諸星大二郎の初期短編集「不安の立像」が傑作すぎる!映画化された作品とは?

諸星大二郎の初期短編集「不安の立像」が傑作すぎる!映画化された作品とは?

諸星大二郎の初期短編集「不安の立像」と「千と千尋の神隠し」の関係は?

諸星大二郎の初期短編集として、今なお評価の高い作品に「不安の立像」があります。この短編集は、タイトル名になっている「不安の立像」の他に、「子供の遊び」「復讐クラブ」「海の中」「ユニコーン狩り」「真夜中のプシケー」「袋の中」「会社の幽霊」「子供の王国」を収録。中でも「不安の立像」は、今から30年以上前の1973年の作品でありながら、現代にも巣食う「心の闇」を描いた逸品として、熱狂的な人気を誇っています。

主人公は、真夏にもかかわらず、今のような冷房設備はない、扇風機が回っているだけの過酷な満員電車で日々通勤している平凡なサラリーマン。そんなある日、電車の窓越しに、駅に佇む黒い影法師を見つけます。不思議に思った彼は、同僚や駅員に影法師のことを尋ねますが、存在を知っていながらも、周囲の人々は全く無関心のまま。この何とも不気味な影法師。実は、宮崎駿の代表作「千と千尋の神隠し」に出てくる「カオナシ」によく似ており、「諸星大二郎へのオマージュでは」と評判です。

諸星大二郎の映画化された過去の傑作作品にあの超有名人気俳優が出演!

諸星大二郎の作品には、映画化やドラマ化されたものが数多くあり、中でも2007年に公開された「壁男」には、今を時めく超有名人気俳優が出演しています。その俳優とは、ドラマ「半沢直樹」や、NHK大河ドラマ「真田丸」でお馴染みの実力派俳優・堺雅人。

「壁男」は、1995~1996年にかけて、「COMICアレ」に掲載され、コアなファンの間で隠れた傑作として評判になりました。「壁の中に壁男がいる」との都市伝説をテーマに、壁男の虜になり、徐々に精神を病んでいく主人公の狂気を、個性派俳優の第一人者である堺雅人が熱演。

初めてホラー作品に出演した堺雅人ですが、本人はホラーとは全く思っておらず、出演を決めた理由として、「ホラーに類するものではなく、壁の中に別の世界があるのではないだろうとか、パラレルワールドだとか、誰しもが持っているここではない世界への憧れというか、そういった不条理な普通の話だと考えていました」と語っています。

諸星大二郎「暗黒神話」は必読!初心者おすすめの漫画とは?

諸星大二郎ファンなら必読の「暗黒神話」とは?

諸星大二郎の描く世界観には、日常に潜む闇や、ホラーや、カルトといった類のものが多いのですが、1976年に発表された代表作「暗黒神話」は、意外にも、少年向けの「週刊少年ジャンプ」に掲載されていました。父親の死の謎を追っている過程で、自分がヤマトタケルの転生だと知った主人公の武(タケル)は、宇宙を司る神から、地球の運命を握る人間「アートマン」だと知らされます。

古事記と日本書紀をモチーフにした「暗黒神話」は、武の前に現れる老人が実は古代人の生き残りであったり、卑弥呼を巡る邪馬台国の謎に迫ったり、果ては弥勒が登場したりと、民俗学だけでなく、宗教学にも造詣が深い諸星大二郎ならではの壮大なテーマでした。

しかし、ジャンプ読者の心はつかめず、残念ながら6回の掲載で終了。諸星大二郎は、この件に関して、「1年半かけて構想を練ったのに、6週で終わってしまって拍子抜けした」と語っています。しかし、それでもコアなファンの間では、「諸星ワールドを語るのに『暗黒神話』は外せない必読書」としてバイブル的な扱いをされています。

諸星大二郎がコメディーに挑戦した「栞と紙魚子」は初心者におすすめの漫画!

諸星大二郎曰く、「自分がホラーを描いても怖くないから、コメディーにしてみた」との試みで、少女向けホラー雑誌「ネムキ」に掲載したのが、「栞と紙魚子」です。主人公は、東京都三鷹市の井の頭(いのかしら)をもじった「胃の頭町」(いのあたまちょう)に住む好奇心旺盛の女子高生、栞と紙魚子の2人。町内に起きる怪奇現象に首を突っ込み、栞の飼い猫である化け猫のポリスや、異界の住人を妻に持つホラー作家たちと、さまざまな事件に遭遇する奇妙でユーモアに溢れた物語です。

「不安の立像」のような「闇に落ちていく感」は全くないので、「諸星ワールドはちょっとヘビー」と感じている人にもおススメですね。また、「栞と紙魚子」は、2008年第12回文化庁メディア芸術祭において、マンガ部門の最優秀賞を受賞。同年に、日本テレビ系にて、「栞と紙魚子の怪奇事件簿」とのタイトルでドラマ化され、栞役に南沢奈央、紙魚子役を前田敦子が演じました。

諸星大二郎を世に知らしめた「妖怪ハンターシリーズ」不朽の名作「生命の木」とは?

諸星大二郎を語るのに絶対に外してはならない作品の1つに「妖怪ハンターシリーズ」があります。これは、異端の民俗学者である稗田礼二郎が日本各地を回って、その土地に伝わる風習や伝承、果ては超現象の謎を解き明かす物語です。各シリーズが1話完結の短編集ですが、中でも、「海竜祭の夜」に収録されている東北のかくれキリシタン村を題材にした「生命の木」は、妖怪ハンター史上最高傑作、不朽の名作として高い評価を受けています。

諸星大二郎の名を世に知らしめたのは、この作品と言っても過言ではありません。「神が作った人間アダムは知恵の木の実を食べて楽園を追われたが、もう1人は生命の木の実を食べて不老不死となり、地上に人間が溢れることを怖れた神はその子孫たちに呪いをかけた」(かくれキリシタンの聖典より)……聖書とは異なる創世記の謎を追う稗田礼二郎の前に現れたのは?「みんな、ぱらいそさいくだ!おらといっしょにぱらいそさ、いくだ!」。

「生命の木」を読んだ後には、必ずや、この言葉が、呪文の如く、頭の中で繰り返し繰り返し鳴り響くことでしょう。ちなみに稗田礼二郎の「稗田」は、「古事記」の暗誦者である「稗田阿礼(ひえだのあれい)」から名付けたそうです。それゆえ、作中での稗田礼二郎の役目はあくまで「語り部」。あまり活躍させないように配慮していると諸星大二郎は述べています。公の前に姿を現すことのない、謎多き漫画家・諸星大二郎。67歳となる御大の新作が待たれます。

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