マリー・アントワネットの名言から歴史を再検証!フェルゼン伯爵との関係は?
マリー・アントワネットの名言解釈は歴史を歪めている?世間知らずの悪い王妃は真実か?
マリー・アントワネットの名言に、「パンがなければお菓子を食べればいい」という言葉があります。これは、”世間知らずの浪費家で、国家破たんを招いた悪いフランス王妃”と印象付ける名言としてよく知られていますが、和訳の段階で、本来の意味とはかけ離れた解釈をされてしまっているのが事実のようです。
問題となっている”お菓子”の部分は、当時のフランスでは、パンよりもずっと安価な”ブリオッシュ”を分かりやすく訳しただけに過ぎません。そうすると、マリー・アントワネットは、ごく普通の感性を持った女性だったということになり、歴史で語られている悪女像とは、ずいぶん違ってきます。また、マリー・アントワネットは、処刑台で執行人の足を踏んだ時に、「靴が汚れなくてよかったわ」と言ったとされていますが、実際は「ごめんなさい」と謝意を述べたとも。
マリー・アントワネットが賭博好きの浪費家だったのは真実ですが、なりふり構わない悪女のようには思えません。国家を傾けるほど贅の限りを尽くしたという伝聞には、かなりの誇張があったことも事実として分かってきています。
マリー・アントワネットとフェルゼン伯爵は愛人関係!ルイ17世は誰の子供?
マリー・アントワネットと、スウェーデンの貴公子・フェルゼン伯爵は、今でいう不倫関係にありました。マリー・アントワネットは14歳で、後のフランス国王・ルイ16世と結婚し、18歳の時に王妃となっており、夫婦仲は極めて良好だったと伝えられています。一方で、地味で大人しいルイ16世を見下したところがあったとも。
ベルサイユ宮殿の舞踏会で、フェルゼン伯爵に再会した時は、マリー・アントワネット自らが、積極的にアプローチをかけたそうです。フェルゼン伯爵は、マリー・アントワネットが既婚者であることに苦しみますが、生涯にわたって独身を貫くほど、彼女を愛していました。
そんな中、マリー・アントワネットは、1984年6月に、後のルイ17世となる次男・シャルルを出産します。シャルルは、長男の死後、ごく自然に王太子となっていますが、出生時の心境を記したルイ16世の日記には、「他の王子と同様に扱う」と意味深な言葉が。どうやら、ルイ16世は、マリー・アントワネットの不貞を知っており、シャルルの父親がフェルゼン伯爵だと確信するに至る状況があったのではないかと思われます。
マリー・アントワネットの壮絶な最期!一夜にして白髪になったって本当?
マリー・アントワネットの壮絶な最期!誹謗中傷に追い詰められた王家の転落劇
マリー・アントワネットの時代のフランス王朝は、絶対王政下にありました。彼女もまた、権力を行使して、ベルサイユ宮廷内の改革に努めましたが、その流れに加われなかった貴族たちの反感を買ってしまいます。こうして、宮廷を追われた貴族たちによって、パリ中にマリー・アントワネットの誹謗中傷が流布されました。
やがて民衆のフランス王政に対する不満が爆発すると、1789年、フランス革命の発端となるバスティーユ襲撃事件が勃発。側近だった貴族たちがことごとく国外に亡命し、孤立無援となってしまったマリー・アントワネットら国王一家は、テュイルリー宮殿に幽閉されてしまいました。
そんな時、一家の元を、変装したフェルセン伯爵が訪れ、亡命計画の進言をします。しかし、フェルセン伯爵の手引きによって逃亡を図った一家は、国境近くのヴァレンヌで身元がバレてしまい、再びパリの街に連れ戻されることに。それからしばらくの間は、タンブル塔にて手厚い幽閉生活を送っていましたが、翌年の1792年に起こった革命戦争によって、一家は窮地に追いやられていきます。
マリー・アントワネットは一夜にして白髪になったのか?死刑判決時の真実とは?
マリー・アントワネットの夫・ルイ16世は、革命裁判でギロチンによる斬首刑に処されました。その半年後には、投獄されていたマリー・アントワネットの裁判も始まり、1793年10月15日に死刑判決。翌日、コンコルド広場において、夫と同様にギロチン斬首刑が執行されています。
死刑判決が申し渡された時、マリー・アントワネットの髪は、”一夜にして白髪になった”といわれていますが、医学的にはあり得ない現象だそうです。処刑時のマリー・アントワネットは短髪だったそうで、2カ月にも及ぶ牢獄生活のストレスで、根元が白髪化したために、そう見えたのかもしれません。
しかし、”お菓子”の件もありますから、傍若無人な悪女が没落して取り乱す様子を誇張したものだった可能性は高そうです。マリー・アントワネットの遺書には、「無実の罪で処刑されるなら恥ずべきものではない」と記されていました。また、処刑の日の朝食も「何もいりません。全て終わりました」と拒否したそうですから、実際は、誇り高い最期だったのではないでしょうか。
「マリー・アントワネット」惣領冬実の最新作が連載開始!歴史認識を覆す超大作に!
マリー・アントワネットには、フランス王朝を転覆させた浪費家であり、強欲な悪妻というイメージが根強く、これを史実として認識している人も少なくありません。一方で、マリー・アントワネットには、自らのために城を建設することもなく、貧困者のためにカンパを募ったり、自分の子供たちに我慢を強いたりしていた側面があったことは、あまり語られずにきました。盛大だったギャンブル癖も、子供が生まれてからはピタリと止み、非常に良き母親であったと伝えられています。
マリー・アントワネットが悪い王妃として処刑されたのは事実ですが、それらは、彼女に恨みを持つ者たちの謀略に過ぎませんでした。根強い人気を誇る「ベルサイユのばら」でも、マリー・アントワネットが、浅はかさゆえに失墜していく様が描かれていました。数多くの創作物で、実際のマリー・アントワネットとは違う人物像が描かれてきたのには、どうしようもない悪女であったほうが、物語としては面白い……そんな風潮があったように思われます。
2016年8月18日発売の「モーニング38号」から連載がスタートした、惣領冬実の最新漫画「マリー・アントワネット」は、そんな歴史認識に革命を起こす作品として話題を集めています。衣装、建築、王宮儀礼の全てがベルサイユ宮殿監修の下に描かれた本作は、21世紀になって発表されたマリー・アントワネットの真実を語る超大作。誇り高く散っていったマリー・アントワネットが、200年以上の時を経て、ようやく無念を晴らすことができる時が来たようです。