佐久本宝は映画「怒り」沖縄編で話題の現役高校生!出演の経緯は?
佐久本宝は映画「怒り」沖縄編で話題の現役高校生!日本アカデミー賞新人俳優賞も受賞
佐久本宝(さくもとたから)は、吉田修一原作・李相日監督の映画「怒り」で初めてスクリーンに姿を見せた青年です。新人俳優とは思えない熱演を見せ、第40回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞しました。佐久本宝は1998年7月22日生まれの、現役高校生です。沖縄県うるま市に生まれ、地元の沖縄版ミュージカル劇団「あまわり浪漫の会」による公演「肝高の阿麻和利」で、主人公・阿麻和利として舞台に立ってきました。
佐久本宝が出演した映画「怒り」は、千葉編・東京編・沖縄編と3つの物語が、「不信」をテーマに紡がれた群像劇です。物語冒頭で登場する「怒」の血文字は、予告編でも観る者に衝撃を与えました。佐久本宝が出演したのは、沖縄編の物語。髪を伸ばし、今までとは雰囲気が全く異なる広瀬すずが小宮山泉を演じ、その相手役である沖縄の高校生・知念辰哉を演じたのが佐久本宝です。
佐久本宝「怒り」出演の経緯は?李相日監督「宝で辰哉をやりたいと思った」
佐久本宝は、映画「怒り」のオーディションを受け、1200人の中から選ばれた逸材です。最終オーディション後に、両親と本人、李相日監督で話し合いの場がもたれ、翌日に、監督から「宝で辰哉をやりたいと思った」という合格通知をもらったそうです。
映画「怒り」には、那覇で撮影された、辰哉(佐久本宝)と泉(広瀬すず)のデートシーンがあります。酔っ払った辰哉がお酒をこぼすシーンを見て、「ああ、酔っ払いあるあるだ」と感じた方も多いでしょう。しかし実はあれは、台本にないハプニングでした。それを森山未來らがアドリブで受けて、そのまま本編採用となったといいます。自身の演技について、「役者として経験を積み重ねている2人に支えられての演技だ」とよく答えている佐久本宝。しかし、長らく「肝高の阿麻和利」で主役を務めてきた佐久本宝の素地があっての演技であることは間違いありません。
佐久本宝、映画「怒り」撮影秘話!「あまわり浪漫の会」とは?
佐久本宝、映画「怒り」撮影秘話!実は台本をもらっていなかった
佐久本宝に、映画「怒り」の助監督が、「李組はほんとに厳しいからな」と何度も言い聞かせたという現場。緊張する佐久本宝に、李相日監督は、映画「2001年宇宙の旅」を見せ、「サルをやれ、恥を捨てるんだ」と指示。佐久本宝は、その言葉に従って、会議室で助監督と一緒に必死に縄張り争いをしたとか。李相日監督はさらに、「衣装合わせのときにみんなの前でやれ」と指示をします。李相日監督の意図は、「(緊張を)やわらげてあげるため」だったそうですが、当の佐久本宝は、「こういう厳しさがあるのかと、逆に緊張した」と苦笑していました。
無事に「サル」の演技を乗り切った佐久本宝ですが、撮影1日目は、同じシーンで何十回とリハーサルを繰り返し、結局、撮影は一度もしませんでした。これは佐久本宝だけでなく、広瀬すずの演技についても同様で、監督が首を傾げ続けていたためです。李相日監督は、自分から「こうしろ」という指示は決して出さず、「やろうとしたら、もうダメだから。辰哉だと思ってやって」と繰り返し伝えたといいます。
何より驚くべきことは、佐久本宝が台本を貰っていなかったという事実。初めての映画撮影に戸惑うことばかりの佐久本宝の支えになったのは、李相日監督の「手」。本番前に、監督が佐久本宝の背中に手をあてて「よし、行ってこい!」と言う儀式でパワーをもらっていたそうです。
佐久本宝にとって最も印象に残っているのは、船を運転するシーンでした。映画のために二級小型船舶操縦士の資格をとったことで、自分で船を操ることが可能になっていた佐久本宝。「このシーンだけは、すべてのものから解放されている気がして楽しかった」と、笑顔で振り返っています。
佐久本宝が所属する「あまわり浪漫の会」とは?地域おこしながら全国で活躍
佐久本宝は、「あまわり浪漫の会」による公演作品「肝高の阿麻和利」で、主人公・阿麻和利を演じてきました。1999年に設立された「あまわり浪漫の会」は、沖縄県うるま市の中高生らが所属し、沖縄の伝統芸能である「組曲」を基盤に現代音楽やダンスと融合させた沖縄版ミュージカルを上演しています。
沖縄県うるま市の地域おこしを目的の1つとし、これまで200回以上の公演を重ねてきました。会場も、沖縄だけでなく、倉敷や、東京、盛岡、福岡といった国内各地の他、ハワイでも成功させています。観客動員数は実に延べ13万人。演目の1つである「肝高の阿麻和利」は、地元のお城・勝連城の10代目城主である阿麻和利の半生を描いた作品です。
その中で、2013年から主演を務め、王らしく堂々とした姿を見せてきた佐久本宝。2017年3月に卒業公演として、最後の佐久本宝主演による「肝高の阿麻和利」が上演されます。
佐久本宝の高校卒業後は本格的に俳優の道へ!沖縄の青年だからこそ持てる感性
佐久本宝は、新人俳優ながら、大作映画「怒り」で堂々たる演技を見せました。厳しい李組の現場で大きな成長を遂げ、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するという「普通の高校生ではあり得ない経験」もしました。高校卒業後は、本格的に役者の道を目指す佐久本宝。目指すは、沖縄県出身俳優・津嘉山正種で、「これからも沖縄に関わりながら、舞台や映画などたくさん経験を積んでいきたい」と語っています。
これまでの演技経験の一区切りともなる「肝高の阿麻和利」卒業公演を2017年3月4日・5日に控えていますが、「いつも通りの演技をする」と落ち着いたものです。
佐久本宝の演技は、沖縄に生まれ、沖縄で暮らしてきたからこそ持てる感性や、日々の実感に裏打ちされたものです。それらを存分に発揮して、唯一無二の存在感を持つ俳優として、独自の道を歩んで欲しいですね。