矢口高雄の「釣りキチ三平」はライフワーク作品!「マタギ」が復刻として異例の重版のワケ

矢口高雄の「釣りキチ三平」はライフワーク作品!郷里秋田に「まんが美術館」あり!

矢口高雄の「釣りキチ三平」はライフワーク作品!「ふるさと」はあの名作ドラマ「北の国から」と設定が重なっていた?

漫画家の矢口高雄は、代表作品として「釣りキチ三平」が知られています。1973年から10年間連載され、外国語にも翻訳され出版されているという人気作品です。2001年には「釣りキチ三平 平成版」も執筆されており、彼のライフワーク的な作品と言えます。

そんな矢口高雄にはもう一つ「ふるさと」という代表作品があることをご存じでしょうか。「ふるさと」の舞台は、彼の郷里である秋田県横手市増田町(当時は西成瀬村)。妻と別れて東京を離れた主人公が、子供2人を連れて故郷に戻ってくるところからストーリーが始まります。

全体を通して、子供たちの成長や自身の葛藤、自然と共に生きる暮らしが詳細に描かれている矢口高雄の「ふるさと」。当時大ヒットしていた名作ドラマ「北の国から」と設定が重なる部分はあるものの、自然の厳しさや郷愁を独自の視点でしっかりと描いた点は、名作としてもっと評価されていい作品です。

矢口高雄は、1939年10月28日生まれで、本名は髙橋髙雄(たかはしたかお)。幼少の頃から漫画に親しみ、大の漫画好きとして過ごしました。高校卒業後は地元の銀行に就職したものの、同僚が読んでいた漫画雑誌に触発されて漫画熱がよみがえることに。漫画誌編集部への投稿を繰り返し、その縁で水木しげるの知遇を得るなどの経験を積んでいきます。

1969年に、アマチュアながら本名の髙橋髙雄名義で漫画家デビューすると、翌年には銀行を退職し、妻と娘2人を郷里に残して単身上京してメジャー誌デビューを飾りました。この時期に、梶原一騎原作の「おとこ道」を手掛けたことで「矢口高雄」のペンネームで活動を開始。自身の趣味である釣り経験を取り入れた「釣りキチ三平」で一躍人気作家の仲間入りを果たしました。

矢口高雄の郷里秋田に「まんが美術館」あり!2019年4月リニューアルオープン予定!

矢口高雄は、郷里の秋田にある「まんが美術館」の名誉館長としても活動しています。1995年10月にオープンした同美術館の正式な名称は「横手市増田まんが美術館」(当時は「増田まんが美術館」)。秋田県が誇る矢口高雄の漫画家としての功績を讃える目的のもと、全国初の「まんが」をテーマとした本格的美術館としてオープンしました。公民館や図書館、郷土資料館を併設する複合施設「まんが美術館」は、彼の足跡を紹介するとともに、漫画単行本や週刊漫画誌を読むことも可能です。

また、著名な漫画家の原画が展示される特別企画展や、矢口高雄をはじめとする漫画家のトークショーやサイン会が行われるなど、漫画ファンにはたまらない施設となっています。ただし、2019年4月のリニューアルオープンに向けて改築作業が行われているため、現在は入館することができません。リニューアル後の名誉館長ももちろん矢口高雄です。

矢口高雄の娘が明かした好物とは?現在もサイン会で会える!

矢口高雄の娘が明かした好物は焼肉とキムチだった!手塚治虫とのとっておきのエピソードとは

矢口高雄の趣味はもちろん釣り。当然、好物は魚だろうと思われる向きも多いことでしょう。しかし、娘が明かしたところによると、矢口高雄の好物は、意外なことに「焼肉」とか。加えて、行きつけの焼肉店でお気に入りなのは、前菜の「茎だけキムチ」。ただの白菜キムチではなく、白菜の肉厚部分だけを集めているため、白菜本来の甘味と歯ごたえが味わえるという一品です。キムチの歯ごたえにこだわるという点のみ聞いても、矢口高雄がかなりのグルメであることがうかがわれます。

娘は、好物について以外にも、映画「スターウォーズ」の試写会で手塚治虫の隣に座ってストーリーを聞かされた話など、矢口高雄のとっておきのエピソードの数々を披露。漫画家になるまでのいきさつも明かしていますが、お堅い銀行員という職をなげうって漫画家を目指すことに家族全員が理解を示していた様子もとても印象的です。矢口高雄にとって、夢への道を後押ししてくれた家族はさぞ心強い存在だったことでしょう。

矢口高雄に全国各地のサイン会で会える!「釣りキチ三平」を読んで釣りを始めたというファンも

間もなく80歳に手が届く矢口高雄は、全国各地で行われるサイン会も精力的にこなしています。もちろん矢口高雄人気は今も健在で、サイン会の会場では、会場の外まで並ぶ熱心なファンの姿が。やはり男性が多いようですが、意外にも、家族連れから、小学生~高校生、おじいちゃん世代に至るまでと年齢層はかなり幅広い様子。

中には、「釣りキチ三平」を読んで釣りを始めたというファンもおり、矢口高雄と談笑して楽しい時間を過ごすとか。サインだけでなく、記念写真を求められれば応じるなど、とても気さくな矢口高雄。熱心なファンにとって貴重なふれあいの機会となっていることは間違いありません。

矢口高雄の漫画「マタギ」が復刻として異例の重版!背景にジビエ人気や獣害への関心や猟の担い手不足があった!

矢口高雄が40年以上前に発表した漫画「マタギ」が復刻され、異例の重版を続けています。1975年から1年に渡って週刊誌で連載され、東北地方の伝統的な狩猟集団であるマタギと、熊をはじめとした獣たちとの駆け引きが描き出されている漫画「マタギ」。1976年に日本漫画家協会大賞を受賞した力作ですが、1991年に愛蔵版が出版されて以来、長く絶版となっていた「幻の名作」でした。

しかし2017年10月に、文庫サイズでの復刻が決定され、12月半ばには早くも1万7000部を発行するという異例の人気となっています。漫画「マタギ」人気再燃の背景にあると見られるのは、狩猟で得た野生鳥獣の肉を食材とする昨今のジビエ人気や、各地で相次ぐ野生の鳥獣被害への関心が高まっていること。加えて、東北地方の野山や里の風景を懐かしみ、マタギの風習や伝統について関心を寄せる傾向も強まっていると見られ、今後もますます出版が加速しそうな勢いです。

秋田県出身で、子供のころからマタギと接する機会に恵まれてきた矢口高雄によると、「自然と人との関わりを描くことが僕の作品のテーマ。『マタギ』はそのテーマを最も色濃く表現できるドラマだった」とのこと。作品が復刻されたことについては、「時代の流れと思ってあきらめていたが、復刻されたのはうれしいこと」と感慨深そうに語っています。

高齢となった矢口高雄は、健康上の問題もあって気力を失ってしまい、新作の執筆はしていなそうです。しかし、ファンとの交流を続けるほか、全4万5000枚にもおよぶ漫画の原画を、自身が名誉館長を務める「まんが美術館」に寄贈するなど、日本の漫画文化の継承者としての活動を続けています。

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