「月曜日の友達」中学生の揺れる心を描いた青春漫画が刺さる!最終回は?
「月曜日の友達」月曜日は特別?中学生の日常と揺れる心を描いた青春漫画あらすじ
2017~2018年にかけて、小学館「ビッグコミックスピリッツ」に連載された「月曜日の友達」は、中学生を主人公とした青春物語。月曜日は週の初めということもあり、何かと憂鬱なもの。さまざまな事柄が上手くいっていない時はなおさらです。
しかし、「月曜日の友達」では、月曜日は、憂鬱なだけではない、少し特別な曜日になっています。主人公の水谷茜は、中学生になってまだ2週間あまりですが、周囲とかみ合わなくなっていることを自覚していました。モヤモヤとした気持ちを抱えていた時、別の小学校から入学した月野透と出会います。
透は、陶器でできた人形のように美しい容姿をしていましたが、誰も近づかない要注意人物。ある日、女子生徒に絡まれていた透を助けた茜は、周囲と馴染まない透と交流を持つようになりました。優秀な姉と比べられることが多いことが苦痛で、家を飛び出した茜が夜の学校に忍び込むと、そこには透が。月曜日の夜の学校で会ってほしいとお願いされて承諾した茜は、月曜日の夜限定の友達として、透と少しずつ親しくなっていきます。
「月曜日の友達」が描く思春期特有の不安定さに共感続出!最終回は?
「月曜日の友達」は、中学生が主人公の物語。誰もが一度は通り過ぎる、思春期の心の揺らぎが描写されています。自分と他者との関係をよりはっきり意識する時期だけに、茜の不安定な気持ちは、特に読者が共感できる要素と言えるでしょう。「超能力が使える」といった突拍子もない発言も多い透との、月曜日の夜限定の友人関係は順調に進みますが、茜は、その秘密を周囲に打ち明けてしまいます。
すると、茜に文句を言うわけでもなく、ただ静かに月曜日限定の関係を終わりにした透。関係が途絶えてから、自身が大切なものを壊してしまったことに気が付いた茜は、透に謝ることを決意します。こうして仲直りをした2人は、夢や目標を語り合う友人として、穏やかな学園生活に戻っていきました。
友人と喧嘩をし、仲直りして成長する、というプロセスが描かれた「月曜日の友達」。最終回の超能力獲得に成功した透と茜が学校の机に乗って空を飛ぶシーンは、2人の友情のたしかな証しに感じられ、静かな感動を覚えます。
「月曜日の友達」は作者・阿部共実の独特な絵柄とセンスが光る!話題作「ちーちゃんはちょっと足りない」とは
「月曜日の友達」は作者・阿部共実の独特な絵柄とセンスが光る!
「月曜日の友達」の作者である阿部共実は、兵庫県出身の漫画家です。生年月日や年齢、性別は公表していません。2005年には漫画誌に投稿を始めており、2009年に、秋田書店「週刊少年チャンピオン」の新人漫画賞で賞を受賞。2010年に第74回新人まんが賞入選を果たした「破壊症候群」で漫画家デビューします。
いくつかの短編を発表した後、2011年の「空が灰色だから」で、初連載をスタート。2013年に秋田書店「もっと!」に連載された「ちーちゃんはちょっと足りない」で大きな注目を集めました。その後は、2014年に「おもいでをまっくろに燃やして」を発表し、2017~2018年に、小学館「ビッグコミックスピリッツ」誌上に「月曜日の友達」を連載。現在は、秋田書店のウェブコミック配信サイト「Champion タップ!」で2013年から掲載している「死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々」を連載中です。
漫画というよりはイラストのような、線の太い独特の絵柄が特徴的な阿部共実。細かな陰影が描き込まれているので、モノクロなのに色を感じることもできる上、音や温度、においも感じさせる表現力が最大の魅力です。
阿部共実の代表作「ちーちゃんはちょっと足りない」も切ない物語
「月曜日の友達」で注目を集める阿部共実は、代表作のひとつでもある、2013年に発表された「ちーちゃんはちょっと足りない」でも大きな注目を集めました。本作の主人公は、中学2年生の女の子。身体が小さく、行動も少し幼いちーちゃんこと南山千恵と、千恵の幼馴染の小林ナツが登場します。千恵はぼんやりと空を見上げている姿が印象的な、可愛らしい少女です。
行動が幼く、勉強も苦手で、クラスメイトに支えられながら、学校生活を送っていました。一方、幼馴染のナツは、内向的でコンプレックスの強い少女。千恵に懐かれながら、自分も「ちょっと何かが足りない」と感じていました。そんなある日、学校で、顧問の誕生日プレゼントを買うために女子バスケットボール部員が集めていたお金が盗まれてしまったことから、少しずつ学校生活の歯車が狂い始めます。
中学生の小さな犯罪をきっかけとした物語は、誰しもが持っている自意識や劣等感を強く感じさせるため、読み進めるのが辛くなってくるほどです。しかし、軽くはないテーマだからこそ、強く心に残るのも事実。こうして、2014年には、第18回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞した「ちーちゃんはちょっと足りない」。2015年には、宝島社「このマンガがすごい!2015オンナ編」で第1位を獲得しています。
「月曜日の友達」完結でamazarashi主題歌発表!「このマンガがスゴい!2018」にもランクイン
「月曜日の友達」は、「ビッグコミックスピリッツ」2018年2.3合併号にて最終回を迎えました。続いて、2018年2月23日には、最終巻となる第2巻が発売されています。小学館「ビッグコミックスピリッツ」編集部が運営している無料マンガサイト「やわらかスピリッツ」では、最終巻の発売を記念したMVが公開されました。
作中のコマが印象的に使われているMVは、「月曜日の友達」の物語を、ダイジェストで楽しむことができます。主題歌となっている「月曜日」を担当しているのは、ロックバンドamazarashiです。既存曲の使用許可を依頼したところ、「ちーちゃんはちょっと足りない」を愛読していたボーカル&ギター担当の秋田ひろむが、新曲を書き下すことを提案。
完全なる新曲を伴ったMV作成が実現しました。秋田ひろむ自身は、ファンアートのようなつもりで作成したとコメントしている通り、歌詞も「月曜日の友達」とリンクするような内容になっています。楽曲の後半の盛り上がりも原作とリンクしているため、感動をより大きく感じることができるでしょう。
さらに、秋田ひろむからデモ音源を受け取った阿部共実は、楽曲に刺激を受け、「月曜日の友達」の新エピソードを執筆。茜と透が放課後の教室で語り合う様子が描かれており、詩的な言葉とともに、優しく穏やかな時間が流れます。多くの読者の共感を得た物語の評価は高く、「月曜日の友達」は、宝島社「このマンガがすごい!2018オトコ編」にノミネート。1位こそ逃しましたが、第4位にランクインしています。
同マンガ賞で1位を獲得した「ちーちゃんはちょっと足りない」よりも、「面白いと思ってもらえる作品を作ろう」と意識された作品は、ネームに1年をかけたという力作でした。阿部共実は、日常を描くため、ドラマ性が乏しく、強い展開や引きもないというところから、セリフや展開、場面構成などを考える点に苦慮したとか。こうして生み出された思春期の男女の友情物語で、紙面から伝わってくる音やにおい、温度も一緒にお楽しみください。