2015年12月6日 更新
井原西鶴の代表作「好色一代男」あらすじ感想まとめ!
井原西鶴が描く官能物語!「好色一代男」のあらすじ感想まとめ!
井原西鶴は、江戸時代に俳諧師、浮世草子作家として、関西地方で有名となりました。浮世草子作家、井原西鶴の代表作としてまず上げられるのが、「好色一代男」。本作は、一般庶民である、主人公・世之介の7歳~60歳までの人生を描いた浮世草子です。1年に1章の短編エピソードで、合計54章という構成で成り立つ「好色一代男」は、その名が示す通り、官能性が強い物語で、描写もなかなか過激です。
それでは、「好色一代男」のあらすじを見ていきましょう。主人公の世之介は、弱冠7歳で恋を知り、腰元、遊女、人妻、とあるお屋敷の女中など、数々の女性たちに恋文を送ったり、関係を持ったりしていきます。19歳頃に、女遊びが父親にばれて、勘当されてしまった世之介。それ以後は、諸国を渡り歩き、高名な遊女たちを相手に、好色生活を営みます。
60歳には、さらなる色事を求め、船に乗り、海の彼方にあるという女だらけの島「女護島」へと向かい、消息が途絶えるというラストです。世之介は、傍から見ると、愛欲に溺れた、仕様のない男に見えるかもしれません。しかし、自身に限界を作らず、好きなことをとことん極めようとするバイタリティと希望は感嘆に値すると言っても良いのではないでしょうか。
井原西鶴は売れっ子の浮世草子作家!俳諧師時代の経験が生かされている?
井原西鶴は、1642年、大坂の難波生まれ。15歳頃から俳諧に親しむようになり、西山宗因を中心とする一派、談林派に入門し、その才能を開花させ、一躍有名となった井原西鶴。中でも、一昼夜の間に、できるだけ多くの句を作るという「矢数俳諧」が有名です。数々の功績により、俳諧師としてその名を轟かせた井原西鶴ですが、1682年頃から浮世草子作家へと転身しました。
同年に出版した処女作「好色一代男」は大好評で、何度も増版されるほど、人気だったそうです。それ以後も、「好色五人女」、「日本永代蔵」、「世間胸算用」などの代表作を含め、たくさんの作品を刊行し、庶民を楽しませました。井原西鶴が描く作品は、読みやすく、理解しやすい文章で、自由な世界とリアルな人物像が生き生きと描かれており、現代でも高い評価を得ています。
井原西鶴の作品「世間胸算用」「日本永代蔵」あらすじ感想まとめ!
井原西鶴が描く庶民の大晦日!「世間胸算用」のあらすじ感想まとめ!
井原西鶴の代表作の一つである「世間胸算用」。本作には、「大晦日は一日千金」という副題が付けられており、その副題が示す通り、「世間胸算用」は、大晦日を過ごす町人の様子を描いた物語です。「好色一代男」と同様で、1章ごとに短編のエピソードが描かれており、合計20章という構成で成り立っています。今回は、「世間胸算用」の中の一つ、「長刀は昔の鞘」のあらすじを簡単に紹介しましょう。
江戸時代、大晦日は、その年の収支総決算日にあたり、町人は正月の準備のため、さまざまな手を使い、お金を工面しようとします。「長刀は昔の鞘」というエピソードでは、貧乏長屋に住む武士の妻が、長刀の鞘を質屋に納めてお金を得ようとしますが、いかにして高いお金に換えるかと奮闘する様子が描かれています。昔の庶民も、お金にはとても苦労をしていたことがうかがえますが、やりくり次第でどうにかなるという江戸庶民の姿勢は、彼らの前向きさと生きる力強さを感じることができます。読んでいると生きる勇気をもらえる、井原西鶴の「世間胸算用」はそんな作品だと言えるでしょう。
井原西鶴が描く商売の知恵!「日本永代蔵」のあらすじ感想まとめ!
「日本永代蔵」も、井原西鶴の代表作の一つです。本作は、「大福新長者教」という副題が付いており、金持ちはどのようにして金持ちになったのかという経緯や、ベテラン商人の生活や、商売の知恵などの短編エピソードが30章にわたって収録されています。それでは、「日本永代蔵」の中の一つ、「世界の借屋大将」のあらすじを簡単に紹介します。商店を営む藤市は、正月用の餅を大仏殿の前の餅屋に注文し、餅一貫目につき、いくらを払うと決めていました。12月28日の明け方に餅屋がつきたての餅を持ってきましたが、藤市は一向に受け取ろうとはしません。見かねて、店の従業員である若者が応対しました。
しばらくして、若者が餅を受け取ったことを知った藤市は、「温もりの冷めない餅を受け取ったことよ」と言い、餅の目方を量ったところ、先ほど買った時よりも減っており、若者は大層驚いたというお話です。つきたての餅は水分を含んでおり、通常よりも大きくなっているため、藤市は水分が飛び、サイズが小さくなったら買おうと考えていたのです。商人ゆえの上手い節約の知恵には、現代人も驚くこと間違いありません。
井原西鶴は庶民の喜怒哀楽をリアルに描く天才!浮世草子は江戸時代のライトノベル!
井原西鶴が初めて出版した「好色一代男」を起源としている浮世草子。その浮世草子こそ、江戸時代のライトノベルではないかと評価する声が上がっています。ライトノベルとは、中高生をターゲットとした娯楽小説。作品に登場する人物は、漫画やアニメを彷彿とさせるようなキャラクターであることが特徴です。いわゆる文学作品の小説は、文語体で比喩を用いた描写が多いため、表現が堅く、気楽に小説を楽しみたいという人にとっては、読みにくいものです。
しかし、ライトノベルは、物語が次々に展開していくスピード感がありますし、口語体や即物的な描写が多いため、人物の感情や状況が理解しやすく、読みやすいジャンルの小説なのです。
江戸時代では、それまで、庶民生活をメインテーマとした作品はほとんどなかったため、井原西鶴が出版した「好色一代男」、「世間胸算用」、「日本永代蔵」などの作品は、庶民にとってはとても新鮮でした。庶民生活がリアルに描かれているため、親しみやすく、共感を得やすいジャンルだったと言えるでしょう。また、人物や事物の描写や、物語の展開の仕方が上手く、文体も庶民にとって読みやすいものだったため、大ヒットしたのではないでしょうか。そう考えると、浮世草子は、江戸時代のライトノベル、というのは頷けます。
江戸時代を生きた庶民の喜劇と悲劇。そこから感じ取れる、彼らのたくましい精神と潔い生き様、そして大衆の夢と理想を織り交ぜた数々の物語。井原西鶴が生み出した作品は、現代人が読んでも楽しめると思います。江戸時代の人々の様子を想像しながら、現代にも生かせる生活の知恵や心得を学び取るのも面白いのではないでしょうか。