「弟の夫」は田亀源五郎が描いた同性婚漫画!実写ドラマは意外なキャスト

「弟の夫」は同性婚漫画!」父子家庭に弟の夫が

「弟の夫」は同性婚漫画!

「弟の夫」は、双葉社「月刊アクション」2014年11月号より連載されていた作品です。作者の田亀源五郎は、男性同士の恋愛を描いた作品等を数多く手掛けてきました。

タイトルからも察せられる通り、「弟の夫」も同性婚を扱った作品です。主人公の折口弥一は2年前に妻と離婚し、現在は1人娘の夏菜との2人暮らし。事故で亡くなった両親が遺したアパートの大家をしながら、シングルファーザーとして忙しい日々を送っていました。

そこへ、1人の巨漢の男が訪ねてきます。カナダ人のマイク・フラナガンは、10年前に家を出た弥一の双子の弟・涼二の夫だと名乗りました。マイクが告げたのは、男性同性愛者だった涼二はマイクと結婚し、先月亡くなったという驚きの事実。突然現れた伯父の存在を受け入れる夏菜とは対照的に、複雑な心境を抱えたままの弥一は、弟の夫との短い同居生活を開始します。

「弟の夫」父子家庭に弟の夫が!奇妙な同居生活の行方

「弟の夫」は、同性婚後に亡くなった弟の夫と、父子家庭の親子が一緒に生活する日常を描いた物語です。マイクの夫・涼二が亡くなったのはひと月前ということもあり、双子の兄である弥一に涼二の面影を見たマイクは、出会い頭に抱きついてしまいます。

その時に弥一が脳裏で叫んだ言葉は差別的なもの。ここからも、弥一が同性愛に対してどういう印象を抱いているのかを知ることができます。しかし、娘の夏菜は、「国によって同性婚ができる、できない」という現実を不思議に感じても、マイクが同性と結婚したことに対する違和感や偏見はありません。

一方の弥一も、実際にマイクと話をして、日常生活を送る中で、考えに少しずつ変化が見え始めます。マイクが日本に滞在する期間は3週間ほどですが、その間に訪ねてくるのは、実は同性愛者だった涼二の友人・加藤や、自身のセクシャリティについて悩む夏菜の友人の兄・一哉など。さまざまな人の考えやマイクの人柄に触れることで、性の多様性を受け入れるようになった弥一は、帰国するマイクとハグをして別れます。

「弟の夫」実写ドラマは意外なキャスト!国内外での反応や感想は?

「弟の夫」実写ドラマは意外なキャスト!弟の夫役はあの有名元力士

「弟の夫」は、2018年3月より、NHKBSの「プレミアムドラマ」枠で実写ドラマ化されました。コミックスの1巻が発売された時点でドラマ化のオファーは数社からあったそうですが、一番早かったという理由でNHKに決定。原作者側からは、露骨に差別する人間を出さないなど、作品のテーマを語る上で重要な要素は変えないでほしいという要望が出されましたが、大きな変更もなく、原作の雰囲気そのままに映像化されています。

キャスト選びはかなり難航したそうですが、特に大変だったのはマイクです。熊のような巨体と髭のある外国人男性というビジュアルに、なかなか理想のキャストを見つけられずにいました。しかし、ちょうど舞台に出演していた元大関の把瑠都に決定し、作者の田亀源五郎も唸るキャスティングとなりました。主人公の弥一は、シリアスになりすぎない空気を作るため、普段コミカルな役を演じることの多い佐藤隆太が抜擢され、双子の弟・涼二役も担当しています。

「弟の夫」の国内外での反応や感想は?世界でも大注目!

「弟の夫」は、女性向けの雑誌ではなく、男性向けの漫画誌に連載された、男性が描くゲイ漫画として注目を集めました。日本では、男性同士の恋愛を描いたBL(ボーイズラブ)漫画や小説などが、女性たちから支持されてはいますが、世間一般的には、同性愛に対しては否定的な風潮が強いと言えるでしょう。

もともと性的な問題を大々的に語り合うことの少ない日本において、「弟の夫」が一般誌に連載され、支持されるという状況自体が大きな一歩だと捉える日本人も少なくありません。異色作「弟の夫」は、海外でも出版され話題となり、英紙「ガーディアン」にはレビューも掲載されました。

その中には、マイクや弥一の複雑な心理描写に共感し、心を痛めたという感想も多く、日常の中で描かれる物語だからこそ心に強く響いたと言えそうです。海外でも国内でも、おおむね好意的に受け止められた「弟の夫」は、性的多様性について考えるきっかけにもなっています。

「弟の夫」の作者はゲイ・エロティック・アーティスト田亀源五郎!

「弟の夫」は、同性婚をした弟の夫と日常生活を共にする中で、さまざまな考えや人に触れながら、主人公が成長していく物語です。第1巻発売当初から話題となった本作は、第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門で優秀賞を受賞。漫画好きには知られた作品となりましたが、漫画を読まない一般層にまで広く認知されるきっかけとなったのは、NHKで放映された実写ドラマでしょう。

爽やかなホームドラマとして描かれてはいますが、無意識的な差別や偏見も包み隠さず描写されており、気付かされる場面も多かったのではないでしょうか。作者の田亀源五郎は、1964年生まれ。多摩美術大学を卒業後、アートディレクターやグラフィックデザイナーを経て漫画家になります。1986年より、ゲイ雑誌「さぶ」にて漫画や小説の連載を始め、以後も、ゲイ雑誌を中心に作品を掲載してきました。

現在は自らをゲイ・エロティック・アーティストと名乗っている田亀源五郎は、「弟の夫」が描かれたのには、3つのきっかけがあったと明かしています。1つは、青年誌の編集者から自伝を書いてみないかと誘われたこと。2つ目は、同性婚の話題が世間で多く取り上げられたこと。そして3つ目は、双葉社から連載の依頼があったことです。

その3つが揃い、異性愛者向けのゲイ漫画を描くことを検討した結果、「弟の夫」が誕生しました。「弟の夫」は初めての青年誌連載だったため、連載当初は不安のほうが大きかったという田亀源五郎。直接的な言葉ではなく、無自覚&無意識な差別こそが日本的な差別だと語っており、本作も、そういった無自覚に対する気付きが目的とされています。

自分の価値観だけでなく、他者の価値観を受け入れる……弥一の目を通し、読者は、多様性を許容する考え方がもっと広がる必要があることに気付くでしょう。日常を描いた作品なので、食事シーンなども多く、作品に読者がすんなりと入り込むことができる点も大きな特徴と言える「弟の夫」。日常に潜む差別意識について考えるきっかけになる意欲作です。

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