神田松之丞はチケットが取れない若手講談師!「グレーゾーン」は必聴!!

神田松之丞はチケットが取れない若手講談師!落語との違いは?

神田松之丞はチケットが取れない若手講談師!2015年の「渋谷らくご」で大ブレイク

神田松之丞は、2007年の入門から9年間で120のネタを覚えたという若手講談師。2017年春の段階では、さらに増えて130の持ちネタがあるそうです。現在は、ネタを覚える異様なスピードや活躍ぶりから、「講談界の風雲児」「講談界の救世主」などと呼ばれ、講談を世に広める活動を続けています。

神田松之丞の人気が確定的になったのは、2015年5月に行われた「渋谷らくご」です。もともとイレギュラーな構成で若手を売り出すことで知られている企画ですが、神田松之丞がトリを務めたときは、ヒザ(トリの1つ前)を超大物落語家・春風亭一之輔が務めるという構成でした。

古典落語からつなげ、若手講談師・神田松之丞の新作「グレーゾーン」で締めるという演出は大反響に。以後、めざましい活躍を見せる神田松之丞は、出演する高座がチケット売れ切れ状態になるという事態が続いています。

神田松之丞が行う講談と落語との違いは?張り扇でパパン!と釈台を叩く講談師

神田松之丞が行っているのは講談です。単独で公演されることもあれば、落語と一緒に講談が行われることもあります。では、講談と落語の違いとは何でしょうか。

形式的な違いとしては、座布団が置かれただけの落語に対し、高座に、小さな机である「釈台」を置くのが講談。その机を「張り扇」でパパン!と叩きながら、臨場感溢れる語り口で観客を楽しませるものです。「講釈師見てきたような嘘をつき」とよく言われるように、講釈師は、張り扇や拍子木でリズムを取りながら、歴史にちなんだ読み物をテンポよく読み上げます。

対して落語家は、話を読むのではなく、登場人物になり切って展開される会話芸で沸かせます。道徳的な話の多い講談に比べて、ダメな人間も多く登場し、何よりオチが絶対に欠かせないのも落語の特徴でしょう。講談の歴史は落語よりも古く、講談協会の解説によれば、起源は、奈良・平安まで遡るのだとか。

話芸としてほぼ確立したのは、1820~1830年頃と言われています。もともとは「講釈」と呼ばれていたのですが、明治時代から「講談」という呼び名になりました。神田松之丞が「男性講談師は絶滅危惧種です」と話している通り、女性が進出している点も落語と異なるところです。

神田松之丞「グレーゾーン」あらすじネタバレ!出身校やプロフィールは?

神田松之丞「グレーゾーン」あらすじネタバレ!「白」でも「黒」でもない葛藤を描く傑作

神田松之丞にとって記念碑的高座となった2015年の「渋谷らくご」。神田松之丞の演目は、自身のオリジナル作品「グレーゾーン」でした。「グレーゾーン」の内容や構成は、観客のみならず、落語家からも高く評価されています。主な登場人物は、吉田と、吉田の友人である柿本です。中学生の吉田は、プロレスの大ファンで、柿本や同級生たちに、プロレスのすごさを語って聞かせていました。

しかしある時、プロレスの舞台裏を綴った暴露本が出版されます。スター髙橋の「流血の魔術 最強の演技」によると、吉田が信じていたプロレスには、予め書かれたシナリオがあったと書かれていました。その暴露本をきっかけに、居場所を失った吉田は、落語家を目指して上京し、瀧川鮒八となります。瀧川鮒八は人気を得て笑点へ。

しかし、ここにも台本がありました。吉田が瀧川鮒八となる過程には、大相撲の八百長疑惑も入り込み、プロレスのシナリオと、大相撲の八百長、笑点の台本の3つに、「本物だと思っていたものが実は仕組まれたものだった」という共通点が現れます。この3つの話が最後に1つとなって、大団円へ……。

これぞまさに「グレーゾーン」というわけ。落語に詳しい方はお気付きかもしれませんが、本作は、独特の作風で知られる落語家の「(滝川)鯉八リスペクト作品」でもあります。もともとは関係なく作っていたものの、作っていく中で、次第に滝川鯉八に主人公を寄せていったそうです。

神田松之丞の出身校やプロフィールは?高2で落語と出会って立川談志ファンに

神田松之丞は、1983年6月4日生まれ、東京都豊島区の出身で、本名を古館克彦といいます。小中学校は、地元にある豊島区立池袋第三小学校と豊島区立道和中学校に通い、高校は、都内で唯一のプロテスタント系男子校である聖学院高等学校に通いました。卒業後は武蔵大学に進学しています。

神田松之丞の父親は、精神的に不安定だったようで、神田松之丞が10歳のときに自殺。父の死をきっかけに、笑顔に罪悪感を覚えるようになった神田松之丞は、どんなに明るく振る舞っていても、表情が消えて能面のようになる時間ができるようになったそうです。後に振り返り、死という喪失を経験したからこそ、永遠に続いていくであろう伝統芸能に惹かれたのではないかと分析しています。

そんな神田松之丞が落語にハマったのは高校2年生のとき。NHK「ラジオ深夜便」で流れた6代目三遊亭圓生の「御神酒徳利」がきっかけでした。それは、「面白くて、のたうちまわった」というくらい強烈な体験で、その後は貪るように落語を聴くようになります。所沢で行われた立川談志の独演会に行き、「らくだ」を聴いて鳥肌が立つほど感動した後は、興味の対象を広げ、浪曲や講談も聴くようになっていきました。

その後、神田松鯉の講談に惚れたことから、2007年11月に、3代目神田松鯉に入門します。2012年6月には二ツ目に昇進し、2015年10月には「読売杯争奪 激突!二ツ目バトル」で優勝。2017年3月には「平成28年度花形演芸大賞」銀賞も受賞しています。

神田松之丞の3カ月限定レギュラー番組がTBSラジオに登場!「かなり笑える内容」で講談入門にも最適

神田松之丞の出演する高座はチケット売り切れ続出というくらいの人気を誇っていても、2016年に行われた落語話芸協会理事会では、全会一致で真打昇進が否決に。神田松之丞は、この結果に複雑な気持ちになったと言います。というのも、神田松之丞が敬愛する師匠の神田松鯉はすでに74歳。神田松鯉の弟子として真打になるには、あまり時間的余裕がありません。

その一方で、二ツ目は、実験的試みに大いにチャレンジできる立場でもあります。他の師匠の元ではなく、神田松鯉の弟子で真打になりたいという思いと、まだまだ冒険をしたいという思い。このせめぎ合いの結果がどうなるかは分かりませんが、「時間的にぎりぎりのところまで二ツ目でいるかも」と思わせるやんちゃぶりも感じさせる神田松之丞。その野望は、落語家でもごく限られた人しかやったことのない歌舞伎座で、真打昇進のお披露目をやることというから大胆不敵です。

また、「いいところで話を打ち切って、引っ張ることが多い」という連続物は、「講談の財産」だという神田松之丞。現代の「簡単」「すぐ終わる」「手軽」といった風潮に反して、10話以上続く「連続物」を、週一連載のような形で読ませてみたいとも語っています。

そんな神田松之丞は、TBSラジオで4月1日から3カ月限定で放送されているレギュラー番組「神田松之丞 問わず語りの松之丞」に出演中で、「かなり笑える内容になる」と自信満々です。神田松之丞人気と共に、再び注目され始めた講談師ですが、まだ追随者は出ていない様子。

とはいえ、神田松之丞が落語にハマってから講談師に入門するまで何年もかかったように、結果が出るにはもう少し時間が必要かもしれません。数年後の講談界には、「神田松之丞を聴いて……」と言う入門希望者も出てくるのではないでしょうか。「講談って面白いの?」という方も、「落語はもうたくさん聴いたし、何か新しいことはないかな」という方も、単純に神田松之丞を知りたい方も、まずは神田松之丞のDVDや、3カ月限定ラジオを楽しんでみてはいかがでしょうか。

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