平昌オリンピックでのパシュート金メダル獲得という輝かしい結果が記憶に新しい、元・女子スケーターの菊池彩花。今から約3年前の2015年には、高木菜那・高木美帆選手と共に団体パシュート出場。日本史上初となる金メダルを獲得したことが追い風となり、数々の功績を残しました。
ただ、その背景には、引退を考えるきっかけにもなった、つらい怪我の経験も。困難を乗り越え、現在はコーチとして活躍している菊池彩花は、2018年10月末に結婚を発表。今後もさらなる活躍が期待されます。
立派な筋肉に裏打ちされた、確かな功績の数々
元・女子スピードスケート選手として名高い菊池彩花。平昌オリンピックの個人種目では、3000mで19位、そして1500mでは16位という結果に終わっていますが、パシュート女子チームを金メダルへと導く偉業を成し遂げています。
高木姉妹・佐藤綾乃選手と4人で組んだチーム女子パシュートにおいて、カナダとの準決勝で勝利をおさめ決勝進出へ王手。決勝でオランダを破り、チーム全体として金メダルを獲得するための道筋をかたち作りました。
身長が170cmと高めの菊池彩花。小学校の頃からスケートの練習をしており、なんと高校時代には競技用自転車をつかって往復3時間半の道のりを通学していたというから驚きです。その長い脚に綺麗に縁どられた筋肉は芸術作品にも匹敵する美しさ。氷上でよりスピードを増すための蹴り出す筋肉は、その積み重なる鍛錬から徐々に発達していったのでしょう。残された確かな功績の数々にも納得の一言です。
そんな菊池彩花は2018年4月、所属する富士急行の報告会の場で引退を発表しました。
つらい怪我の経験が、引退を考えるきっかけに
菊池彩花を突如襲ったのは、2016年8月の怪我。合宿での練習中に激しく転倒してしまい、共にいたチームメイトと接触。右脚のふくらはぎにブレードによる裂傷を負ってしまいました。緊急搬送からの、全治1カ月という事態は、当時の菊池彩花には重すぎる現実として映ったでしょう。絶対安静1ヶ月の後も全快とはとても言えない状態で、松葉杖生活が続きました。
菊池彩花の強さが垣間見える一言があります。
「怖いという気持ちがあったので、安心した」
リハビリを余儀なくされ、思うような練習ができない中、高木選手を筆頭にライバルたちが成績を伸ばしていく。通常の精神の持ち主であれば、焦って正常ではいられなくなってしまうかもしれません。
リハビリの最中にも試合を観て研究し、自己研鑽に励んでいた菊池彩花。選手としての現在と、引退の2文字が見え始める境目で、それでも確かに感じていたのは「恐怖」という感情。
ライバルたちの頑張る姿も、菊池彩花にとっては着火剤でした。恐怖と誠実に向き合いながらもリハビリに励み、無事にチームへの復帰を果たして合宿に合流することに成功。怪我以前の成績を超える結果を出すこともあったとか。
ただ、この時のつらい怪我の経験が、徐々に引退へと身を移していくきっかけとなったのは間違いありません。
2018年10月結婚!お相手は同じくスケート選手の長島圭一郎
引退後の2018年10月末、結婚を発表した菊池彩花。同じくスケート選手である長島圭一郎がお相手です。現在はお二方ともコーチとして現場に携わっています。
長島圭一郎さんは、バンクーバーでのオリンピック銀メダル保持者。夫婦揃ってスケート選手、そしてオリンピックメダリストという豪華な組み合わせに、世間が沸き立ちました。
菊池彩花の引退のきっかけともなったふくらはぎの怪我は、同時に、結婚へのめでたい布石にもなっていました。松葉杖生活、思うように練習もできずに焦る気持ちを抱える中で、しっかりと支えになってくれたという長島圭一郎。きっとお互いに、スケートという競技の過酷さ、オリンピックというプレッシャーの多い場に立つ境地を知っていたからこそ、通じ合うものがあったのでしょう。
引退も視野に入れていた菊池彩花。彼女にとっての“選手という道”は途絶えてしまうけれども、2人で支え合うことによって開ける別の道が見えてきたことは、言い表せない救いとなったに違いありません。
結婚発表後、菊池彩花はこうコメントしています。
「時に厳しく、時に優しく私を成長させてくれる大切な存在。お互いに支えあいながら、これからの人生を共に歩んでいきたいと思います。日頃より応援してくださる皆様に感謝を申し上げます。これからも温かく見守って頂けると幸いです」
なんと5人兄弟!全員女性で、5人中4人がオリンピック出場経験あり
菊池彩花は、なんと5人兄弟の次女。全員女性で、5人中4人がスケート選手です。オリンピック出場経験率がこんなに高いのは、きっと菊池姉妹以外にはいないでしょう。
長女は真里亜(まりあ)。唯一スケート選手ではなく、美容師として働かれています。次女:菊池彩花、三女:悠希(ゆうき)、四女:萌水(もえみ)、五女:純礼(すみれ)。菊池彩花から下の4人が全員スケート選手ということになります。
その中で、平昌オリンピックには3人が同時に出場。きっと、姉妹の間で情報交換や悩みの共有も頻繁に行われているのでしょう。菊池彩花の強さ、強固な精神の秘訣が垣間見えた気がします。