佐藤賢一がヨーロッパの歴史小説を書くのには経歴に理由が?おすすめ著書を総まとめ!

佐藤賢一がヨーロッパの歴史小説を書くのには経歴に理由が?「双頭の鷲」他おすすめ著書一覧!

佐藤賢一がヨーロッパの歴史小説を書くのには経歴に理由が?

佐藤賢一は、ヨーロッパを舞台にした歴史小説を多数発表している作家です。史実に対する豊富な知識をもとに、歴史的人物を人間味あふれるキャラクターとして描き、多くの読者をひきつけています。

佐藤賢一が日本には馴染みの薄いヨーロッパの歴史について詳しいのには、その経歴にわけがありました。佐藤賢一は、山形大学教育学部を卒業後、東北大学大学院文学研究科に進み、西洋史を専攻。修士課程をおさめ、研究者となるため博士課程に進んでいます。在学中に小説家デビューも果たしていたため、研究者の道とどちらをとるか迷った末、1998年に大学院を辞しました。

佐藤賢一の西洋の歴史小説は高評価!「双頭の鷲」他おすすめ著書一覧!

大学院で研究者を目指して西洋史を学んでいた佐藤賢一。研究者ならではの緻密な歴史考証で小説世界を構築し、一般人はあまり知らない隠れた史実も活かして、歴史のうねりをドラマチックに描き出しています。そのため、佐藤賢一の西洋史の知識が存分に生かされた作品は特に評価が高く、おすすめのものばかりです。

たとえば、英仏百年戦争を題材にした「双頭の鷲」や、直木賞を受賞した「王妃の離婚」、ジャンヌダルクも登場する冒険活劇「傭兵ピエール」など。歴史に苦手意識がある人でも面白く読めるエンターテインメント作品に仕上がっているので、いずれも一読の価値ありです。

佐藤賢一の「小説フランス革命」と「小説ナポレオン」は渾身の超大作!

佐藤賢一が手掛けた超大作「小説フランス革命」とは?

佐藤賢一は、西洋史から題材を掘り起こし、多くの作品を書いてきました。中世から近世の西洋史の中でもクライマックスの一つといっていい、フランス革命という巨大な題材に取り組んだ超大作「小説フランス革命」も発表しています。2008年に、第1巻となる「革命のライオン」から刊行が始まったこの作品は全12巻におよび、最終巻となる「革命の終焉」が発売されたのが2013年。完結まで実に5年を要しました。長大でありながら、ドラマチックなこの作品は、多くの読者に支持され、毎日出版文化賞特別賞も受賞しています。

佐藤賢一が「小説フランス革命」を書く前から構想していた「小説ナポレオン」!

「小説フランス革命」という大きなプロジェクトを完遂した佐藤賢一が次にとりかかったテーマは、フランスの英雄ナポレオンでした。実は、2004年に「小説フランス革命」の取材旅行に出た段階で、ナポレオンの生まれ故郷であるコルシカ島も訪れていた佐藤健一は、「小説ナポレオン」の執筆も視野に入れていたと言います。

しかし、「小説フランス革命」が完結し、ようやく「小説ナポレオン」にとりかかれたのは2014年。実に10年の月日が経っていました。その後、さらなる取材を重ね、2015年より、集英社の文芸単行本公式サイト「RENZABURO」にて連載を開始しました。

佐藤賢一はヨーロッパの歴史小説だけじゃない?ボクシング小説もあり!

「小説フランス革命」「小説ナポレオン」と、西洋史をテーマにした歴史小説家の第一人者として愚直なまでに真正面から取り組んでいる佐藤賢一。骨の折れる仕事ではあることは容易に想像がつきますが、佐藤賢一には、後に続く作家のために、第一人者として西洋史の流れをしっかり描いた作品を書いておきたいという思いがあったそうです。

そんなストレートな取り組みの一方で、近年では表現の大賞を日本史やアメリカ近代史にまで広げ、実験的な作風にも挑戦しています。
2005年には、毎日新聞の連載小説として、日本の戦国時代を舞台にした歴史小説「女信長」に挑戦している佐藤賢一。織田信長が実は女だったとしたら?という奇想天外な設定を取り入れつつも、史実もたくみに生かして読者を楽しませる作品となっています。2009年には、黒木メイサ主演で舞台化され、2013年には、天海祐希主演でテレビドラマ化されているほどの人気作品です。

アメリカを舞台にした作品としては、禁酒法時代のギャングの帝王アル・カポネを主人公にしたピカレスクロマン「カポネ」が。また、もしアメリカで内乱が勃発したらという設定で描く近未来小説「アメリカ第二次南北戦」も発表しています。そして2017年には、アメリカの伝説的なボクサーであるモハメド・アリを主人公にした作品「ファイト」を刊行。モハメド・アリのキャリアを決定づけた歴史的な4つの試合をアリの一人称で描くというスタイルをとっており、今まで手掛けてきた歴史小説とは大きく異なる作風です。

モハメド・アリは、ボクサーとしてだけでなく、黒人差別と闘い、ベトナム戦争への徴兵を拒否する等、アメリカの社会問題とも深く関わり、影響を与えてきた存在。それだけに、佐藤賢一は、構想を練っている段階では、モハメド・アリを中心にすえたアメリカの近代史を描こうと考えていたそうです。

しかし、彼の試合を何度も見直すうちに、「やはり一番すごいのは彼のファイト。それを文字で表現しよう」と考え、プランを変更したとか。モハメド・アリの一人称で運ぶ試合では、彼の口汚い暴言も生々しく描かれ、それが作品をリアルで臨場感あふれるものにしています。

出版に際し、「まずは純粋に、アリのファイトに興奮してほしい。その後で、なぜ彼がこういう生き方をしなければならなかったか、その状況は決して過去のものではないという部分も見つめてほしい」とコメントした佐藤賢一。実験的でエモーショナルな描き方の裏から、その奥にひそむものを読者に感じ取ってほしいと願っているようです。それが伝わるっているかどうかは、読んだ人にしか分からないところ。「ファイト」は、佐藤賢一の筆力が試される作品となりそうです。

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