「ペンギン・ハイウェイ」は森見登美彦ワールド炸裂のSF小説!お姉さんの正体とは?
「ペンギン・ハイウェイ」で森見登美彦ワールド炸裂!
「ペンギン・ハイウェイ」は、2010年に角川書店より刊行された、森見登美彦(もりみとしひこ)の小説です。「有頂天家族」や「夜は短し歩けよ乙女」など、京都を舞台にしたファンタジー作品で有名な作者ですが、本作の舞台は特定されていないどこかの街。小学4年生の主人公「僕」ことアオヤマ君が住んでいる郊外の新興住宅地で、不思議な出来事が起こります。
アオヤマ君は、登校する途中、空き地でペンギンが群れているのを見つけました。不可思議なペンギン出現現象を、ペンギンが好んで通る道にちなんで「ペンギン・ハイウェイ」と名付けたアオヤマ君は、歯科医院に務める歯科衛生士のお姉さんの持つ不思議な力がペンギンたちに関わりがあると知ります。
そこで、ペンギン・ハイウェイ現象とお姉さんの謎を研究していくアオヤマ君。愛らしいペンギンたちが街にあふれる現代ファンタジーかと思いきや、森見登美彦流SFワールドが堪能できる本作は、第31回日本SF大賞も受賞しています。
「ペンギン・ハイウェイ」のお姉さんの正体とは?
「ペンギン・ハイウェイ」は、突然街に現れたペンギンと、アオヤマ君と仲良しなお姉さんの謎を追いかける物語。一番の謎となるのは、街中に突然現れたペンギンの研究をアオヤマ君に勧めたお姉さんの存在です。ウィットに富み、ちょっと豪胆な性格をしているお姉さん。
アオヤマ君を家に招いて食事をしたり、一緒に昼寝をしたりと、距離の近さがうかがえます。しかし実は、ペンギンを出現させていたのはお姉さんだったことが判明。アオヤマ君が研究を重ねて導き出した結論では、ペンギンをも作り出すお姉さんの正体は、森の奥の草原で発見された水の球体「海」に繋がるもの。
海は世界の綻びで、お姉さんは世界の綻びを修復する存在、つまり人ではないものだと仮説を立てます。アオヤマ君の仮説が示した通り、世界が修復された時、お姉さんは忽然とこの世界から姿を消してしまいました。
「ペンギン・ハイウェイ」作者は森見登美彦!舞台が京都ではなく読者が困惑?
「ペンギン・ハイウェイ」作者は森見登美彦!京都の小説といえばこの人!
森見登美彦は、1979年1月6日生まれで、奈良県生駒市の出身です。奈良女子大学文学部付属中学&高校を卒業後、京都大学農学部に進学し、同大学院農学研究科修士課程を修了しています。2003年に執筆した「太陽の塔」で、新潮社主催の小説賞「日本ファンタジーノベル大賞」の大賞を受賞してデビュー。
黒髪の乙女と彼女に恋する語り手の先輩が巻き込まれる奇妙で摩訶不思議な事件を描いた「夜は短し歩けよ乙女」や、京都の糺の森に住む化け狸四兄弟の家族の絆をコミカルに描く現代ファンタジー「有頂天家族」も人気です。鞍馬の火祭と謎の画家、消えた同級生を巡るホラー青春ファンタジー「夜行」も、2016年に、書店員が選ぶ小説賞や本屋大賞にノミネートされています。
また、「夜は短し歩けよ乙女」「有頂天家族」「四畳半神話大系」の3作品はアニメ化もされており、広い層のファンを獲得。独特な言い回しと詭弁を並べ立ててコミカルな空気を作り出す森見節が特徴的な森見登美彦ですが、現代ファンタジーからホラーまでジャンルは幅広く、その世界観がクセになります。
「ペンギン・ハイウェイ」の舞台が京都ではなく読者が困惑?
「ペンギン・ハイウェイ」作者の森見登美彦は、京都を舞台に、ちょっと不思議なテイストを混ぜ込む日常ファンタジーとも表現されるジャンルを得意とする作家です。そのため、どこかにある新興住宅地が舞台の「ペンギン・ハイウェイ」が発表された当初は、舞台が京都ではないことへの驚きの声が読者から多く聞かれました。また、一人称形式の小説で、少年が主人公という作品もあまりないため「いつもの作品とは違う」という印象が強かったようです。
一方で、少年の初恋と成長、そして冒険という要素が詰め込まれた「ペンギン・ハイウェイ」から青春の甘酸っぱさを感じた読者も少なくありません。物語には謎がいくつか残されていますが、謎の存在こそが、それを解こうとするアオヤマ君が成長していく未来を感じさせてくれるというものでしょう「謎が解明されないモヤモヤ感よりも、心地よい余韻として胸に残る」という感想も見られます。
「ペンギン・ハイウェイ」がアニメ映画化!声優として蒼井優ら有名俳優が出演
森見登美彦のSF小説「ペンギン・ハイウェイ」がアニメ映画化されました。日本に先駆け、カナダのモントリオールで開催されたファンタジア国際映画祭では、最優秀アニメ賞にあたり、日本を代表するアニメ監督の名を冠した今敏賞を受賞。国境を越えて高く評価されていることが分かります。
出演声優には、釘宮理恵や藩めぐみ、能登麻美子といった人気声優の他に、俳優陣も名を連ねており、アオヤマ役は北香那が担当しました。小学6年生から芸能活動をしている子役出身女優で、2018年2月より放送されたドラマ「バイプレイヤーズ」ジャスミン役で注目を集めた北香那。10歳の男の子を演じるにあたり、妹の授業参観に参加してトーンを研究したという熱心な一面を見せています。
重要な役どころであるお姉さん役を担当したのは蒼井優。2010年公開の映画「おとうと」や、2013年の「東京家族」など、多くの名作映画に出演している人気女優です。漫画を原作とした作品にも多く出演しており、声優経験も豊富。お姉さん役については「しっかりした役は新鮮で、貴重な体験だった」とコメントしました。その他にも、西島秀俊や竹中直人も出演しており、その声は、公開されているPVで聴くことができます。
アニメ映画「ペンギン・ハイウェイ」の制作を手掛けているのは、20代の若いクリエイターが多く所属している「スタジオコロリド」です。また、監督を務める石田祐康は、京都精華大学マンガ学部アニメーション科在学中から頭角を現した逸材。若き才能が生み出したアニメ映画「ペンギン・ハイウェイ」は、森見登美彦ファンのみならず、アニメファンからも熱い注目を集めています。街中に突然現れたペンギンの謎を巡る、1人の少年のひと夏の冒険をお楽しみください。