テオドール・シャセリオーは早熟の天才だった!その生涯や作品は?

テオドール・シャセリオーは早熟の天才!生い立ちや死因は?

テオドール・シャセリオー「絵のナポレオン」と呼ばれた早熟な天才の生い立ちとは?

テオドール・シャセリオーは、フランス・ロマン主義を代表する画家です。フランス人の父親とクレオール地主の母親の間に、1819年9月20日、カリブ海に浮かぶイスパニョーラ島のエル・リモン(現在のドミニカ共和国)にて誕生しました。

その2年後、家族でパリへ移住したシャセリオーは、早熟なる才能を一気に開花させた11歳の時のスケッチによって、新古典主義の巨匠ドミニク・アングルのアトリエに入ることを許可されます。アングルは、早熟な天才だった愛弟子のことを「この子を見たまえ、彼はきっと絵の世界でナポレオンになる」と人々に豪語するほどテオドール・シャセリオーの才能を買っていました。

その後、テオドール・シャセリオーは、若干16歳の身でサロンに初出品し、歴史画のジャンルで第3席に選ばれます。しかし、師匠であるドミニク・アングルが最も嫌っていたロマン主義の流れを汲むドラクロワに傾斜したことから、師弟関係に亀裂が生じ始めます。

テオドール・シャセリオーの生涯!代表作と夭折した天才の死因とは?

テオドール・シャセリオーがドラクロワに影響を受け始めた15歳の時、師匠のドミニク・アングルは、フランス・アカデミーの院長に就任するためローマへと旅立ちました。1840年、20歳になったテオドール・シャセリオーは、ドミニク・アングルに再会すべくイタリア旅行へ出発しますが、師弟関係は修復できず、それどころか完全に破綻してしまいます。

ドミニク・アングルと決別した後も、「海から上がるビーナス」(1838)、「アポロンとダフネ」(1845)、「ヴァンクォーの亡霊」(1854)、「デビダリウム」(1854)、「マクベス」(1855)など、神話画や歴史画、寓意的な作品など数々の代表作を遺したテオドール・シャセリオーは、36歳の時に病に倒れることに。

ベルギーにあるスパに療養に訪れたものの、病状は回復しないまま、1856年、パリの自宅で37歳の生涯を終えました。あまりにもストイックに芸術を追求し過ぎたのかもしれないテオドール・シャセリオー。現在まで、直接の病名や死因は定かとなっていません。

しかし、師匠のデッサンを受け継ぎながらも、ドラクロワの流れを汲み、独自の画法を追求し続けたテオドール・シャセリオーが、次世代の作家に多大な影響を及ぼした夭折の天才画家だったことは間違いないでしょう。

テオドール・シャセリオー作品「カバリュス嬢の肖像」「エステルの化粧」解説!

テオドール・シャセリオーの代表作「カバリュス嬢の肖像」のモデルとなった女性とは?

師匠ドミニク・アングルの影響もあってか、テオドール・シャセリオーは多くの肖像画も描いています。中でも、彼の代表作と言われるのが、「カバリュス嬢の肖像」(1848)。モデルとなった女性の名は、マリー・テレーズ・カバリュスと言います。19世紀初頭のパリの社交界においても一際目を引く、非常に美しく華のある女性だったそうです。

富裕層である医師の家に生まれ、教養と女性的品格も備えていたマリーですが、「美しさ」も遺伝するのでしょうか。彼女の祖母もまた、フランス革命時代のパリの社交界で、「テルミドールの聖母」と称された美貌の持ち主でした。テオドール・シャセリオーが描いた肖像画には、その時代時代の人々の様子や心の有様、取り巻く環境なども巧みに織り込まれています。

この「カバリュス嬢の肖像」を通しても、ただ単に絵を楽しむだけでなく、古き良きパリ社交界の様子を垣間見ることができるでしょう。

テオドール・シャセリオーの代表作「アハシュエロス王の謁見のため化粧をするエステル」(1841)解説!

「アハシュエロス王の謁見のため化粧をするエステル(エステルの化粧)」は、聖書をテーマにしながらも、宗教画的な世界観を持たないテオドール・シャセリオーが愛したオリエント世界を描いた作品とされています。旧約聖書の「エステル記」によると、バビロニアに流刑の罪となった若いユダヤ女性のエステルが、囚われの身だったユダヤ人の仲間たちを虐殺から救い出し、後にペルシア王の妻になったとあります。

テオドール・シャセリオーの作品に描かれているエステルはオリエントの娘のようですが、彼女を取り巻く2人の御付は褐色の肌を持ち、東方的な雰囲気は感じられません。エステルのしなやかな裸体は、師匠であるドミニク・アングルの影響とされますが、丸みを帯びた女性的なラインはテオドール・シャセリオー独自の画法です。

しかしながら、まったくもって22歳の若者の作品とは思えないほどの完成度!まさに「早熟の天才」と称されるに値する逸品と言えます。

テオドール・シャセリオーの個展が国内で初開催中!「絵画界のナポレオン」と称された夭折の天才が描く世界観とは!

フランスの新古典主義最後の巨匠とされるドミニク・アングルに「彼はいずれ絵画界のナポレオンになる!」と言わしめた夭折の天才画家テオドール・シャセリオーの国内初個展「シャセリオー展 19世紀フランス・ロマン主義の異才」が、東京国立西洋美術館にて、現在好評開催中です。

16歳の若さでサロンデビューを果たしたテオドール・シャセリオーが生まれた19世紀のフランスは、絵画界においては、新古典主義からドラクロワに見られるロマン主義へ。歴史的には、ナポレオン全盛期から共和制へと移り変わるという、まさに激動の時代でした。

新古典主義とロマン主義の融合にオリエンタリズムを織り込んだテオドール・シャセリオーの作品は、次世代のアーティストたちにも多大な影響を与えています。それを伝えるため、「シャセリオー展」の会場は、彼に影響を受けたアーティストたちの作品と共に比較しながら見ることができる構成に。37歳の若さで夭折したシャセリオーが遺した作品は260点あまり。

絵画だけではなく、版画も数多くあり、中でもシェークスピアの版画作品「オセロ」「ハムレット」は全シーンが描かれていて、テオドール・シャセリオーの文学における深い洞察力と熱意が伝わってきます。展覧会の開催期間は、2017年5月28日(日)まで。自らの独創性を探求し続けたテオドール・シャセリオーの世界観を、ぜひ会場で味わいたいものです。

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