ジュール・ヴェルヌ小説映画化作品「八十日間世界一周」「月世界旅行」あらすじネタバレ

ジュール・ヴェルヌ小説映画化作品「八十日間世界一周」「月世界旅行」あらすじネタバレ

ジュール・ヴェルヌはベルエポックの時代が生んだSFの父

ジュール・ヴェルヌの「15少年漂流記」は、昭和のオヤジたちにとって、人生で初めて読んだ血沸き肉躍る冒険小説で、読んだ後は、かならず裏山に駆け込んで秘密基地作りに励んだものでした。今の小学生たちは、どうでしょうか。

ジューヌ・ヴェルヌは、ベルエポック時代を生きたフランスの小説家で、1829年に生まれ1905年に亡くなっています。ジュール・ヴェルヌはまた、SFの父とも賞され、代表作には、「15少年漂流記」(原題「2年間の休暇」)や、「月世界旅行」「80日間世界一周」「海底二万里」があります。

ジュール・ヴェルヌの作品「月世界旅行」は初のSF映画!「80日間世界一周」は初の世界旅行ガイド!

ジュール・ヴェルヌの作品群は、映画産業を大きく刺激し、これまで多くの作品が映画化されてきました。最初に映画化されたのは、月に大きな砲弾の跡がついたビジュアルで知られる「月世界旅行」です。まだ飛行機が発明されていない南北戦争終結後のアメリカで、巨大な大砲を製造し、人間を乗せた砲弾を発射して、月まで飛んで行こうとする大計画と、3人の乗組員の物語。

小説「月世界旅行」では、飛行のための詳細な軌道計算や、無重力の問題、着陸の際の逆噴射などが、リアルに考察されています。映画「月世界旅行」では、月に大きな砲弾の跡がついたビジュアルでも知られるように、特撮を駆使した荒唐無稽なモノクロサイレント映画で、映画史においては、世界初のSF映画と位置付けられています。

一方、ジュール・ヴェルヌの「80日間世界一周」は、当時、最先端交通機関であった蒸気船や鉄道、果ては気球を使って、80日間で世界一周できるかどうかの大博打に賭けた、若きイギリス貴族の冒険物語。普通の人々が海外旅行に出かけたことなどまだない時代に、ロマンとアドベンチャーに溢れた世界一周旅行のガイドブックのような小説でした。

「80日間世界一周」の映画化は、ずっと時代が下った、戦後のハリウッドで実現しました。主役のイギリス貴族には、名優デビット・ニーブンが扮し、ヒロインには新進女優であったシャーリー・マクレーンが。また、カメオ出演で、フランクシナトラやマレーネ・ディートリヒ、シャルル・ボワイエ、バスター・キートンなど、当時のハリウッドスター総出演の超娯楽大作でした。

ビクター・ヤング作曲のテーマ曲「Around the World」は、今では、誰もが知っている映画音楽のスタンダードとなっています。

ジュール・ヴェルヌの名言とは?「二十世紀のパリ」が再評価されている

ジュール・ヴェルヌの言葉は21世紀にも通じる名言であり箴言

ジューヌ・ヴェルヌは、小説家としてだけでなく、ベルエポックの古き良き時代にあって、来たるべき未来の警世家でもありました。有名な言葉に、「人が空想できる全ての出来事は、起こりうる現実である」があります。なんとこの言葉、日本の大人気漫画「ONE PIECE」の中でも引用されていたとか。

しかし、この言葉は、肯定的なだけでなく、警世的言葉としても、多分に意味深い言葉といえるでしょう。また、科学文明が想像以上に進歩し始めた20世紀に、人間の精神が、その進歩に追いついていないことを批判した、「なぜ、僕らは子供なんだろう。大人でなければならない時に」。この言葉は、極めて示唆に富む言葉であり、いまだ戦争を収束できず、また原子力を制御できない現代社会にこそ、問われるべき言葉ではないでしょうか。

ジュール・ヴェルヌの先見性や批判精神は初期作品「二十世紀のパリ」にあり

ジュール・ヴェルヌの先進性、時代を考察する鋭い批判精神は、もっとも初期に書かれ、永く未刊行であった、「二十世紀のパリ」にも表れています。小説「二十世紀のパリ」の中で、ジュール・ヴェルヌは、20世紀のフランスを、科学万能主義が支配し、芸術や文化は拝金主義に陥って腐敗、政治の硬直化が進んだ社会として描いています。まさに、来たるべき第1次、第2次大戦の萌芽を、予言しているといえましょう。

ジュール・ヴェルヌ「海底2万里」のノーチラス号は最新鋭の原子力潜水艦の性能に匹敵する!

ジュール・ヴェルヌの、もう1つ忘れてならない代表作が、「海底2万里」です。「海底2万里」は、謎の男、ネモ船長が建造した潜水艦ノーチラス号が、世界の海を舞台に活躍する冒険物語です。この作品が書かれたのは1870年。「月世界旅行」に登場した、砲弾からイメージされたロケットだけでなく、この作品で描かれた潜水艦もまた、まだ世の中に存在しない乗り物でした。

ジュール・ヴェルヌが作品の中で描写した潜水艦の速度や構造などに関しては、驚くほど現在の潜水艦の性能を言い当てているそうです。アメリカ海軍は、ジュール・ヴェルヌの慧眼を讃え、1954年に就航した世界初の原子力潜水艦を「ノーチラス号」と命名したほどです。

まさに、「人が空想できる全ての出来事は、起こりうる現実である」を地でいく、ジュール・ヴェルヌの想像力は、ルネサンス期の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチにさえ通じるものがあります。「海底2万里」は、1954年、ウォルト・ディズニーによって映画されただけでなく、その後のSFやアニメのモチーフとなり、現代へと継承されました。

奇しくも日本のアニメ「ふしぎの海のナディア」と、ディズニーアニメ「アトランティス失われた帝国」は、「海底2万里」を原案にしたといわれています。しかしそれよりも、問題となったのは、この2作品の類似性でした。……ジュール・ヴェルヌがこれを知ったら、さぞかし、商業主義に陥った芸術の堕落と、嘆くに違いありません。

関連記事

ページ上部へ戻る