松本隆の歌詞の魅力を「赤いスイートピー」「渚のバルコニー」から読み解く!

松本隆の歌詞の魅力を「赤いスイートピー」「渚のバルコニー」から読み解く!

松本隆は時代に早すぎた伝説のバンド「はっぴーえんど」のメンバーだった

松本隆と聞いて、伝説のロックバンド「はっぴーえんど」や「ムーンライダース」を思い浮かべる人は、団塊の世代で相当な音楽通。松田聖子の楽曲の作詞家として松本隆を知っている人は、80年代のアイドルおたくといったところでしょうか。松本隆、1949年生まれ、66歳。1960年代末期、世は学園紛争で騒然とした時代。それらのムーブメントとは全く関係なく、ビートルズの登場に影響を受け、日本語の歌詞によるポピュラー音楽を目指し、J-POPの黎明期を築いたバンドが「はっぴいえんど」でした。

メンバーには、後にYMOを結成した細野晴臣や、ムーンライダースの鈴木慶一。ナイアガラ音頭や月9 ドラマ『ラブジェネレーション』の主題歌「幸せな結末」で広く世に知られた大滝英一、そして松本隆がいました。しかしJ-POPは、彼らが登場してから10年の時を経て、爆発的進化を遂げることになり、早すぎた彼等はそれぞれ音楽プロデューサーや作曲家、そして作詞家として、その後の音楽界を支えることになります。

松本隆が作詞家としてその才能を不動のものにしたのは、1980年、山口百恵が引退した年にデビューし、以後、歌謡界に君臨し続けるディーバ松田聖子との出会いでした。当時のアイドル歌手の多くは、レコード会社のプロデュースによって、複数の作詞家・作曲家に楽曲が提供され、そのイメージ戦略が変更されれば、作詞家や作曲家も入れ替わるという、新たな方向性を探る状況でした。

そんな中、松本隆は1981年、松田聖子6枚目のシングル「白いパラソル」から、1985年の20枚目シングル「天使のウィンク」までの作詩を全て担当し、松田聖子独自のラブファンタジーの世界を築きました。そして松田聖子は、35年を経た今も、その夢の世界のプリンセスを演じ続けているのです。

松本隆は、詩の力でユーミンの曲を封じ「赤いスイートピー」「渚のバルコニー」を完成させた

松本隆の代表作「赤いスイートピー」「渚のバルコニー」は、作曲を呉田軽穂こと松任谷由美が担当しました。松本隆は超ユーミン的楽曲に、自己の作詩能力の全てをかけて、曲のイメージがいたずらに先行することを阻みます。「春色の汽車」「赤いスイート―ピー」「渚のバルコニ―」「ラベンダーの夜明け」など、不思議で謎めいた歌詞。

それは、実際には存在しない光景を聞く者の心に鮮やかに描き出し、独自の世界を生み出したことがヒットの秘訣であった、という分析が今ではなされています。また、これら歌詞に登場する男子は、今で言う草食系男子であるという新たな評論も生み、松本隆の作詩はレジェンド化していったのです。

松本隆&松任谷由実が松田聖子を育て上げた!中田ヤスタカも参戦!

松本隆と松任谷由美が35年ぶりに組んだ、松田聖子の壮大なラブファンタジー「永遠のもっと果てまで」

松本隆・松任谷由美のゴールデンコンビによる新曲「永遠のもっと果てまで」を、松田聖子は35年の年月を経て発表しました。この曲は、ピーターパンの物語を映画化したファンタジー大作「PAN~ネバーランド、夢のはじまり~」の日本語吹き替え版の主題歌としてタイアップもされ、まさに松田聖子によるラブファンタジーソングの集大成といっていい作品となりました。

松本隆も驚愕する、松田聖子ニューワールド建設の陰謀

しかし、聖子お姫様はとことん強欲なようで、両A面扱いで、作詩:松本隆、作曲:松任谷由美に加え、アレンジャーにパフュームやきゃりーぱむゅぱみゅを成功に導いた中田ヤスタカを迎え、「惑星になりたい」もリリース。松田聖子は、いよいよニューワールドの建設に着手したようです。そして2015年の紅白、ラブファンタジーの御姫様、松田聖子は紅白のトリを務め、永遠の命を得た魔女のような笑みを浮かべていました。

松本隆がJ‐POP界に残した、偉大な足跡

松本隆は松田聖子だけでなく、「スニーカーブルース」「ハイティーン・ブギ」など、80年代を代表する男性アイドル近藤真彦の楽曲の作詩も数多く手掛けています。1980年代のアイドルから現代に至るまで、松本隆の仕事は止まることがありませんでした。松本隆の作詩した歌は全て、詩のワンフレーズに強いインパクトがあり、人々の思い出とともに記憶に刻まれています。

名曲、太田裕美の「木綿のハンカチーフ」、岡田奈々「青春の坂道」、斉藤由貴「卒業」。演歌歌手金沢明子の「イエローサブマリン音頭」や桑名正博「哀愁トゥナイト」。Kinki Kids「硝子の少年」、C-C-B「Romanticが止まらない」、竹内まりやの「SEPTEMBER」。そして寺尾聡「ルビーの指輪」など、そのヒット曲の数々はキラ星のごとくです。演歌から歌謡曲、アイドル、ニューミュージックに至るまで、松本隆の書く詩は、時代を鋭く切り取った言葉で、鮮明なビジュアルイメージを、人々に喚起してきました。

同時代には阿久悠という偉大な作詩家が存在しましたが、阿久悠が描く詩の世界が明快なストーリーが展開していく映画とするなら、松本隆の詩は1枚の鮮烈な抽象画のようです。曲を聞いたひとりひとりが、その画から様々なイメージや物語を創造することができる、まさにファンタジーの世界といえます。ビートルズの登場にいち早く影響を受けた都会の音楽少年は、半世紀を経て、J-POPと呼ばれる日本独特の音楽シーンにおいて、偉大な足跡を残しながら今なお歩み続けています。

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