西村賢太は私小説作家で芥川賞を受賞した異色経歴の小説家!新作「芝公園六角堂跡」で新たなステージへ

西村賢太は「苦役列車」で芥川賞を受賞した私小説作家!生い立ちや父や自身の逮捕歴!

西村賢太は私小説作家で芥川賞を受賞した異色経歴の小説家

西村賢太は、自らをモデルにした人物を主人公に据えた私小説作品を発表し続けていることで知られる作家です。2011年には、やはり自らをモデルとした主人公の半生を描いた「苦役列車」で芥川賞受を受賞しています。

西村賢太は、一般的に高学歴な人物の多いといわれる作家には珍しく、中卒で、日雇いの肉体労働で長く生計をたてていたという異色の経歴の持ち主。芥川賞を受賞した際にも、そうした経歴が大いに話題になりました。芥川賞受賞作となった「苦役列車」にも、自身の生い立ちや父親の逮捕歴といったエピソードが登場しています。

西村賢太の父や自身も逮捕歴あり!複雑な家庭環境とは

西村賢太の生い立ちをたどると、父親の逮捕が暗い影を落としているようです。西村賢太が小学生の時のことでした。父親が強盗強姦事件を起こして逮捕されたことをきっかけに両親は離婚してしまいます。こうして母子家庭に育った西村賢太は、中学生になって、父親の逮捕が単なる強盗ではなく性犯罪だったことを知り、ショックから不登校になりました。

中学を卒業すると、実家を出て、職業を転々とする生活に。25歳頃には、アルバイト仲間ともめて、止めに入った警官を殴ってしまい逮捕されました。29歳の時にも、酔った末に、飲食店で他の客にからんで暴行して逮捕されています。

西村賢太のおすすめ作品ランキング!分身である駄目人間・北町貫多と彼女の秋恵(あきえ)の終末は?

西村賢太のおすすめ作品ランキング!性癖開陳のエッセイもあり!

西村賢太のおすすめ作品の1位は、何といっても芥川賞受賞作の「苦役列車」です。西村賢太が、自身をモデルとして描き続けている主人公・北町貫多の生い立ちから、暗たんたる青春時代までが描かれます。2位は、やはり北町貫太シリーズの「暗渠の宿」でしょう。

本作には、短気で自堕落なダメ人間の貫太の恋人になってくれる秋恵(あきえ)が登場します。3位は「小説にすがりつきたい夜もある」で、芥川賞受賞前後に書かれたエッセイを集めた1冊です。文学や私小説への情熱を綴ったものから、風俗通いや性癖について開陳したスポーツ誌での連載エッセイまで、西村賢太の多面的な魅力が楽しめます。

西村賢太の分身である駄目人間・北町貫多と彼女の秋恵(あきえ)の終末は?

西村賢太が自身の分身として繰り返し描く北町貫太は、自堕落で、いつも他人を羨んでばかりなだけでなく、衝動的に行動してはいつも後から後悔するという駄目人間です。しかし、どこか憎めないキャラクターでもあります。そんな駄目人間の貫太にも、同棲生活を送る恋人・秋恵が現れ、彼女との日々を綴った作品にはファンも多いです。

しかし最終的には、秋恵はアルバイト先で知り合った他の男のところにいってしまい、2人の関係は終末を迎えてしまいます。私小説なので秋恵にもモデルがいるそうですが、訴えられても困るという理由から、容姿や年齢等は変更しているそうです。

西村賢太が新作「芝公園六角堂跡」で新たなステージへ

「苦役列車」が芥川賞を受賞したことで、一気に世間の注目を集めることになった西村賢太。中学卒業後は、不安定な非正規雇用の労働者として流転の日々を送り、作家デビューを果たした後も、芥川賞を受賞するまでの収入は、あっても月17万円程度で生活は苦しいものだったと言います。

そんな苦しい生活の中でも、西村賢太が自らをモデルとする私小説というジャンルに拘泥し、それを書き続けてきたのには、師と仰ぐ存在があったからです。西村賢太が師と仰ぐのは、藤澤清造。明治から大正にかけて活躍した小説家です。29歳で酒のトラブルから逮捕されて留置場に入った経験を機に、藤澤清造作品に深く傾倒するようになった西村賢太は、自ら「藤澤清造の没後弟子」と名乗るようになりました。西村賢太の分身・北町貫太が登場する作品では、繰り返し藤澤清造への思いやその作品についての言及があり、西村賢太の創作の原点であることがうかがえます。

そんな自らを文学へと導いてくれた師と、作家として成功した現在の自分との関係や思いを描いたのが、2017年に発売した「芝公園六角堂跡」です。この作品には、アラフィフになり、作家として成功した北町貫太が登場します。かねてから大ファンだった有名ミュージシャンのライブに招待された北町貫太は、芝公園にある豪華ホテルで行われたステージを堪能し、終演後には記念写真まで撮ってもらい有頂天に。

一方で、ホテルの目と鼻の先である場所で、師である藤澤清造が野垂れ死にするようにして凍死した事実も頭をよぎります。知名度も上がり、金銭的にも恵まれるようになったことで薄れていく「書く」ことへの情熱や、自らを導いてくれた師・藤澤清造への思いを正面からとらえた「芝公園六角堂跡」。批評家の間では、繰り返し書いてきた北町貫太シリーズの中でも、これまでとは違うステージに達したことを示したと評判になっています。これからも、西村賢太が、その分身である北町貫太とともにどこまで行くのか、見守っていきたいところです。

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