「BANANA FISH」色あせない名作の魅力!ハードボイルド長編
「BANANA FISH」は少女漫画?ニューヨークを舞台にしたハードボイルド長編
「BANANA FISH」は、1985~1994年にかけて小学館「別冊少女コミック」に連載されていた漫画作品で、作者は、漫画「YASHA-夜叉-」や「海街diary」も人気の吉田秋生(よしだあきみ)。「BANANA FISH」は、少女漫画雑誌に連載されていましたが、男女の恋を描いた作品ではありません。
アメリカを舞台に、「バナナフィッシュ」という言葉を巡る謎や、マフィアやストリートの少年たちの抗争が描かれています。主人公は、ニューヨークのスラム街で、ストリートキッズグループを束ねる17歳の少年アッシュ・リンクス。廃人同然の兄グリフィンと、マフィアのボス・ゴルツィネが口にする「バナナフィッシュ」という言葉の謎を追っています。
そんな中、アッシュが出会うのが、ストリートの取材に来ていたカメラマン伊部俊一の助手で、日本の大学生の奥村英二です。明るく穏やかな性格の英二と絆を深めていくアッシュは、マフィアだけでなく、国家主巻き込む大きな野望の渦に飲み込まれていきます。
「BANANA FISH」に多くの読者が涙!切なすぎる最終回をネタバレ
「BANANA FISH」は、連載終了から20年以上が経過した今も、根強い人気を誇っています。多くの読者を虜にしたのが、類まれなる美貌と高いIQに加え、カリスマ性を持つアッシュと、東洋人でカメラマンを目指す英二の関係でした。アッシュは、幼少期からの経験から他者を信用していませんが、英二には心を許しており、英二もアッシュを理解しようと努めます。
友情という言葉よりも深い結びつきを持つ2人は、それゆえに様々な危険にさらされました。謎の言葉「バナナフィッシュ」は、人を思いのままに操ることができる麻薬を指すことが判明し、軍をも巻き込む大きな戦いに発展。薬物のデータを守りきり、処分することに成功したアッシュたちでしたが、英二は戦いの中で負った傷を癒すため、日本へ帰国することに。
二度と会わないと言いつつも、ずっと友達として思い続けるという英二の手紙を読んで走り出したアッシュですが、彼に不信感を抱くラオに刺され、命を落とします。手紙を握りしめ、幸せそうな表情を見せるアッシュに、多くの読者が涙を流しました。
「BANANA FISH」衝撃のアナザーストーリー!舞台やラジオドラマの評判は?
「BANANA FISH」には続きがあった?アナザーストーリーの内容を紹介
「BANANA FISH」は、アッシュの死という衝撃的な結末を迎え、読者の涙を誘いました。後日発表された番外編を収録した「BANANA FISH ANOTHER STORY」では、様々な角度から物語を補完することができます。物語の中でも重要な役割を担ったアッシュの親友ショーターと、アッシュが過ごす少年刑務所での日々を描いた「ANGEL EYES」や、アッシュの師のような存在ブランカと14歳のアッシュが出会う「PRIVATE OPINION」。
「Fly boy,in the sky」は、美大生の伊部と、棒高跳びの選手だった英二の物語です。読者の心に最も響くのは、アッシュの死から7年後を描いた「光の庭」でしょう。英二がどのようにアッシュの死を受け止め、時間を歩んできたのかが丁寧な描写で綴られます。また、ギャグテイストの「うら・BANANA」も収録。アッシュの様々な面を知ることができるのと同時に、本編でもこのような明るい姿を見たかった、と切ない気持ちにもさせてくれます。
「BANANA FISH」はメディアミクスも!舞台やラジオドラマの評判は?
連載時から女性読者の根強い支持を受けていた「BANANA FISH」ですが、映像化などはされていません。しかし、1994年と1995年に、NHKFMで放送された「青春アドベンチャー」のラジオドラマでは、耳で「BANANA FISH」の世界を楽しむことができます。
アッシュ役の声は古澤徹で、英二役は井上和彦という人気声優。その他にも、古田新太や佐々木蔵之介など、人気俳優もキャスティングされました。原作にないセリフも追加されていますが、原作の雰囲気を邪魔するものではなく、原作ファンにも好評のようです。
現在は、アニメや漫画を原作とした2.5次元舞台が注目を集めていますが、「BANANA FISH」は、これまで3度舞台化されています。2005年と2009年公演では、吉谷光太郎が脚本と演出を担当。いずれの舞台でも、柄谷吾史がアッシュ役を務めました。2012年には、「劇団EXILE」に所属経験のある磯村洋介をアッシュ役に迎えて公演が行われています。舞台の演出上、原作と違う部分はあるものの流れはおおむねそのままで、過度な脚色などはない、舞台らしい細かい演技で観客を魅了しました。
「BANANA FISH」2018年7月よりついにアニメ放送!キャストなど最新情報は?
舞台化やラジオドラマ化はしたものの、映像化はされてこなかった「BANANA FISH」。2017年10月に、吉田秋生デビュー40周年記念として、フジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」でのアニメ化が発表されると、SNSを中心に瞬く間に情報が拡散され、大きな話題となりました。
監督を務めるのはテレビアニメ「Free!」など人気作を手掛ける内海紘子で、シリーズ構成を担当するのは、「終わりのセラフ」や「モブサイコ100」を担当した瀬古浩司。アニメーション制作は、男子フィギュアスケートを描きブームとなった「ユーリ!!! on ICE」や、2016年公開の長編アニメーション映画「この世界の片隅に」を手掛けたMAPPAです。
実績のある豪華なスタッフ陣には、原作ファンだけでなく、アニメファンからも大きな期待が寄せられています。2018年2月22日には、一般客も招いた制作発表会が行われ、メインビジュアルや放送日時、一部キャストの情報が公開されました。アッシュ役を務めるのは内田雄馬です。
2015年のアニメ「血界戦線」音速猿や、2016年の「マクロスΔ」ハヤテ・インメルマンなどを務めた若手の人気声優で、実姉である内田真礼とともに、姉弟で声優をしていることでも知られています。英二役を担当するのは野島健児。声優一家の出身で、2015年放送のアニメ「干物妹!うまるちゃん」土間タイヘイや、キャストが一新されたことでも話題となったリメイク作「美少女戦士セーラームーンCrystal」で地場衛を担当しています。
その他にも、マックス・ロボ役の平田広明や、ディノ・ゴルツィネ役の石塚運昇の名前も発表されました。内田雄馬がアッシュ役に決定したのは、少年らしさと、ストリートギャングのボスとしてのクールな面と、英二に見せる優しさとのギャップを併せ持っているから。
野島健児は、声ににじみ出る包容力から選ばれたそうです。内海紘子監督は、2人の声をセルフ合成して作中の掛け合いを再現して「これはいける」と確信したと語っているので、実際にどのように仕上がっているのかますます期待が高まります。黄色い表紙が目印のコミックスの復刻版も刊行されていますが、アニメ版では、現代が舞台になるとのこと。新しい時代背景のもとで展開される名作からは目が離せそうにありません。