梯久美子は編集者からノンフィクション作家へ!やなせたかしと師弟関係だった!

梯久美子は編集者から文筆業へ!おすすめ人気作品は?

梯久美子は編集者から文筆業へ!来歴やプロフィールを紹介!

梯久美子(かけはしくみこ)は、1961年生まれで熊本出身のノンフィクション作家です。陸軍少年飛行兵学校在学中に敗戦を迎え、戦後は自衛官となった父親のもと、5歳の時に熊本から札幌に転居した梯久美子は、北海道札幌藻岩高等学校、北海道大学文学部を卒業しました。卒業後は、編集者を経て、文筆業に転身。2001年より、フリーライターとして雑誌「AERA」などで活動した後、2006年「散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道」で、第37回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しています。

その縁あってか、2014年からは、大宅壮一ノンフィクション賞選考委員に。戦争を素材にした作品が多いことでも知られる梯久美子ですが、2017年には、着想から11年をかけた評伝「狂うひと―『死の棘』」の妻・島尾ミホ―」を上梓。第68回読売文学賞や、67回芸術選奨文部科学大臣賞、第39回講談社ノンフィクション賞を受賞しました。現在は、映画の脚本監修に関わるなど活躍の場を広げています。

梯久美子のおすすめ人気作品を紹介

梯久美子の代表作と言えば、彼女が多く手掛けてきた戦争ものを挙げる方が多いでしょう。過酷な戦場体験と戦後の軌跡をまとめた「昭和二十年夏、僕は兵士だった」や、人生で最も美しい時を戦時下で過ごした5人の女たちを描く「昭和二十年夏、女たちの戦争」。

最前線に慰問に行った子や、38度線を命からがら逃げのびた子など、子供の目を通して戦争を描いた「昭和二十年夏、子供たちが見た日本」などがあります。また、インタビューを得意とする梯久美子の実力が大いに発揮されている、戦争体験を持つ著名人の実話をまとめた「あの戦争の証言を聞く」シリーズ全3巻も読みごたえたっぷりです。

そうした中でも、特におすすめしたいのが「狂うひと―『死の棘』」の妻・島尾ミホ―」。特攻隊長だったという経歴を持つ作家の島尾敏雄が私小説「死の棘」で描いた、ヒロインにして実の妻でもある島尾ミホの実像に迫る評伝です。作家の妻であると同時に、自らも作家として活動していた島尾ミホに興味を持った梯久美子は、彼女の生前からインタビューを開始。

死後も、遺族から執筆許可を得て、自宅に残された夫妻の膨大な未発表資料を読み漁り、妻・島尾ミホの生涯を辿りました。島尾ミホが隠しておきたかった真実をもさらけ出した本作は、2017年公開映画「海辺の生と死」の参考文献にもなるなど、非常に興味深い内容となっています。

梯久美子の「散るぞ悲しき」あらすじネタバレ!やなせたかしと師弟関係だった!

梯久美子の「散るぞ悲しき」の魅力に迫る!あらすじネタバレ

梯久美子の名前を一躍有名にしたのは、「散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道」です。作家の丸山健二から勧められて、栗林忠道について調べ始めたところ、興味が掻き立てられていったという梯久美子。物語の舞台は、太平洋戦争中で最大の激戦といわれる硫黄島です。

玉砕戦を敢行し、アメリカ軍の本土侵略を遅らせるという命を受けていた栗林忠道中将ですが、島民を本土に避難させ、部下が死に急ぐことを禁じるなど、当時には珍しい合理主義を貫き、戦地に散っていきます。梯久美子は、彼が詠んだ「国の為重きつとめを果し得で矢弾尽き果て、散るぞ悲しき」の最後が、「散るぞ口惜し」と改変された理由を追うことで、死を悲しむことすらタブーだった戦時下の様子を浮かび上がらせました。

同時に、栗林忠道が戦地から家族にあてた41通の手紙をもとに、1人の家族思いの父親が命を落とさなければならなかった現実を、冷静な筆致で描き出すことに成功。「考える人」「婦人公論」などの編集長を務めてきた河野通和が紹介した「19歳の人たちに読んで欲しい30冊」にも選ばれるなど、今なお多方面から高く評価されています。

梯久美子はやなせたかしと師弟関係だった!

戦争もので知られる梯久美子の著書の中には、「勇気の花がひらくとき―やなせたかしとアンパンマンの物語」という、少し作風の異なる伝記作品があります。実は、やなせたかしのもとで働いていた経験を持つ梯久美子。高校生だった梯久美子は、やなせたかしが編集長を務めていた「詩とメルヘン」に詩を応募して、何度か掲載されていました。そして、やなせたかしのもとで働きたいと上京し、同誌を出版していた会社に就職。

以後、やなせたかしの下で、編集者として活動していました。「昔の自分(やなせたかし)のように、お金がなくて無名でも、夢をもっている人たちの力になろうとしたのです」とのコメントからは、梯久美子がやなせたかしを尊敬していることが伝わってきます。

2005年に、梯久美子が、「散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道」で作家デビューした時には、やなせたかしが喜んで、雑誌の対談に招いてくれたそうです。その時に初めて、やなせたかしの戦争体験を知った梯久美子は、「やなせ先生は、戦争体験を晩年まで話しませんでした。思い出したくなかったのでしょう」とその胸中をおもんばかりました。そんな2人の関係を一言で表すならば、師弟関係ということになるでしょう。

梯久美子が第29回講談社ノンフィクション賞受賞!満島ひかり熱演映画「海辺の生と死」では脚本監修も!!

2017年7月20日に、第39回講談社ノンフィクション賞に、梯久美子の「狂うひと―『死の棘』」の妻・島尾ミホ―」と、中村計の「勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇」が選ばれたことが発表されました。講談社3賞の残り2賞は、講談社エッセイ賞に、歌手で女優の小泉今日子「黄色いマンション 黒い猫」と、穂村弘の「鳥肌が」。

講談社科学出版賞は、立命館大学古気候学研究センター長である中川毅の「人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか」にそれぞれ決まっています。今、「狂うひと―『死の棘』」の妻・島尾ミホ―」は、同時期に公開された、島尾ミホをモデルとし、満島ひかりと永山絢斗のW主演でも注目の映画「海辺の生と死」の参考文献になっていることでも注目を集めています。

戦時下の奄美大島を舞台に、満島ひかり演じる情熱的な大平トエと、特攻隊を率いて明日をも知れない命である朔中尉(永山絢斗)の究極の恋を描いた本作。梯久美子が脚本監修者として名を連ねていることから、単なる恋愛映画にはとどまらない、奥深い内容となっていることが期待されます。

戦争ものを得意とするノンフィクション作家から、「狂うひと―『死の棘』」の妻・島尾ミホ―」を経て、新たな境地を切り拓いたように見える梯久美子。女性ならではの目線で、ノンフィクションの世界を突き進む彼女が、次にどのようなテーマを取り上げるのかにも期待が高まります。

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