岩井俊二監督映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」は2016年最高傑作?あらすじ!
岩井俊二監督の最新作が来た!「リップヴァンウィンクルの花嫁」は2016年度の最高傑作か?
岩井俊二監督は、日本を代表する映画監督の1人です。斬新かつ詩的な映像表現で、1990年代から若者を中心に大きな支持を集めてきました。そんな岩井俊二監督の最新作が、今春制作され、好評を博しています。
その映画の題名は「リップヴァンウィンクルの花嫁」。岩井俊二監督は、世間とうまく合わせることのできない女性の感性を、得意の詩的表現で描き切っています。その映像手法は、まさしく岩井ワールドともいうべきものです。岩井監督が得意とする理想的な優しさを描きつつ、一方で、徹底したリアリズムで、人間の残酷な一面を描写しようという試みの本作。
これらは、岩井俊二監督が映像作家としてデビューして以来追い続けてきた不変のテーマと表現方法であり、「リップヴァンウィンクルの花嫁」には、これまでのそうした試みが最も洗練された形で表れているとのこと。批評家の間でも、2016年度に公開された邦画の中で、最高傑作の部類に入るのではないかと話題になっています。
岩井俊二監督「リップヴァンウィンクルの花嫁」あらすじ!主人公が引き込まれる不思議な世界
岩井俊二監督「リップヴァンウィンクルの花嫁」のあらすじを紹介しましょう。主人公の皆川七海は、中学校で非常勤講師をしながら、コンビニエンスストアやネットでアルバイトをしている女性です。生徒からのいじめが原因で、学校を退職することになってしまいます。七海は、出会い系サイトで出会った男性と付き合っていましたが、仕事を辞めた流れで、一度はその彼氏と結婚。
しかし、夫の浮気が発覚すると同時に、今度は、何者かの企みで、いらぬ浮気の疑いをかけられて離婚することに。そのまま行く場所をなくした七海は、不思議な便利屋青年アムロと出会います。やがてアムロが手配した仕事で、これまた不思議な女性、マシロと出会う七海。マシロとの交流を深めていくうちに、七海の生活が次第に変化していき……というのが大まかなあらすじです。
アムロとマシロの関係や、その取り巻きを含め、非常に不思議な世界観で物語が語られていきます。「リップヴァンウィンクル」とは、もともと欧米の浦島太郎ともいうべきタイムスリップもののおとぎ話で、それを主題に、静謐な世界が紡がれていきます。
岩井俊二監督映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」ネタバレ&キャスト!
岩井俊二監督「リップヴァンウィンクルの花嫁」ネタバレ!七海を陥れたのは誰なのか?
岩井俊二監督「リップヴァンウィンクルの花嫁」のネタバレのいくつかをお話しします。まず、主人公の七海が浮気をしていたというのは、実は、仕組まれた話でした。結婚した夫の母親が、何でも屋のアムロに頼んでいたと思える描写があります。そして、離婚して宙ぶらりんになった主人公の七海を利用するのがアムロです。
アムロという役柄には、人の欲望と金とを映し出す人間社会そのものといった趣があります。もう1人のキーパーソンであるマシロは、実はポルノ女優であり、レズビアンの気がありました。一方で、マシロは、末期がんを患ってもいて、一緒に死んでくれる人間を探しています。
その相手に選ばれたのが、主人公の七海です。しかし、最終的には七海は生き残り、マシロは一人だけで死んでいきます。そして生き残った七海は、自分の世界へと戻りました。しかし、実は、その七海でさえ、東京で生きるということに捕らわれ、物事の真の姿を見ることができないでいる、というほのめかしが、最後のシーンで描かれます。
岩井俊二監督映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」りりィの遺作に!意外なキャスティングで盛り上げる
岩井俊二監督「リップヴァンウィンクルの花嫁」は、今売れっ子の俳優陣と、意外なキャスティングをふんだんに盛り込むことでも注目されました。まず、主人公の七海には、「重版出来!」で人気を得た、まさに今売り出し中の女優・黒木華が。マシロ役には、アーティストとして音楽活動を続けており、今回が女優デビューとなるCocco、アムロ役には、現在俳優として映画やドラマ、CMなどに引っ張りだこな綾野剛が配役されています。
そのほか、マシロの仕事関係者には元セクシー女優の夏目ナナが、マシロの母親役にはりりィがクレジットされました。出演している共演陣も豪華ながら、黒木華という女優が、映画で初めて主演を務めたことも大きな話題となった「リップヴァンウィンクルの花嫁」。また、りりィは、11月11日に他界してしまったため、この作品が実際の遺作となっています。「リップヴァンウィンクルの花嫁」で展開される岩井ワールドでは、りりィも物語を大きく盛り上げているので、それだけでも観る価値ありです。
岩井俊二監督のロケ地が聖地に!「打ち上げ花火、下から見るか、上から見るか?」から「リップヴァンウィンクルの花嫁」まで岩井ワールドを巡礼
岩井俊二監督の世界観は、常に独特です。その映像美や詩的な世界観から、さまざまなファンが虜になっています。そのため、撮影地を実際に訪れるファンも少なくないそうです。有名なテレビドラマで、後に映画化もされた、「打ち上げ花火、下から見るか、上から見るか?」のロケ地は、千葉県飯岡市で、今でも多数の人が見学に訪れます。「Loveletter」の舞台となった小樽も、映画撮影のロケ地として今なお有名です。
さらに、「スワロウテイル」という架空の都市円都を舞台にした作品では、神奈川県の新子安を背景にオープンセットを組んで撮影するという大技を繰り広げ、これまた訪れる人が後を絶ちません。「リリィ・シュシュのすべて」では、冒頭とスタッフロールで主人公の少年が佇む広大な緑色の草原を、特殊な撮影技術を使用し、視聴者の度肝を抜いています。
今回の「リップヴァンウィンクルの花嫁」では、世田谷、蒲田、川崎という東京圏の都市を背景に撮影。物語の後半に、マシロが住む屋敷は、鎌倉のレストランを貸し切って、「都会の中の豪邸」という設定を見事に映し切り、岩井俊二ワールドを完成させました。日本国内のありふれた背景を、独自の映像手法で、オリジナリティあふれる映像に変換する岩井俊二監督の岩井ワールドは、世界も認める美しさです。