種田陽平はジブリ「思い出のマーニー」美術監督!NHK「プロフェッショナル」にも登場
種田陽平はジブリ「思い出のマーニー」の美術監督!日本の海辺の町を描き出す
種田陽平は、国内外の映画を始め、テレビ、CM、舞台等の演出を手掛けるデザイナー兼アートディレクターです。2014年公開のスタジオジブリ作品「思い出のマーニー」で、美術監督を務めている種田陽平ですが、アニメ作品を手掛けるのは初めての経験でした。1967年、イギリスの作家・ジョーン・G・ロビンによって発表された原作小説は、イギリスを舞台に、金髪碧眼のマーニーとアンナの心の交流を描いています。
しかし、金髪碧眼というマーニーの設定だけをそのままに、アンナを日本人の少女杏奈に、舞台をイギリスから日本に置き換えて製作に挑んだジブリ。全編を通して映し出される海辺の風景や、物語の中核をなすマーニーの屋敷……種田陽平は、難しい設定ながらも、金髪碧眼のマーニーがうまく溶け込める日本の海辺の町を描き出すことに成功し、高い評価を受けました。
種田陽平がNHK「プロフェッショナル」に登場!その仕事ぶりは?
種田陽平は、2014年8月に、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演しています。あらゆる仕事におけるプロフェッショナルにスポットを当て、その仕事ぶりをまとめたドキュメンタリー映像と、本人へのインタビューの2本立てで構成される「プロフェッショナル」。種田陽平にスポットを当てた回では、「思い出のマーニー」の製作現場にカメラが入りました。
自らイメージした空間を作り上げるために、スタッフと入念な打合せ作業を行い、現場にあっても、細部にわたる指示を与える種田陽平。それは、壁の汚れ具合や、看板の微妙な位置まで、空間にある全てのものに対して一切手を抜かないといった徹底ぶりでした。これぞプロフェッショナル!と誰もが思ったことは間違いありません。
種田陽平の本「ホット・セット」は全ての美術監督作品を網羅!プロフィールは?
種田陽平の本「ホット・セット」はこれまで手掛けた全ての美術監督作品を網羅できる贅沢な一冊!
種田陽平は、デザイナーやアートディレクターとしての仕事以外にも、作品集やエッセイ、児童書の執筆活動も行っていて、本の中にも、その世界観を味わうことができます。2007年に発表された「ホット・セット」は、種田陽平が美術監督した作品を本にまとめたもの。種田陽平がこれまでに手掛けた全ての作品を網羅できる贅沢な一冊となっています。
「ホット・セット」は、イメージ画から、設計図、ミニチュア模型へと展開し、最終的に使用された映画スチルまで、空間デザインが出来上がる過程を立体的に感じ取れる構成です。それぞれの作品ごとに、種田陽平本人による詳細な解説や技法の説明がなされているので、目で見て楽しめる上に、作品への理解も深まります。
種田陽平のプロフィールは?大学在学中から映画助手として活動
種田陽平は、神奈川県に生まれ、武蔵野美術大学油絵学科在学中から、寺山修司監督のもとで、映画助手として活動していました。1988年公開の榎戸耕史監督作「ふ・た・り・ぼ・っ・ち・」が、種田陽平の劇場用映画デビュー作となります。その後、岩井俊二監督作「スワロウテイル」、クエンティン・タランティーノ監督「キル・ビルVol.1」、李相日監督「フラガール」と、国内外問わず話題作に多数参加している種田陽平のキャリアは、数え上げるときりがありません。
中でも三谷幸喜監督とタッグを組んだ作品は多く、「THE有頂天ホテル」「ザ・マジックアワー」「ステキな金縛り」「清州会議」と、4作連続の参加となりました。こうした実力を証明するかのように、種田陽平は、1998年「不夜城」で香港電影金像奨・最優秀美術監督賞受賞、2009年「ヴィヨンの妻~桜桃とたんぽぽ~」で日本アカデミー賞最優秀美術賞を受賞しています。
種田陽平が「モンスター・ハント」の中に描き出した世界観、次回作は「追捕 MANHUNT」
種田陽平が美術監督を務めたアクションファンタジー映画「モンスター・ハント」が、8月6日から全国で封切られます。「モンスター・ハント」は、アニメ映画「シュレック」シリーズを制作したラマン・ホイがメガホンをとり、中国で興行成績400億円を記録する歴代No.1のメガヒットとなりました。男でありながら、妖怪の王子を身籠ってしまった青年テンインと、腕利きの女ハンター・ショウランの旅を描いたファンタジー。
これまで種田陽平は、アクション、ドラマ、コメディ、バイオレンスと、あらゆるジャンルに挑戦してきましたが、ファンタジー作品に参加するのは「モンスター・ハント」が初めて。ラマン監督からのリクエストは、中国オリジナルの妖怪が登場する、これまでにない新しいファンタジー映画を作ること。中国では、西遊記など古典的な物語をモチーフにした作品が数多く存在するため、似たり寄ったりに見えてしまう傾向にあるそうです。そこで、新たな風となる外国人美術監督として、起用されたのが種田陽平。
「監督のリクエストを忠実に具現化する」、種田陽平は、そういった手法をとりません。提示されたプランを自分なりに解釈し、そこに新たなアイデアを加えて、綿密に構築していきます。これまでの仕事でも、常に、種田陽平によるプラスαの世界観があったからこそ、多くの監督から信頼を得てきたのです。
「モンスター・ハント」では、元祖中国ファンタジーともいうべき「山海経」を始め、中国に残る妖怪のデザインをベースにしながら、世界観として、「直線ではなく曲線」であることを追求したという種田陽平。ヨーロッパの絵や建物、ジブリ的な要素も取り入れながら、物語に馴染む世界観を作り上げています。
種田陽平が美術監督を務める次回作として期待が集まるのは、福山雅治がキャスティングされたことでも話題のジョン・ウー監督「追捕 MANHUNT」(公開予定は2017年)。国やジャンルを軽々と越えてみせる、種田陽平のボーダレスな活躍はとどまるところを知らないようです。