薬丸岳の意外な経歴とは?「天使のナイフ」でデビューするまでの葛藤とは?!
薬丸岳の意外な経歴とは?作家なのにミュージカル劇団出身!
薬丸岳(やくまるがく)は、少年犯罪という難しいテーマを扱った作品を多数発表している作家です。2005年に「天使のナイフ」で第51回江戸川乱歩賞を受賞し、36歳で作家デビューをつかんでいます。
実は、少年時代から映画が好きだった薬丸岳は、役者を志してミュージカル劇団「東京キッドブラザース」に入団していたという意外な経歴の持ち主。しかし、ミュージカルが肌に合わず、わずか4カ月ほどで退団。その後は、バーテンダーや旅行会社といった職業を転々としながら、脚本家や漫画原作者を目指して書き続ける日々を送っていたそうです。
薬丸岳が「天使のナイフ」で江戸川乱歩賞までの葛藤!小説執筆を決意させた作品は?
脚本家として成功することもなく、漫画原作者を目指して賞に応募して入賞を果たしても仕事にはつながらなかったという薬丸岳。行き詰まりを感じていた時に読んだのが、高野和明の江戸川乱歩賞受賞作「13階段」でした。江戸川乱歩賞とは、ミステリー小説家がデビューを勝ち取る新人賞。
「アマチュアの人がこんなにすごい作品を作るのか」と衝撃を受けた薬丸岳は、自身の創作に対する中途半端さを反省し、やり切ったと思える作品を作ろうと小説執筆を決意します。こうして、後に江戸川乱歩賞を受賞する「天使のナイフ」を完成させました。
薬丸岳の「夏目シリーズ」などおすすめ作品!“少年法”に興味を持った事件とは?
薬丸岳の感涙必至の「夏目シリーズ」などおすすめ作品ランキング!
薬丸岳のおすすめ作品をランキング形式でご紹介しましょう。第1位は、なんといってもデビュー作「天使のナイフ」。少年法が内包する闇を照らしだし、世間に衝撃を与えた問題作です。第2位は「刑事のまなざし」。自らも犯罪被害者の家族である夏目刑事の活躍を描く連作短編「夏目シリーズ」の第1作で、夏目刑事の優しくも厳しい姿に涙するファンも多いシリーズです。第3位は、殺人を犯し
もしれない子供に寄り添う父親の姿を描いた「Aではない君と」。加害者の更生や被害者の救済の意味を、親子という視点から深く考えさせられる佳作です。
薬丸岳が“少年法”に興味を持った残忍な事件とは?
13歳の少年に妻を殺された男を主人公に据えたデビュー作「天使のナイフ」をはじめ、薬丸岳の作品では、少年法がはらむ様々な問題点が描かれることが多くあります。薬丸岳が少年法に興味を持つきっかけになったのは、1988~1889年にかけて起きた女子高生コンクリート詰め殺人事件でした。
当時19歳で、犯人グループとそう年齢も変わらなかった薬丸岳は、残忍な事件でありながら、犯人が未成年だったため少年法によって保護される現実に強い衝撃を受けたと言います。加害者に興味は覚えず、被害者側に感情移入した薬丸岳は、少年法の理不尽さに疑問を持ち、裁判の記録などを読むように。
その過程でいろいろと考えたものの、ケースバイケースという面もあり、明確な答えは出せないと考えるに至りました。しかしだからこそ、真剣に考える過程が重要なのではないかと語っています。
薬丸岳の「友罪」は「はっきり言って問題作」?
デビュー以来、少年犯罪や少年法といった難しいテーマに挑み続けてきた薬丸岳。デリケートで難しいテーマなだけに、作品を説得力のあるものにするためには刑法を徹底的に学ぶ必要がありました。そのため、デビュー作となった「天使のナイフ」を執筆するにあたっても、少年法に関する資料や本を徹底的に読み漁り、独学で必死に学んだと言います。
資料の中には、被害者の立場から書かれたものや、加害者の立場から書かれたものなど、様々な主張がありました。そうした中で、薬丸岳は、一方に偏った見方にならないように心掛け、どちらもしっかりと読み込んでいったそうです。
そうして誕生したデビュー作「天使のナイフ」の発表から8年ほどがたった2013年。薬丸岳は、この真摯な創作姿勢からさらに一歩を踏み込み、「友罪」という問題作を生み出しました。
主人公は、ジャーナリストになる夢を諦めて工場で働き始めた益田です。そこで出会った同僚の鈴木と友情を育みますが、彼が14年前に起こった連続児童殺傷事件の犯人だと気付いてしまうというのが「友罪」のあらすじ。少年法で保護された加害者は更生し、やがて社会へ出ることになりますが、「友罪」は、まさに少年犯罪の「その後」を描いていることになります。
この薬丸岳の渾身の問題作「友罪」が、このたび映画化されます。映画「友罪」で、過去に連続児童殺傷事件を犯した鈴木役を演じるのは瑛太で、鈴木の過去を知ることになる益田役を演じるのは生田斗真です。日本映画界で実力派と言える2人を主演に迎え、2018年5月25日より公開されます。
4月24日に行われた完成披露試写会で、主演の1人である生田斗真は、「はっきり言って問題作です」とコメント。「この映画を作ってよかったのだろうかと、スタッフも含めずっと考えながら撮影していた記憶があります」と語った通り、制作側も並々ならぬ決意でこの作品の内包する重いテーマに挑んだことを明かしています。
佐藤浩市や夏帆、富田靖子、山本美月といったキャストも、それぞれにかなりの覚悟をもって挑んだと語っており、その覚悟が観客に何をもたらすことになるのか期待が高まるばかりです。
重いテーマを扱う作品が多いだけに、手に取るにはなかなか勇気のいる薬丸岳の小説ですが、実力派キャストの揃った映画「友罪」が公開されることによって、読まれる機会が増えるかもしれませんね。