平田オリザ主宰劇団「青年団」とは?出身大学やプロフィール!

平田オリザ主宰劇団「青年団」とは?出身大学やプロフィール!

平田オリザ主宰劇団「青年団」の演劇界を一新した「現代口語演劇理論」とは

平田オリザは、「東京ノート」「ソウル市民」3部作で知られる人気劇作家にして演出家。日本の近代演劇は、西洋の翻訳芝居から始まり、戦後70年、その時代時代を担うカリスマ演出家の登場によって、日本独自の進化を遂げてきました。タイプは違っても、日本独自の演劇とは、非日常な空間で、演劇独特の誇張された言語と体技を使っての、まさに劇的なカタルシスを志向するものでした。

しかし、バブル期を経た日本で、この演劇独特の言葉や体技を否定する劇作家が登場します。劇団「青年団」を主宰する平田オリザです。彼の主張する演劇理論は、「現代口語演劇理論」。少し乱暴ですが、簡単に言ってしまえば、私たちが日常的に話しているのと同じ話し方やしぐさ、行動に徹底して演劇を行うもので、一般には「静かな演劇」と呼ばれています。そして、平田オリザのこの演劇理論は、独自の志向を持ついくつかの演劇集団は別として、2000年度以降から現在にいたるまで、演劇界の主流とまでになっています。

平田オリザは16歳で世界26カ国を放浪していた!

平田オリザは、1962年生まれの53歳。日本がバブル景気に浮かれていた高校2年の時、自転車による世界一周旅行を決行して、世界26カ国を放浪し帰国。大学検定試験を受けて国際基督教大学に入学し、1983年に劇団「青年団」を結成し、現代口語演劇理論に則った演劇活動をスタートします。1984年には、韓国の延世大学に1年間留学した平田オリザ。

1986年に大学を卒業するとすぐに、父親が自宅を改装してつくった、こまばアゴラ劇場の劇場経営者になりました。1994年、平田オリザは、代表作となる「東京ノート」を初演。同作品で、1995年第39回岸田國士戯曲賞を受賞します。以後、立て続けに演劇界の各賞を受賞した平田オリザの名は、たちどころに演劇界に広まっていったのです。

平田オリザ小説「幕が上がる」は映画化も!あらすじネタバレキャスト!

平田オリザの小説「幕が上がる」を撮ったのは「踊る大捜査線」本広克行

平田オリザの、現代口語演劇理論に添った演出は、思わぬ副産物を生み出しました。役者は等身大のリアルな芝居をするので、その演目を、そのまま映像化して映画にすることも難しい作業ではなくなったのです。平田オリザもまた、自身のオリジナル小説「幕が上がる」を、「踊る走査線」シリーズを撮った本広克行監督に託し、ももいろクローバーZという意外なキャスティングで舞台化&映画化しました。

平田オリザの「幕が上がる」は王道の青春映画だった

平田オリザの小説「幕が上がる」のあらすじは、とある地方高校の弱小演劇部の女子部員たちが、かつて「学生演劇の女王」と呼ばれていた新任教師の独り芝居に感動し、新任教師の指導の元、高校演劇の全国大会を目指すという、王道の青春映画です。しかしそこは平田オリザの作品。平田オリザに、現代口語演劇理論を直に学んだ本広克行監督は、演劇に賭ける少女たちの何気ない日常を、丁寧に撮り重ねていきました。

また、ももいろクローバーZの面々も、売れっ子アイドルとしてではなく、その役ひとりひとりの少女の、思いや戸惑い、そして未来に賭ける願いを、全く等身大のリアルさで演じきったのです。映画「幕が上がる」は、アイドル映画の域をはるかに越えた出来映えとなり、映画や演劇関係者から、高い評価を得ています。

平田オリザが語る「下り坂をそろそろと下る」という生き方

平田オリザは、日本におけるバブル時代の騒々しさや過剰さを、異常なものとして冷静に見つめ、そのアンチテーゼとして、現代口語演劇理論に基づく「静かな演劇」によって、鋭く同時代を批判し続けてきたと思われます。その片鱗は、平田オリザのさまざまな発言や著作に見ることも可能です。

中でも、「下り坂をそろそろと下る」という評論集のタイトルには、その精神が凝縮されているといえるでしょう。平田オリザは、日本という国は経済や文化の爛熟期を経て、すでに衰退期に入っているのに、いまだ世間が右肩上がりの経済と強い日本を求めていることに対して、大きな警鐘を鳴らしています。

国民もまた、他者の権利に嫉妬するのではなく、「生活が大変なのに映画を観に来てくれてありがとう」と言える社会を目指すべきという、貧しくあっても、文化を楽しむ余裕がある社会づくりを訴えています。また平田オリザは、人とのコミュニケーションの取り方についても、障害者や高齢者、外国人など、自分と価値観やライフスタイルの違う「他者」と接触する機会を増やすことで、自らが、コミュニケーション力を養うことが必要であると説きました。

平田オリザは、今や劇作家というよりは先生のようですが、実際、東京藝術大学・アートイノベーションセンター特任教授など、さまざまな大学で教鞭をとってもいます。ただ、だからといって平田オリザの「静かな演劇」が、絶対かということではありません。もともと演劇や芝居にルールなどなく、現代口語演劇理論の芝居が、イコール面白いわけでもありません。観客は常に、面白くも悲しくも、ただ芝居を観て、魂のカタルシスを得たいだけなのです。

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