メビウス(ジャン・ジロー)の日本漫画への影響力とは!感銘を受けた大御所漫画家たち!

メビウス(ジャン・ジロー)の日本漫画への影響力とは!感銘を受けた大御所漫画家たち!

メビウス(ジャン・ジロー)の日本漫画へ影響を与えた画風!

メビウス(ジャン・ジロー)は、バンド・シネ(フランス語圏漫画)界の巨匠です。2012年に73歳で亡くなっています。写実的な西部劇「ブルーベリー」や幻想的なSF作「アイザック」などを生み出し、世界中の漫画作品に多大な影響を与えました。

今日、最もクオリティが高いと評される日本漫画のクリエイターたちも、このメビウス(ジャン・ジロー)の圧倒的な画力とイマジネーションの世界に強烈な刺激を受けて育ってきたといいます。メビウス(ジャン・ジロー)の画風は、抑揚の無い線で描かれた写実志向の繊細な描き込みが特徴的。

「砂漠の40日間(邦題)」の下書き無しの一発描きという離れ業からもうかがえるように、精密に描かれているにも関わらず寸分の迷いも無駄もないタッチが、多くの日本漫画家に「イマジネーションを使って描く重要性」の教えになりました。また、メビウス(ジャン・ジロー)の作品は、一見すると単純な線で描かれた人物と写実的な空間というミスマッチを描いている様で、人物の前後左右には空気が存在しているのです。

メビウス(ジャン・ジロー)が日本漫画を作った?!感銘を受けた大御所漫画家たち

メビウス(ジャン・ジロー)が描く世界は、イマジネーションながら、まるで実在するかの様に錯覚させます。あの日本アニメ界の巨匠・宮崎駿も、強い影響を受けたといいます。名作「風の谷のナウシカ」は、「アルザック」の繊細で美しい描線や造形力、空間感覚に傾倒して作ったと本人が告白するくらいですから、メビウス(ジャン・ジロー)の影響力が、秘めても秘め切られない異質なものであることが分かります。

他にも「日本のメビウス」と名高い大友克洋、松本大洋など、メビウス(ジャン・ジロー)に感銘を受けた日本の大御所漫画家は多く存在します。日本漫画の立役者・手塚治虫もその1人で、彼の線描写に尊敬の念を込め、自らの作風に「メビウス線」という陰影のつけ方や、短い線で影を表現した「メビウス雲」を作り出しました。

メビウス(ジャン・ジロー)の線描写の素晴らしさには、「ジョジョの奇妙な冒険」の独特な画風で知られる荒木飛呂彦も「線だけで空間が描けるんだ!」と強い感銘を受けています。メビウス(ジャン・ジロー)が存在しなかったら、日本漫画の発展はなかったと、言っても過言ではないかもしれません。

メビウス(ジャン・ジロー)の娘の名前は「ナウシカ」!宮崎駿、手塚治虫との交友

メビウス(ジャン・ジロー)の娘の名前は「ナウシカ」!宮崎駿作品へ共感

日本漫画界から尊敬を集めるメビウス(ジャン・ジロー)もまた「日本はアニメで世界一」と語っており、自分の娘を「ナウシカ」と名付けるほど宮崎駿の作品には畏敬の念を抱いていました。2004~2005年にパリで開催された「宮崎駿-メビウス展」に際して行われた対談で、メビウス(ジャン・ジロー)は、自分の影響を受けて作られたとされる「風の谷のナウシカ」を初めて観た時、影響関係云々より「共通感覚」を覚えたと語っています。

フランス人のメビウス(ジャン・ジロー)にとって異国の異文化圏のクリエイターですが、遠く夢を見るような宮崎駿のイマジネーションの世界に強く共感したそうです。また、1992年に出版された宮崎駿の「紅の豚ガイドブック」では、メビウス(ジャン・ジロー)が彼を「もっとも輝かしい火」と賞賛したり、娘の「ナウシカ」を連れてジブリ美術館を訪れたこともありました。以後、この2人の巨匠の交友はメビウス(ジャン・ジロー)が亡くなるまで続いたそうです。

メビウス(ジャン・ジロー)と手塚治虫の交友は日仏漫画界の切磋琢磨を生み出した

メビウス(ジャン・ジロー)に影響され、手塚治虫が自らの作品に「メビウス線」「メビウス線」を取り入れる一方で、メビウス(ジャン・ジロー)も手塚治虫の漫画表現に感銘を受けています。1982年に手塚治虫の案内で京都を訪れたメビウス(ジャン・ジロー)は、彼のアニメ「火の鳥2772愛のコスモゾーン」を見てショックを受けると同時に、作品量の多さにも驚愕したそうです。

それまでのフランスでは、日本漫画はあまり知られておらず、手塚治虫との出会いをきっかけに日本漫画専門店を訪れたメビウス(ジャン・ジロー)。以後、ヨーロッパで日本漫画の重要性を説いて回りました。この来日中に手塚治虫スタジオも見学し、会社をバックボーンとした漫画制作への理解を深めるきっかけになりました。このメビウス(ジャン・ジロー)と手塚治虫の交友が、両国の漫画文化の切磋琢磨を生み出したのです。

メビウス(ジャン・ジロー)のイマジネーション世界は日本漫画を一等芸術にしてくれた

メビウス(ジャン・ジロー)の作品は、絵心の無い人でも、何故か肌に触れる空気を感じるはずです。そこはメビウス(ジャン・ジロー)の完全なる想像世界でありながら、パラレルワールドとして存在するのではないかと錯覚させられる写実性。独特な動きで表現される平面的なアメコミの魅力と対極にあるBD(バンド・シネ)が、より日本人の気質に近く、多くの日本人漫画家に吸収されていったのでしょう。

メビウス(ジャン・ジロー)がいなかったら、私たち日本人が心を震わせた「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」など、宮崎駿作品に触れることはできなかったかもしれません。一方で、漫画というカテゴリにおける写実表現に、首をかしげる人もいるかもしれません。ハイクオリティを極めゆく日本漫画やアニメに対して「漫画ではなくて劇画ではないか」「漫画である必要があるのか」といった声も確かにあるのです。

しかし、メビウス(ジャン・ジロー)の作品は、漫画を「漫画ばかり読んでいてはいけません!」という娯楽ジャンルから、一等芸術の次元に引き上げてくれました。それに対峙する多くの大御所日本漫画達の姿勢からも、メビウス(ジャン・ジロー)が与える”イマジネーション”の学術的意義が感じられます。漫画は魂の学習。それを線のみで表現したメビウス(ジャン・ジロー)には、画人ではない私たちにも人間の可能性を強烈に覚えさせるのです。

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