ジブリ映画「レッドタートル ある島の物語」興行収入は大コケ!?業界の評価は?

ジブリ映画「レッドタートル ある島の物語」興行収入は大コケ!?あらすじネタバレ

ジブリ映画「レッドタートル ある島の物語」初の海外共同制作!興行収入は大コケ!?

ジブリ映画「レッドタートル ある島の物語」は、2016年5月11日に、カンヌ国際映画祭にて上映後、同年6月29日よりフランスで公開されました。日本では、同年9月17日からと、時期をずらしての公開となっています。

1984年公開の「風の谷のナウシカ」や、1988年「となりのトトロ」といった、多くの長編アニメ映画を制作してきたスタジオジブリが指揮をとる本作は、初の海外共同制作作品。監督や脚本など、多くのスタッフが外国人です。日本からは、多くのジブリ作品のプロデュースを担当している鈴木敏夫と、2013年公開「かぐや姫の物語」で監督と脚本を務めた高畑勲が、アーティスティックプロデューサーとして参加しました。

新しい挑戦に満ちた「レッドタートル ある島の物語」でしたが、公開から2週間後に報道された興行収入は6246万円とかなり厳しい数字。宣伝が少なく認知不足であること、作風がアート寄りであるために家族連れの集客が見込めなかったことが原因ではないかと分析されています。

ジブリ映画「レッドタートル ある島の物語」はアニメだけど大人向け?あらすじとネタバレ

ジブリ映画「レッドタートル ある島の物語」は、無人島を舞台にした物語です。嵐の海に放り出されてしまった男は、やがて島にたどり着きます。そこには、ウミガメやカニ、鳥たちが暮らしているだけで、人の姿は見当たりません。どうにか脱出を試みようとする男でしたが、強い力が働き、どうしても島に引き戻されてしまいます。

やがて男は赤い亀に出会い、その亀が自分の脱出を妨げていることを知り、激怒。亀をひっくり返したところ、死んだ亀のかわりに女が現れました。女と2人暮らしをはじめ、子をなした男は、子が成長したのを見届けた後、愛する妻に見守られながら息を引き取ります。1人の男の人生を追ったドキュメンタリー作品という意味合いが強く感じられる本作。女の正体は赤い亀ですが、男を引き留めた明確な理由は提示されておらず、最大の謎になっています。

ジブリ映画「レッドタートル ある島の物語」にセリフがない理由!業界の評価は?

ジブリ映画「レッドタートル ある島の物語」は無声映画!セリフが無い理由とは?

映画「レッドタートル ある島の物語」は無声映画です。登場する人間は、遭難する男以外にも増えていきますが、上映時間である81分間、セリフは一切ありません。観客は、行動と表情からキャラクターたちの感情を推測し、頭の中で物語を描いていくことになります。実は、制作開始直後、いくつかのセリフが用意されていました。

マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督は、物語の意味や主人公の人間性を表現するには、ある程度の言葉が不可欠であると考えていたからです。しかし、高畑勲からのアドバイスによりセリフをすべて削除。その結果、より深い世界が表現されることとなりました。

無声をより強く推していたのは鈴木敏夫プロデューサーです。元から「絵に力があれば言葉はいらない」と考えていたそうですが、今作は特に、マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督の絵と作品を活かすチャンスと捉え、無声を主張しました。

ジブリ映画「レッドタートル ある島の物語」アニー賞受賞!業界の評価は?

ジブリ映画「レッドタートル ある島の物語」が、国際アニメーション協会が主催する、第44回アニー賞「最優秀長編作品賞」を受賞しました。アニメのアカデミー賞とも呼ばれる同賞は、日本の長編アニメ映画としては、2002年に「千と千尋の神隠し」が受賞しています。「レッドタートル」は他にも、第69回カンヌ国際映画祭で、独特な種類やビジョンを持った作品に贈られる「ある視点部門特別賞」を受賞。第41回トロント国際映画祭にも出品されました。

無声であるという点から、一般客からの評価は、物語に入り込めたか否かで賛否が両極端に分かれている状態の「レッドタートル ある島の物語」。一方の業界の評価としては、無声で人間の普遍的な人生という物語を紡ぎ出したことを高く評価する声が集まっています。また、映像と音楽で、静謐かつ誌的な表現を極めたことに対する賛辞も見られ、同業者だからこそ高評価に繋がっているとも見ることができそうです。

ジブリ映画「レッドタートル ある島の物語」第89回アカデミー賞にノミネートされるも

ジブリ映画「レッドタートル ある島の物語」は、アカデミー賞の長編アニメーション部門にノミネートされました。2016年、日本では、長編アニメーションのヒットが続きました。筆頭にあげられるのは、新海誠監督作品で、田舎の女子高校生と都会の男子高校生を主人公に、夢を通じて引き合う関係と成長を描いた「君の名は。」でしょう。

また、戦中の広島を舞台に、日々を慎ましやかに、時にたくましく生きるすずという女性を描いた「この世界の片隅に」も大きな話題となりました。特に「君の名は。」は、日本での興行収入は約235億円、世界興行収入が337億円以上と言われており、「千と千尋の神隠し」を上回る数字をたたき出しました。

しかし、ヒット作ともなると当然なんらかの賞にノミネートされるのかと思いきや、アカデミー賞にノミネートされたのは、興行収入という意味では振るわなかった「レッドタートル ある島の物語」。上映時間は70分以上で、主要キャラクターをアニメーションで描き、全体の75%以上をアニメーションで占めるというノミネート条件には、両作品ともに当てはまります。なぜ空前の大ヒット作「君の名は。」がノミネートされなかったのでしょうか?アカデミー賞は、アメリカの映画賞です。当然、よりアメリカ人の感性に則した選考がなされます。

「君の名は。」は、青春ラブストーリーという、極めて日本人が好きなジャンルを描いており、だからこそ多くの人の興味を惹きつけました。対して「レッドタートル ある島の物語」は、絵と音楽だけで1人の男の人生を表現した物語。アート性や、表現力に対する評価が高かったためノミネートに至ったと考えられます。

売れているから賞をもらう、というわけではなく、表現が優れているから評価される、というのは制作者としても励みになるでしょう。しかし、第89回アカデミー賞長編アニメーション部門を受賞したのは、ディズニー映画「ズートピア」でした。残念ではありますが、スタジオジブリ初の海外との共同作成と画期的な試み。これを足ががりに、次なる挑戦を期待したいですね。

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