現・慶應義塾大学の前身となった慶應義塾の創設者であり、蘭学者や啓蒙思想家、教育者としても知られている福沢諭吉。1万円札の肖像としても有名で、もはやその名を聞いたことがない人はないでしょう。
一橋大学の前身である商法講習所や、神戸商業高校の前身である神戸商業講習所、現・北里研究所となっている土筆ヶ岡養生園、そして現・東京大学医科学研究所の伝染病研究所などなど、福沢諭吉は慶應義塾大学の他にも様々な教育機関の創設にも関わっていることは、案外知らない人が多いかもしれません。
「中村諭吉」と名乗っていた時期もある福沢諭吉。彼の名を聞いてまず浮かぶのは「1万円の人」、そして「学問のすゝめ」ではないでしょうか。
「学問のすゝめ」は今、改めて読むべき本
「学問のすゝめ」は、福沢諭吉の著書のひとつ。誰もが名前を聞いたことがある代表作でもあります。17編までシリーズ化しており、通して読んだことはなくとも、中に収められた言葉は聞いたことがある、という方も多いのではないでしょうか。
1872年に初編が出版されて以降、数年にわたって順次刊行された「学問のすゝめ」は、1876年の17編出版をもって、一般的には完成と定義されています。ですが、1880年に「合本學問之勸序(がっぽんがくもんのすすめじょ)」と呼ばれる前書きが加えられ、1冊の本として改めて出版されました。
この「学問のすゝめ」は今の時代だからこそ読むべき本とされ、老若男女すべての日本人にお薦めといわれています。なんだか難しそうなイメージも強く、「天は人の上に人を造らず」という言葉だけが独り歩きしており、そのことから平等意識を説いた本であると誤解されている節もありますが、本質は違います。
150年前に書かれたとは思えないほど、金言やアドバイスに満ちた本です。いきなり原書を読むのは抵抗があるという方は、「情報7days ニュースキャスター」等の番組出演でおなじみの教育学者・齋藤孝の書いた「おとな『学問のすすめ』」「こども『学問のすすめ』」をおすすめします。
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名言が多数存在!これからの時代を生きる指標
「行為する者にとって、行為せざる者は最も過酷な批判者である」
「進まざる者は必ず退き、退かざる者は必ず進む」
「今日も、生涯の一日なり」
などなど、福沢諭吉が残した名言は、挙げればキリがないほどです。さすが、近代教育の土台をつくりあげた偉大な教育家として知られている人物だけあり、現代にも通じる本質が説かれています。
福沢諭吉が生まれた中津藩(中津は現在の大分県中津市)は、特に身分制度が厳しかったところ。たとえ能力があっても、位が低ければ重要な役職に就くことは難しい時代でした。福沢諭吉本人が封建制度に疑問を抱いたのは、この頃の経験がきっかけだったといわれています。
「賢人と愚人との別は、学ぶと学ばざるとによって出来るものなり」とは、「学問のすゝめ」初編にある言葉。「愚かな人と賢い人の大きな違いは、学ぶか学ばないかだ」という意味で、明治維新直後の日本国民に向けた「自身も主権者なのだ」という自覚を促す訴えを感じます。
「人にして人を毛嫌ひするなかれ」、これは「学問のすゝめ」最終17編、最後の一文として掲載されている言葉です。冒頭の「天は人の上に人を造らず」は誰もが暗唱できるほど有名な言葉ですが、自分も人なのに、同じ人を毛嫌いするのは筋違いだとするこの言葉も、人間関係が疎かになりがちな現代こそ忘れずにおきたい言葉ですね。
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功績は?福沢諭吉の残したものをおさらい
1万円の肖像画としても有名な福沢諭吉。「学問のすゝめ」を書いたり、慶應義塾を創設したりした以外に、どんな功績を残しているのでしょうか。
福沢諭吉の功績は、主に5つあります。
近代教育の礎をつくった
生涯のほとんどを教育に捧げ、現代にも通じる教育の礎をつくりました。慶応義塾大学に加え、一橋大学や早稲田大学、専修大学などの創立にも関わったのは、前述した通りです。
洋書の翻訳
幕末から明治初期にかけて、日本語以外の言語を話すことができる人はそう多くはいませんでした。福沢諭吉は20代前半の頃から、洋書の翻訳を積極的に行っています。「speech」を「演説」、「society」を「社会」と訳したのも福沢諭吉だと伝えられています。
銀行の捉え方を国民に伝えた
中央銀行という考え方や複式簿記を日本に伝えたのも福沢諭吉。江戸時代に欧米を回っていた経験から知識を得たとみられています。
保険制度を紹介した
何か問題が起こった際には、親戚間で話し合って処理するという考え方が主流だったのも、江戸時代までの話。福沢諭吉が「西洋旅案内」という書物において、ヨーロッパで広まっていた保険制度を紹介したことから、日本国内でも「保険」という考えた方が広まりました。
その他、様々な提言をおこなった
新聞に「国会論」を掲載、国会開設や憲法制定に向けた提言を行ったのも福沢諭吉。木戸孝允と手を組み、「学制」という近代学校制度を制定したのも福沢諭吉と、主に教育方面で現代の礎を築いてきた功労者として知られています。
その他、新聞社・病院方面にも、日本の近代化に大きな足跡を残した福沢諭吉。まずは「学問のすゝめ」を読んでみることから、あらためて彼の偉大な功績について学んでみましょう。
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