2017年8月1日 更新
戸田奈津子は誤訳の女王!?「ロード・オブ・ザ・リング」の騒動とは?
戸田奈津子は誤訳の女王!?騒ぎになった作品とは?
戸田奈津子は、洋画字幕翻訳の第一人者。「E.T.」「インディ・ジョーンズ」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」など、有名な洋画の字幕を担当しており、ハリウッドスターが来日した際の同時通訳も担当することでメディア露出が増えていきました。今では、戸田奈津子の名前と顔は、世間にすっかり浸透しています。
しかし、「スター・ウォーズ エピソード1」や「ジュラシック・ワールド」「ロード・オブ・ザ・リング」で誤訳騒ぎが続いたことで、戸田奈津子には「誤訳の女王」という不名誉な異名が付けられることに。その一方で、彼女の翻訳を「高レベルな意訳」だと評する人もいるなど、実際のところ、評価は分かれているようです。
戸田奈津子「ロード・オブ・ザ・リング」の騒動とは?降板を求める署名運動に発展?
戸田奈津子が起こした誤訳騒動の中で最も大きいものは、「ロード・オブ・ザ・リング」です。この作品は、非常に固有名詞が多いため、翻訳作業が困難になることを察していた原作者は、「翻訳の手引き」を用意していたそうです。しかし、それを読まずに翻訳してしまったという戸田奈津子。そのため、原作に忠実に訳されていた翻訳版の小説や、日本語吹替え版とはまったく違う訳が展開されたといいます。
そのことに憤慨したファンが行ったのが、第2作以降の戸田奈津子の降板と、誤訳の修正を求める署名活動。その結果が、配給元の日本ヘラルドと、ピーター・ジャクソン監督に送られる事態にまで発展しました。しかし、戸田奈津子は、「ロード・オブ・ザ・リング」の原作は数十年前の作品であり、その間には言葉も変わるのだから、現代の観客が違和感を抱かない字幕にしたまでだと語っています。
その後、誤訳騒動を受けたピーター・ジャクソン監督は、第2作目からは戸田奈津子を外すと発言。さらなる紆余曲折の末、原作翻訳者の田中明子と原作出版元の評論社が全訳を行い、その原稿を元に戸田奈津子が字幕を作成するという複雑な手法を取ることになりました。
戸田奈津子の誤訳に町山智浩が苦言!実は病気のせいだった?
戸田奈津子の誤訳に町山智浩が苦言!?制作側の注釈を無視している?
戸田奈津子の誤訳の多さに関しては、映画評論家の町山智浩も苦言を呈しています。町山智浩は、自身が字幕監修した映画の原語台本を例に取り、固有名詞や歴史的背景、専門用語、英語独特の言い回しなどについては、制作側による英語の注釈が付いているのが通常だとコメント。戸田奈津子が担当する作品にも、誤訳を未然に防ぐための注釈が多かれ少なかれ書かれているはずなのに、ここまで誤訳が多いのは、注釈を読んでいないとしか考えられないといいます。
誤訳を指摘されていることに対しては、あくまで「誤訳ではなく、意訳の解釈の違いだ」としている戸田奈津子。「本人にきちんと言えないまま何十年も経って、取り返しがつかない事態になってしまった」と訴える町山智浩との溝は深いようです。
戸田奈津子の誤訳は実は病気のせいだった?左目がほぼ見えない?
誤訳が多いイメージが払しょくされない戸田奈津子ですが、2014年に、自身の病気を告白したことで、今度は、「誤訳が多いのは病気と関係があるのでは」と言われています。戸田奈津子は、”目の病”を患っており、左目がほぼ見えない状態なのだとか。
御年80歳の戸田奈津子に気になる症状が出始めたのは60歳頃で、グラフ用紙や障子の桟が曲がって見えるようになり受診したところ、「加齢黄斑変性」と診断されました。この症状は、一度なってしまうと治らないため、上手く付き合っていくしか方法がないとされています。右目しか使えない戸田奈津子は、紛らわしい単語を見誤ることで誤訳している場合もないとは言い切れないのかも知れません。
字幕の原稿は、短期間で仕上げないとならないため、とても過酷な仕事だそうです。しかし、戸田奈津子にとって字幕の仕事は楽しい仕事。以前は週1本のペースだったのを月1本にセーブしているものの、今後も前向きに仕事を続けていくと話しています。
戸田奈津子にとって理想の字幕とは?神戸で講演会が開催!
戸田奈津子は、子供の頃から映画が好きで、母親と映画館によく通っていたことがきっかけで、洋画から英語に興味を持つようになったと言います。大学卒業間近になり、どのような仕事をしたいか考えた時にも字幕のことが頭に浮かび、洋画の字幕翻訳者として名前を見かける清水俊二に興味を持つようになったとか。
大学卒業後は、一般の会社に就職しますが、社長秘書として仕事をしていても、いつかは字幕翻訳者になるという強い確信があったそうです。その確信は現実となり、手紙を出したことがきっかけで奇跡的に会うことができた清水俊二を通じて翻訳のアルバイトを行うようになりました。
戸田奈津子が字幕翻訳者として飛躍するきっかけとなったのは、ガイド兼通訳を担当した流れから、フランシス・フォード・コッポラ監督の推薦で「地獄の黙示録」の字幕を手掛けたことです。以後、字幕翻訳の仕事が増えていった戸田奈津子にとって、清水俊二とフランシス・フォード・コッポラ監督との出会いは運命的だったと言えるでしょう。
戸田奈津子が考える理想的な字幕は、読む人に負担が掛からず、俳優が自分にも分かる言葉で話しているかのように感じる「透明な字幕」です。そんな字幕のスペシャリストである戸田奈津子が、外国映画の魅力や、親交のある映画人との秘話を披露する講演会なども開いています。
長きにわたって映画界を支えてきた戸田奈津子が字幕翻訳を手掛けた作品数は1500本以上。来日する俳優陣や監督らの通訳も数多く務めてきただけに、ここでしか聴けないような貴重な秘話もたくさん登場したようです。