白石加代子は狂気の個性派女優!「百物語」シリーズは鳥肌もの!
白石加代子は演劇界を驚愕させた狂気の女優だった!
あなたはきっと、何度も彼女を見たことがありますね。そして、その恐ろしい姿にどれだけ恐怖したことか。
たとえば、演劇ならば、「身毒丸」を狂愛する継母。映画ならば、「八墓村」(1997年版)で「祟りじゃ!」と絶叫する濃茶の尼。テレビでは、数々の怖いドラマに登場した妖婆や巫女、狂女などなど。小さい頃に彼女を見たならきっとトラウマになってしまうような、圧倒的存在感を放つ異端の女優……そう、白石加代子です。
素顔は、古風な顔立ちの明るい女性ですが、芝居に入ると、たちまち悪霊が憑依したかのようなおぞましい演技を見せ、狂気女優と称される彼女。そんな白石加代子は、故・蜷川幸雄が取り組んだギリシャ悲劇の常連であった日本屈指の舞台女優です。「メアリースチュアート」の宮本亜門を始め、「ゴドーを待ちながら」鴻上尚史、「虎‐国姓爺合戦」野田秀樹、「ビューテイー・クイーン・オブリナーン」「あかいくらやみ」長塚圭史など、現代を代表する演出家が、絶大な信頼を寄せていることでも知られています。
白石加代子の「百物語」は一人語りで究極の怖い話
白石加代子が狂気女優と称される所以は、元TBSの演出家である鴨下信一と組んだ一人語り「百物語」にあります。「百物語」は、新旧あらゆるジャンルの怖い話の朗読劇です。彼女の圧倒的な語りと、鬼気迫る身体的表現が、観る者を震え上がらせました。この「百物語」は、1992年よりスタートし、22年を経て、2014年の第99話/泉鏡花作「天守物語」をもって終了。白石加代子のライフワークとして、今なお高く評価されています。
白石加代子が結婚した夫や子供!プロフィールや生い立ちは?
白石加代子は市役所勤めを辞めて25歳で早稲田小劇場に入団
白石加代子は、1941年生まれで現在75歳。逓信省の高級技官だった父が、戦後すぐに他界したため、母子家庭の一家は貧困を極めます。白石加代子は、まだ幼い妹と弟がいたため進学を諦めて、高校卒業後は、麻布区役所の課税係として働いていました。そんな彼女の唯一の希望は、小さい頃からの夢だった役者になることでした。
そして弟の就職が決まった1967年、25歳で役所を辞めた白石加代子は、早稲田小劇場(現・SCOT)に入団します。世は、70年安保や学園紛争で騒然していた時代。演劇界にも、反体制的な空気がみなぎっていました。中でも、先鋭的な劇団とみなされていたのが早稲田小劇場です。
そんな劇団に、全くの素人で入った白石加代子は、ひどく場違いな存在でした。しかし、演出家・鈴木忠志のもと、めきめきと頭角を現し、「劇的なるものをめぐってII」での悪魔が憑依したかのようなおぞましい演技で注目されるようになります。
白石加代子はずっと見守り続けた深尾誼と50歳を前に結婚
狂気女優・白石加代子を、常に間近に見ていたのは、20年近くの付き合いを経て夫となる、演出助手の深尾誼(ふかおよしみ)でした。白石加代子という逸材を得た鈴木忠志は、「トロイアの女」など傑作を生み出し、その後23年間、公私に渡り濃密な関係を続けます。
しかし、劇団の在り方や舞台人としての生き方を巡って、2人はやがて対立。白石加代子は、1989年に劇団を去ってフリーとなり、50歳を前に深尾誼と正式に結婚します。フリーとなった白石加代子は、一躍女優としてその存在を世に知らしめるともに、ライフワークの「百物語」の他、蜷川幸雄を始め数多くの演出家の元で舞台を重ね、今世紀最高の舞台女優と賞されるようになりました。
白石加代子と高畑充希がギリシャ悲劇「エレクトラ」で母と娘の壮絶バトル。
2017年4月、白石加代子は、ギリシャ悲劇「エレクトラ」で、4度目のクリュタイメストラ役を演じました。今回、娘役エレクトラに挑んだのは、若手実力派女優の高畑充希です。心理学では、エレクトラという名前にちなんで、女児が父親に対して強く独占欲的な愛情を抱き、母親に対して強い対抗意識を燃やす状態を、エレクトラコンプレックスと呼んでいます。
さて、母と娘との壮絶な戦いはどうだったのでしょうか?これは、別な見方をすれば、日本におけるギリシャ悲劇の頂点に立つ舞台女優に挑んだ、今、テレビや映画で大ブレイクしている若手女優の舞台の出来はいかに?と観ることもできます。劇評としては、高畑充希の真摯な芝居を、白石加代子が、実の娘のようにしっかりと受けとめ、舞台として立派に成り立たせたというところでしょう。
実は、小さい頃から演劇おたくだった高畑充希。2008年に上演された「身毒丸」を観た後、白石加代子の楽屋を訪ね、感激のあまり、「いつか白石さんと共演できる女優になりたいです!」と宣言していたとか。半世紀という時を経て、輝くパワーと禍々しさを兼ね備えた、女優という魔力が、白石加代子から高畑充希に引き継がれたとしたならば、今後の高畑充希の変容は、まさに、恐怖の百物語となるかもしれません。