吉田類の「酒場放浪記」が新・月9となる?!その魅力に迫る!
吉田類は、中年男子にとって新・月9のヒーロー
吉田類の「酒場放浪記」は、2003年、「酒場という聖地へ酒を求め、肴を求めさまよう」とキャッチフレーズのもとスタートしました。うさんくさい黒づくめの団塊おやじ・吉田類が、下町の居酒屋を訪ね、ただ飲んでほろ酔う。
店を出る際、一句ひねるという、なんの衒いもない酒場探訪番組。その番組はなんと10年以上も続き、特番や地方版が次々と制作され、DVD化を重ねて「新月9」と呼ばれるようになったのですから驚きです!人の世の流行り廃りというものは、不思議なもの。いくら金をかけ、仕掛けを施しても、流行らないものは決して流行らず、人気が出ることもありません。
しかし時折、なんでこれがこの人が、といったものが世の人々の耳目を集め、人気の的となります。BS-TBS「酒場放浪記」のナビゲーター吉田類もまた、そういったひとりなのかもしれません。
吉田類の「酒場放浪記」は、中年男子のバーチャルゲーム
吉田類の「酒場放浪記」の人気の根底には、今を生きる中年の男たちの潜在的な願望が、込められている面があるかもしれません。世界は全く先が読めない、混沌とした情勢であり、国内では声高な政治とは裏腹に格差や老齢化が進み、男たちにますます重圧がかかる世知辛い世の中。
せめて一時、赤ちょうちんの一杯の酒に心の憂さを晴らしたくなるのは、極めて日本的な心情です。その一杯の酒にもありつけない男たちが、吉田類を通してひとり酒を楽しむ仮想体験が、この「酒場放浪記」なのかもしれません。
吉田類「酒場放浪記」VS太田和彦居「日本百名居酒屋」シリーズ!
吉田類とは正反対、太田和彦の教養主義的酒の飲み方
吉田類の「酒場放浪記」が当たったとなれば、当然、柳の下にドジョウが何匹のテレビ業界ですが、やはり2番煎じは否めません。唯一、太田和彦のBS旅チャンネル「日本百名居酒屋」が、吉田類とはまた違ったテイストで人気を博しています。太田和彦は、1946年生まれの69歳。吉田類より3つ年上。
東京教育大学を卒業後、資生堂宣伝制作室でアートディレクターを務めた、どちらかというと正統派の教養人。吉田類のように、団塊世代のドロップアウト組といったうさんくささがありません。「日本百名居酒屋」には、男のたしなみとして、良い酒と店を紹介するといったスノッブなイメージがやや感じられ、吉田類の「酒場放浪記」のようなやさぐれ感や、それに伴う親しみやすさは、若干乏しいように思われます。
吉田類の、酔えれば幸せな酒の飲み方
吉田類の「酒場放浪記」と太田和彦の「日本百名居酒屋」、この2つの番組のテイストは、あくまで酒が飲めて酔えればいいという無頼派と、うまい酒と気の利いた肴を求める教養派といった、中年の男たちの酒の飲み方に通じているように思われます。女性ののんべいが酒場をめぐる番組もありますが、案外人気がありません。
どうせなら、男性にとって魅惑である酒場の女をテーマに、下町のスナックやラウンジを訪ねるという企画があってもよさそうなものですが。いかがなものでしょうか、プロデューサーの方々!
吉田類俳優デビューは、話題のTBSドラマ「下町ロケット」
吉田類が、TBS話題の日曜ドラマ「下町ロケット」に、敵役であるサヤマ製作所の社長、小泉幸太郎の父親役で出演しました。経営状況がひっ迫していても、決して弱い面を見せず、息子のために気丈に振る舞っていた父親が急死するという設定で、いかにも団塊世代の一典型のような役どころです。
贔屓の引き倒しにもなりかねない、吉田類の俳優デビュー。吉田類は出演にあたって、「ただひたすら夢中でチャレンジさせてもらいます。とにかく人生で初めてのことです。未知の惑星に降り立つような緊張感と期待感に心ときめかせております」と殊勝に語っていました。視聴率獲得に燃えるTBSの徹底した話題作りには、若干抵抗を感じますが、TBSとしては、東芝日曜劇場として半世紀以上続いた女性ドラマ路線から紆余曲折、「半沢直樹」でブレークした骨太の男性ドラマ路線を何とか定着させたいのでしょう。
さて当の本人、吉田類ですが、たぶんこのドラマ「下町ロケット」に出演しても、役者に目覚めるということはないでしょう。「酒場放浪記」の吉田類ファンにとっても、世の煩わしいことには決してとらわれず、毎夜、赤ちょうちんで一杯の酒に酔い、下町を徘徊する吉田類が好きなのであり、憧れなのです。さて、あなたは吉田類の演技をご覧になっていかがでしたか。