重松清作品は泣きたい人におすすめ!「十字架」ネタバレと映画化キャストは?

重松清作品は泣きたい人におすすめ!「十字架」ネタバレと映画化キャスト

重松清の作品は泣きたい人にこそ読んでほしい!胸を締め付けられる世界観

重松清は、1963年3月6日生まれの53歳。これまで、直木賞や山本周五郎賞など、数々の賞を受賞してきた人気作家です。重松清の小説家デビューは、1991年に出版された「ビフォア・ラン」。その後は、毎年のように新しい作品を世に出しており、数多くの作品がドラマ化もされています。

読者を引き込み、メッセージを心に深く刻み付ける重松清の描く世界は、人の弱さや痛みを鋭く突いてくるので、胸が苦しくなると同時に、自然と涙がこぼれてくるものばかりです。しかしそれは、会いたかった人に会えた嬉しさや、愛しい人が死んでしまった悲しみなどからくる涙ではありません。重松清の小説を読んだ後は、一過性の爽快感や感動ではなく、「感慨」とでもいえそうな感情の波がじわじわとやってきます。

それは、リアルな設定が、どこか自分と重なるからでしょうか。あるいは、くどさがなく分かりやすい描写が、ぐいぐい読ませるからなのでしょうか。

重松清の「十字架」あらすじネタバレ!映画化キャストは現地の現役学生をオーディション?

重松清の小説「十字架」が、2016年2月に映画公開されました。「十字架」は、中学2年で、いじめを苦に自殺したフジシュン(藤井俊介)の遺書の中に、「親友」と記されていたユウ(真田祐)の人生を描く物語です。フジシュンの「親友」としての自覚がなかったユウですが、自殺したフジシュンの父親と弟から「親友なのになぜ助けてくれなかったのか」と責められます。

しかし、いじめを傍観していただけの自分に負い目を感じていたユウは、反論できないまま、大人へと成長します。いじめから息子を守れなかった親、フジシュンの「親友」のユウを「兄を見捨てた奴」と恨む弟……フジシュンの自殺で、十字架を背負うことになった、それぞれの登場人物の心情が、苦しいほど伝わってくる作品となっています。映画「十字架」で、主人公のユウを好演したのは、若手実力派俳優と知られる小出恵介です。

フジシュンは、映画を中心に独特の存在感を示してきている小柴亮太、フジシュンの両親は、永瀬正敏と富田靖子、フジシュンの弟は、舞台でも活躍中の葉山奨之が演じました。また、中学校の同級生役を、撮影現場にもなった茨城県筑西市の現役学生からオーディションで選んだことでも話題になった映画「十字架」。いじめという重いテーマを扱う作品の舞台となることには不安の声もあったそうですが、筑西市民が一丸となって作り上げられた作品にもなりました。

重松清作品「とんび」「ナイフ」「疾走」あらすじネタバレ!感想は?

重松清の傑作「とんび」「ナイフ」「疾走」あらすじネタバレ!運命を受け入れる生き方とは

重松清の作品は、表面上の付き合いでは見えない人間関係を深く掘り下げていくところも魅力です。重松清の「とんび」は、自分をかばってくれたことで母親を亡くしてしまった息子に、負い目を感じさせまいと奮闘する父親の姿を描いています。親に捨てられた過去を持つ父親は、時に息子とぶつかり合いながらも、不器用ながら子育てに奮闘します。一見すると頑固親父にしか見えない父親ですが、実は、誰よりも息子を想う、気の優しい人です。

「ナイフ」には、チビであることを理由にいじめを受ける息子をなんとか守ろうと、ポケットにナイフを忍ばせる父親の姿が描かれています。息子と同じくチビというコンプレックスを抱える父。逃れられない現実を受け入れつつも、しぶとく生きていく様を、息子に伝えていきます。「疾走」は、「とんび」や「ナイフ」より、さらに過酷な状況に追い詰められた中学生の短い人生を描いた衝撃作です。

旧約聖書を愛読しているのに、神は助けてなどくれない現実を突きつけられる主人公のシュウジ。いじめや一家離散からはじまって、犯罪に走ってしまうシュウジの魂は、どこへ向かうのか……。悲惨な物語を通して、逃れられない運命や、変えられない宿命の中、生きること・死ぬことから目をそらすなと、鋭く突き付けてくる作品です。

重松清の作品を読んだ感想は?「ただ哀しい」から「人間を描き切っている」までさまざま

重松清の作品の感想には、「ずっしり重い」「ただ哀しい」と、その重みにうちひしがれた意見も多く並びます。一方で、「人間を見事に描き切っている」「それでも救いがあると信じたい」「ではどうすればよかったのか」と、重いテーマの先にある可能性に期待したいという感想も少なくありません。少なくとも、どの読者の心にも、何らかの影響を与えていることだけはたしかでしょう。

たしかに、重松清の小説は、母親のいない家庭や、いじめを受ける子供、犯罪者の家族などという重いテーマが多く描かれ、読んでいると、胸が苦しくなる作品ばかりです。どのストーリーにも結末はやってきますが、期待する明るい未来とは限らないのも重松清作品の特徴でしょう。そのまま命を失う主人公の姿に、「結局、人は己の運命に逆らうことができないのか」と、妙なリアルさだけが残るときもあります。

実は、重松清は、読む側に安易に同情させないよう、同情できないように意識して書いているそうです。当然、読者の経験によって作品のとらえ方は変わりますが、とりわけ「疾走」に関して、重松清は、被害者と加害者のどちら側にも誘導しないように描いているといいます。そうして想像力を働かせた読者が気づくのは、「自分も加害者側に置かれうるのだ」という実感なのかもしれません。

重松清の作品がまた映画に!浅野忠信主演で期待される「幼な子われらに生まれ」

重松清の作品が、また映画化されることが決定しました。今回映画化される「幼な子われらに生まれ」は、再婚同士の夫婦の間に子供ができるという物語です。これもまた、どこかにありそうなシチュエーションの物語ですが、重松清の手にかかると、登場人物一人一人の心情が複雑に交錯しています。新しい家族が増えるハッピーなテーマのようなのですが、当事者の誰もが祝福しているとは限らない、という事実が待ち受けています。

実は、「幼な子われらに生まれ」は、重松清が20年も前の1996年に書いた作品です。執筆当初から、脚本家の荒井晴彦と重松清の間で、映画化を約束していたといいます。双方とも人気作家と脚本家になり、忙しい中で、ようやく映画化の環境が整ったというところでしょうか。

妻の連れ子からの冷たい視線を感じる夫を演じるのは、浅野忠信です。妻を演じるのは、難しい役柄にも意欲的に挑戦している田中麗奈。20年前の作品とはいえ、ステップファミリーの抱える問題は、今まさに注目されつつあるテーマです。少しでも興味のある方は、まずは原作を読み、その世界に浸ってみることをおすすめします。

運命や宿命にどのように立ち向かうべきなのかを、深く教えてくれる人生の教科書のようでもある重松清の作品。「自分も登場人物のひとりなのだ」と感じた先にどのような世界が開けているのかは、ぜひ作品を読んで確かめてみてください。

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