ル・コルビュジエ建築群が世界遺産登録へ!代表作「ロンシャン礼拝堂」とは?

ル・コルビュジエ建築群が世界遺産登録へ!代表作「ロンシャン礼拝堂」とは?

ル・コルビュジエ建築群が世界遺産登録へ!2016年7月下旬にも登録可否について発表が

ル・コルビュジエは、スイス生まれフランス国籍をもつ建築家で、フランク・ロイド・ライト、ミース・ファン・デル・ローエと並ぶ「近代建築の三大巨匠」の1人です。2016年7月10日から開催される世界遺産委員会にて、ル・コルビュジエの建築群(日本を含む7カ国17作品)が、世界遺産に登録されるかどうか審議される運びとなり話題を集めています。

2015年1月に、フランスを代表とする7カ国で推薦書を提出。同年9月には、諮問機関イコモスによる現地調査が行われ、「登録がふさわしい」とする評価を受けました。ル・コルビュジエの建築群の世界遺産登録は、これまで2度にわたり登録を見送られてきた過去があるため、3度目の正直となるかどうか、今月下旬の発表が待たれるところです。

ル・コルビュジエ建築群の代表作「ロンシャン礼拝堂」とは?「サヴォア邸」との違い

ル・コルビュジエ建築群を構成するのは、日本の「国立西洋美術館」など、世界7カ国に現存する17作品。中でも、フランスの「ロンシャン礼拝堂」は、ル・コルビュジエ後期の代表作。カニの甲羅をヒントにしたというのも頷ける、曲線を用いた自由度のある作品です。

これに対し、「サヴォア邸」は、ル・コルビュジエの提言する「近代建築の5原則」を如実に表した作品として知られ、初期の代表作といわれています。見事なまでに無駄を省いた機能的なデザインで、直線を多用しているのが特徴的。「ロンシャン礼拝堂」と「サヴォア邸」2つの作品の間には、24年の時が流れており、常に合理性だけを追求していたわけではないル・コルビュジエの芸術家としての一面がうかがえます。

ル・コルビュジエのソファと椅子の実用性!建築設計の特徴とは?

ル・コルビュジエのソファと椅子の実用性!80年経った現在も愛されるLC(Le Corbusier/ル・コルビュジエ)シリーズ!

ル・コルビュジエは、建築家としてだけではなく、ソファや椅子といった家具デザイナーとしても広く知られています。代表作は「LC2(Grand Confort/大いなる快適)」という椅子。スチールパイプのフレームの背中・座面・アームに、革のクッションをはめ込んでいくという単純な構成ながら、高いホールド感と、名前が示す通りの快適な座り心地を実現しました。

同じラインナップのLC1は、スリングチェアと呼ばれ、座った人の動きに合わせて角度を変えるリクライニング機能を持っています。人体の構造を研究し、編み出されたLC4は、「休養のための機械」と呼ばれたとか。建築同様、装飾を省き、実用性や機能性を追求した結果誕生した、ル・コルビュジエのシンプルで独創的なデザインは、80年経った今でも愛され続けています。

ル・コルビュジエの建築設計の特徴とは?

ル・コルビュジエは、「近代建築の5原則」として、ピロティ、屋上庭園、自由な平面、水平連続窓、自由な立面を提唱しました。ピロティとは、建物を柱のみで持ち上げる様式、または空間のこと。ル・コルビュジエは、建築設計にピロティを取り入れ、建物が宙に浮かんでいるように見せることに成功しました。ピロティの上に長方形の箱を置くことで、連続した水平窓を組み込むというのが、ル・コルビュジエ作品の特徴。

これらは、当時最先端であった建築技術である鉄筋コンクリートの導入によって可能となったものです。従来の建物は、構造的に、支え壁が必要でした。しかし、ル・コルビュジエは、装飾芸術を否定し、鉄筋コンクリートが支える簡素なデザインによって、自由な平面と自由な立面作りを実現しています。

ル・コルビュジエ建築作品群が世界遺産登録となるか?!

ル・コルビュジエ建築作品群を、世界遺産登録に申請するのは、今回が3度目。1度目は、2008年のことです。作品を「群」として登録申請するという考え方には、過去の同じような例として、アントニ・ガウディの作品群があります。しかし、アントニ・ガウディの場合、登録された7作品の所在地は、いずれもスペイン国内に限られていました。

これに対し、ル・コルビュジエ建築作品は、国境を越えるばかりか、大陸をもまたいでいます。世界遺産員会も、ル・コルビュジエの作品が世界遺産に登録されること自体には、当初から肯定的でした。サヴォア邸、ロンシャン礼拝堂、ユニテ・ダビタシオンについては、個別であれば、世界遺産に十分値するとされてきたのです。しかし、ル・コルビュジエの作品群全体を連続性のあるものとして認定するのは難しいと、登録が見送られてきたのが、これまでの経緯でした。

フランスが、はなから合同ではなく単独で、サヴォア邸やロンシャン礼拝堂を世界遺産に申請しようと判断していたら、日本にある国立西洋美術館が世界遺産に登録されることはなかったはず。このような背景には、文化大国フランスの懐の深さを感じます。

3度目となる2015年の申請では、イコモスが「記載」と勧告してきました。諮問機関による勧告には「記載」「情報参照」「記載延期」「不記載」の4段階があり、過去2回は、「情報照会」「不記載」の勧告が下っていたル・コルビュジエ建築作品群。一般的に、イコモスの勧告は最終決定機関である世界遺産委員会よりも厳しいとされますので、イコモスの勧告が「記載」であったなら……ル・コルビュジエ建築作品群の世界遺産登録には、かなり期待できそうです。

世界遺産に登録されることが正式に決まれば、日本国内では16件目、東京では初の快挙!ユーラシア大陸から南米まで7カ国にわたるル・コルビュジエ建築作品群は、世界遺産登録が認められ、世界的な快挙となるでしょうか。

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