨らませるものであって、作家として伝えたいメッセージありきが、正当であるはずです。朝井リョウは、彼が語っている内容とは逆で、就活という設定やSNSといった道具立て、そして、主客がひっくり返る構成のうまさなど、どちらかといえばメッセージより小説の技巧のほうが勝っているともいえます。朝井リョウの才能は、誰もが評価するところですが、さて、これからどれだけ書き続けることができるか。彼の作家生活は、まだ始まったばかりです。

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