辻一弘は特殊メイクアップアーティスの第一人者!引退後、芸術家に転身した理由とは

辻一弘が世界的な特殊メイクアップアーティストになるまでの経歴や成功の秘訣!

辻一弘が特殊メイクアップアーティス目指し、巨匠ディック・スミスに直訴!

子供の頃、映画「スターウォーズ」に衝撃を受けた辻一弘は、特殊効果の仕事に就くことを夢見るようになり、中学生になると、8mm映画やミニチュアを制作し、我流で夢を目指すようになりました。高校3年の時には、米映画雑誌「ファンゴリア」で、特殊メイクの巨匠ディック・スミスの存在を知り、自分のやりたいことはこれだ!と確信。

辻一弘は、独学で特殊メイクの勉強を開始。辞書を片手に洋書で情報を集めていた1987年、ディック・スミスの私書箱の住所を奇跡的に発見した辻一弘は、特殊メイクの勉強法などを問う手紙を郵送し、約7カ月間彼と文通したと言います。そして迎えた高校卒業の翌日に、ホラー映画「スウィートホーム」の監修で来日したディック・スミスの推薦でスタッフとして働くことに。

その後は、日本における特殊メイクの第一人者・江川悦子の「メイクアップディメンションズ」へ所属して独立。代々木アニメーション学院の特殊メイク講師を経て、1996年に渡米します。そして、当時アカデミー賞を3回も受賞(最終的に7回受賞して殿堂入り)していた特殊メイク界のトップ、リック・ベイカーの「シノベーションスタジオ」で働くという夢を27歳にして実現させました。

辻一弘が特殊メイクアップアーティスの第一人者になれた理由はズバリ「情熱」!

辻一弘は渡米後、すぐに独創性や技術の高さで評判の特殊メイクアップアーティストとなり、数々の大作に参加しています。そのまま高い評価を受け続け、2007年には独立し、自らのアトリエ「KTS Effects」を設立しました。辻一弘は成功の秘訣を、「人とは異なる手法で、自分なりのこだわりを追い求めること」と「自分は何が何でもこれがやりたい!という情熱を持続させること」だと明かしています。

実際、メールやインターネットがなかった時代に、書店の洋書コーナーで情報をかき集め、高校教師に文法をチェックしてもらい、英語の手紙を出していた辻一弘。その情熱と行動力が、現在の活躍に繋がっているのでしょう。その分、毎年来日して日本の学生に特殊メイクの講義を行っている辻一弘は、若者の情熱や行動力の低さを危惧しているようです。

「講義に来ているようではダメ」「心から世界で活躍したいと思うなら、すでに海外へ飛び出しているはず」「それくらいの熱意と行動力がないと、海外では潰される」とげきを飛ばしています。

辻一弘の映画「LOOPER/ルーパー」ほか代表作品は?引退後、芸術家に転身した理由とは

辻一弘の映画「LOOPER/ルーパー」ほか代表作をおさらい!

辻一弘が、ハリウッド映画界に初参加した作品は「メン・イン・ブラック」です。他にも、「バットマン&ロビン」や「PLANET OF THE APES/猿の惑星」「ベンジャミン・バトン」「グリンチ」などで特殊メイクを担当しました。評価の高さは、「もしも昨日が選べたら」と「マッド・ファット・ワイフ」で、2007年と2008年の米アカデミー賞のメイクアップ部門にノミネートされ、「アカデミー賞に一番近い日本人」と言われたほどです。

中でも辻一弘が自信作と振り返っているのが、2011年に撮影された「LOOPER/ルーパー」。俳優のジョゼフ・ゴードン=レヴィットとブルース・ウィリスが、主人公ジョーの現在と未来を演じ、異なる2人が演じる現在と未来の主人公の対決シーンもあるという、特殊メイクの技量が問われる難作でした。しかし、辻一弘の技術がつぎこまれた特殊メイクは、キャストも監督も満場一致で納得のいく仕上がりに。辻一弘の力がなければ、作品の完成は難しかったといえるほどかもしれません。

辻一弘が特殊メイクアップアーティストを引退し芸術家に転身した理由とは

辻一弘は「オファーを受けて、指示に従って仕事をすること」と「ハリウッド映画界の“金こそがすべて”という思想」に嫌気がさしてしまい、2011年に、映画界での特殊メイクの仕事からは卒業。なんと現代芸術家に転身してしまいました。辻一弘は現在、今まで培ってきた最高峰の特殊メイク技術を駆使し、2倍のスケールのエイブラハム・リンカーンやサルバドール・ダリなどの偉人の胸像を、一体につき4カ月以上かけるという緻密さで制作しています。

本心を顔に出さない土地柄と言われる京都で生まれ育ったことや、両親が幼い頃に離婚してしまったことで、顔色を伺うことが癖になり、人の表情を読む観察眼を養ったという辻一弘。徹底的に「顔」にこだわって制作した芸術作品は、とてもシリコン製の像とは思えないリアルさです。

辻一弘が言うには、唯一無二の作品を作り出す苦しみを独り占めできる幸せや、自分が本当に作りたいと思うものを創造して評価されることの喜びは、映画界では得られなかったものとか。こうして、アンディ・ウォーホルやフリーダ・カーロ、ロバート・クラムやディック・スミスなどの偉人の精巧な顔を制作し、見る者を驚かせています。

辻一弘が映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」で復帰!

芸術作品の制作に没頭していた辻一弘が久しぶりに映画界へ帰ってきたのが、アメリカ映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」です。第二次世界大戦時のイギリス首相ウィンストン・チャーチルの就任から4週間の出来事を描いた本作。辻一弘は、主演した俳優ゲイリー・オールドマンを、特殊メイクによって見事にウィンストン・チャーチルへと変身させています。

実在したウィンストン・チャーチルとゲイリー・オールドマンは、容姿はもちろんのこと、年齢も体型も大きく異なりますが、準備期間に半年、撮影期間中毎朝4時間かけて施した至高の特殊メイクは、完璧な出来栄え!編集でのCG加工も一切なしという驚きの仕上がりです。主演に抜擢されたゲイリー・オールドマン自らが、監督のジョー・ライトに、「辻一弘の特殊メイク技術は凄い」と進言したことで辻一弘に白羽の矢が立ち、1作限りの電撃復帰が実現しました。

引退後5年を経ても、特殊メイク技術は一切衰えていなかった辻一弘。ゲイリー・オールドマンは、自分をウィンストン・チャーチルそっくりに変身させた辻一弘を「まるで魔法使い」と表現し、その高い才能を絶賛しています。そんな辻一弘が、日本の若者に向けて送ったエールが「海外での仕事を臆することはない」ということです。

「日本人ならではの繊細さやこだわりの強さは武器になる」「一番重要なのは技術よりも内側の情熱の強さ」だと説いています。「スターウォーズ」に衝撃を受けた日本の少年が世界的な特殊メイクアップアーティストになり、華麗なキャリアを捨てて芸術家に転身して、これからどのような評価を受けていくのか?その活躍がますます楽しみです。

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