渡瀬恒彦「十津川警部シリーズ」無念の降板!演技派俳優の遺作は?
渡瀬恒彦は「十津川警部」シリーズをはじめ多くの人気シリーズを持つ演技派ベテラン俳優
2017年3月14日、渡瀬恒彦が、胆のうがんの闘病も虚しく亡くなりました。1944年生まれ、72歳でした。1990年代はじめからこれまで、TBSの「十津川警部」シリーズや「世直し公務員ザ・公証人」シリーズ、テレビ朝日の「タクシードライバーの推理日誌」シリーズなどの2時間ドラマに数多く出演。さらに、テレビ朝日のシーズンドラマとして親しまれた「おみやさん」や「警視庁捜査一課9係」の主演俳優として、テレビで見ない時はないほど、安定した人気と実力を誇る俳優でした。
どの作品においても、サスペンスもの本来の謎解き部分を邪魔しない、ナチュラルで抑制された知的な演技が、これだけのシリーズを成功させた秘訣だったのかもしれません。
渡瀬恒彦が胆のうがんの闘病で無念の降板をした「十津川警部」シリーズは全54作品
TBSの「十津川警部」シリーズは、1990年代の渡瀬恒彦のシリーズものの中でも早くにスタートした作品でした。パートナーの亀井刑事を演じた伊東四郎とともに、全54作品に出演しています。本人にとっても愛着の深い作品でしたが、2015年より闘病中だった胆のうがんの経過が思わしくなく、2016年に降板が決定。2017年1月からは、内藤剛志が十津川警部を、亀井刑事には石丸謙二郎が扮して、新シリーズがスタートしています。
この「十津川警部」シリーズは、西村京太郎原作の鉄道ミステリーの傑作です。渡瀬恒彦が十津川警部を演じる以前から、他局も含めて、多くの俳優が主役を務めてきましたが、もっとも人気があったのは、渡瀬恒彦・伊東四郎コンビでした。
渡瀬恒彦に2度の結婚歴アリ!息子や娘は何してる?
渡瀬恒彦は渡哲也の弟で、東映の喧嘩番長だった!
渡瀬恒彦が、俳優・渡哲也の弟であることは有名です。渡瀬恒彦は、早稲田大学法学部に入学しましたが、単位不足で除籍後、電通PRセンターに入社して、しばらくサラリーマン生活を送っていました。しかし、東映の岡田茂社長が、時代劇からの脱却をはかるため、次代のスターとして渡瀬恒彦をスカウトします。1969年のことでした。
しかし、社長の覚えめでたく東映に入ったものの、なかなか芽が出なかった渡瀬恒彦は、撮影所で鬱屈する毎日。歳を重ねるごとに、役者として円熟味を増したことで、「セーラー服と機関銃」や「道頓堀川」「時代屋の女房」などの映画作品で、演技派俳優として頭角を現し、テレビにも本格的に進出していきます。
実は渡瀬恒彦は、空手二段の猛者でした。デビュー当時は、悪役や敵役を演じる俳優を中心に結成された「ピラニア軍団」の室田日出男や川谷拓三、志賀勝が恐れるほどの暴れ者だったといい、喧嘩では芸能界最強という説もあります。
渡瀬恒彦の最初の結婚相手は、あの大原麗子だった!
渡瀬恒彦が、もうひとつ大きな話題になったのは、1973年に、女優の大原麗子と結婚したことでした。しかし、この結婚は長く続かず、4年半で離婚しています。原因は、女優を辞めて家に入ってほしかった渡瀬恒彦に対し、大原麗子が仕事を辞めることができなかったことのようです。
渡瀬恒彦は、その後一般女性と結婚し、一男一女をもうけます。2人の子供は一般人として育ち、これまで幸せな家庭を営んできました。一方の大原麗子は、歌手の森進一と再婚するも離婚。晩年は、難病のギラン・バレー症候群に悩まされ、2009年に、孤独な死を迎えたことで有名です。
渡瀬恒彦の遺作は、テレビ朝日のスペシャルドラマ「そして誰もいなくなった」
渡瀬恒彦の闘病に関しては、ファンだけでなく、彼を慕う多くの俳優仲間やスタッフも心配していたようです。3月25日にオンエアされる、テレビ朝日のスペシャルドラマ「そして誰もいなくなった」の制作発表会見において、先輩俳優である津川雅彦は、「がんの渡瀬恒彦は、みんなが、いたわったわけです。
がんを押して頑張ったわけで、みんな和やかにし、優しくし、気を使った」と、病を押してこの作品に出演した渡瀬恒彦の厳しい状況について語っていました。出演者やスタッフはきっと、渡瀬恒彦の出演に対する並々ならぬ思いを目の当たりにしたことでしょう。会見を欠席した渡瀬恒彦は、「仕上がりは、どうなっているのか……テレビの前にお座りください」というメッセージを寄せています。
まさに、どうか自分の最後の作品を見てほしいという願いが込められていたかのように思われてなりません。渡瀬恒彦の死は、テレビドラマ界にとって、大きな損失です。兄である渡哲也は、かつての日活の映画スターから、結局脱却できずにいました。一方、東映のチンピラ俳優から脱し、その死の間際まで、演技派俳優として地道に活躍してきた弟の渡瀬恒彦。がんのステージIV、余命1年の告知を受けてもなお、最後まで役者として生きたその足跡は、大いに賞賛されるべきでしょう。