今森光彦(写真家)が撮り続ける琵琶湖!自然に囲まれたアトリエとは?
今森光彦(写真家)が撮り続ける琵琶湖!ルーツとなった場所の魅力とは?
今森光彦(写真家)は、滋賀県で生まれ育ち、琵琶湖を中心に、周辺の自然と人との繋がりを撮り続けています。琵琶湖は、言わずと知れた日本一の大きく美しい湖ですが、ただ大きいだけではありません。歴史においても日本最古の湖といわれ、その歴史は40万年前にまで遡ります。
その周辺には、約1000種類の動物や植物が育ち、琵琶湖に生息しない特有の生き物も。琵琶湖のほとりでは、9千年以上前から、縄文人が生活を営み始めたともいわれています。現在でも、大昔から人々の生活を見守り続けた琵琶湖は、近畿の人々の生活を支え、長きにわたって生命を育み続けてきました。湖畔に広がる棚田は、雑木林や小川に繋がり、実り豊かな里山となっています。
その豊かな風土に囲まれながら育ち、自然や生き物が、人の暮らしや文化と切っても切り離せないものだということを体得したという今森光彦。生まれ育った琵琶湖や、周辺の自然、人々のつながりを、その土地に慣れ親しんだ者ならではの感性と、写真家としての技術を持って、瞬間的に切り取り、人の心の琴線に触れる作品を世に出し続けています。
今森光彦(写真家)の自然に囲まれたアトリエとは?観察に適した場所「エコトーン」について
今森光彦(写真家)の拠点となっているアトリエは、滋賀県の仰木町、比叡山のすそ野に広がる高い丘陵にあります。琵琶湖をのぞむ田園風景の中に佇むアトリエは、築27年になりました。学者たちは、性質の異なる環境がつながって接している、環境の端境(はざかい)ともいう場所を”エコトーン”とよび、そこは、生き物の観察に優れた場所だといいます。
今森光彦は、そのエコトーンをお手本にして、アトリエ周辺を整備してきました。長年の年月をかけ、立派な雑木林となった場所には、今では、小さな生き物たちが命を育むようになったそうです。ため池にはアカガエルが産卵にやって来て、アトリエ前のエノキには、自然環境を測定する目安となるオオムラサキもやって来ます。
今やすっかり自然に囲まれている今森光彦のアトリエは、生き物を観察しながら撮影するには絶好といえるでしょう。
今森光彦(写真家)「昆虫教室」は大人も楽しめる!プロフィールは?
今森光彦(写真家)「昆虫教室」は大人も楽しめる!「昆虫教室」を始めた理由は?
今森光彦(写真家)が行う昆虫教室は、毎年夏に2泊3日で開催されています。募集年齢は、幼稚園から高校生は保護者同伴で、大人だけの参加も歓迎とのこと。場所は、滋賀県高島市のマキノ高原にある今森光彦が所有している雑木林「萌え木の国」。“やまおやじ”と呼ばれるクヌギの古木が多く見られる雑木林です。
「萌え木の国」で、参加者は、自然に触れ合いつつ、今森光彦と語らいながら自然の魅力を学ぶことができ、さらには採った虫の飼育方法や、標本作りのアドバイスも受けることができます。今森光彦が昆虫教室を始めた理由には、現代の子供たちは、生き物に詳しくても生き物が暮らす環境をイメージできず、その結果、生き物たちの繋がりを理解することができないという問題意識にありました。
そこで、実際に繋がりを体感できる昆虫教室を開くことにしたと語っています。何でもネットで調べて分かった気になってしまうこの時代に、自然の中で実際に触れ合いながら正しく学べることは、子供たちにとっても大人にとっても、絶好のチャンスかも知れません。
今森光彦(写真家)のプロフィールは?現在は切り絵作家としても活躍!
今森光彦(写真家)は、滋賀県大津市出身の写真家で、1954年8月6日生まれの62歳。近畿大学理工学部土木工学科を卒業後、コマーシャルフォトスタジオに勤務しながら、独学で写真技術を学び、1980年には、フリーランスのプロ写真家としてデビュー。琵琶湖を中心に、自然と人との関わりをテーマに撮影する日々を送るようになります。
1988年には、写真集「昆虫記」を発表し、アニマ賞を受賞するなど、その実力を高く評価された今森光彦。1991年には、写真集「スカラベ」を発表し、1994年には東川賞 新人作家賞、滋賀県文化奨励賞を受賞するなど、さまざまな賞に輝きました。また、昆虫教室を開き、植林活動にも参加をしています。
さらに最近では、切り絵作家としての活動も始めましたが、実は、写真よりも早く、小学生の頃から、裁ちばさみで切り絵を始めていたという今森光彦。デフォルメせず、生き物そのものの形や色を表現することを目指している切り絵作品が、結果的に、自然界はアートに匹敵するほど美しさで満ちていることを世に示すこととなりました。
今森光彦(写真家)に聞く”里山のチカラ”!里山とは「人と生き物が共に暮らすところ」
今森光彦(写真家)は、以前NHKで放送された「映像詩 里山」シリーズという、琵琶湖周辺の里山を特集した番組に全面協力しています。里山とは、「人と生き物が共に暮らすところ」であり、「人と生き物が共存するすべての空間のことを里山と呼ぶ」と、インタビューで答えている今森光彦。昆虫については、一番身近でスキンシップがとれる生き物だと考えており、駆け出し時代に、昆虫をテーマに作品を撮っていたのは、子供たちにメッセージを伝えるのに昆虫が一番優れていると考えたからでした。
今の世の中では、「自然」というと、自然には手を付けない方が良いとか、距離を置いたほうが良いという傾向になっていますが、自分が自然の一員だと思うことが大切だと語る今森光彦。それは、里山に行くのではなく、自分も里山づくりに参加する意識を持つことだと力説しています。今森光彦に言わせると、もし、ベランダに植えた鉢植えのミカンの木にアゲハチョウが卵を産めば、そこは立派な里山空間とのことです。
今森光彦は、琵琶湖周辺の環境が変わり、雑木林や田んぼがなくなっていくのがショックで、生まれ育った琵琶湖の風景を撮り始めたといいます。しかし、ここ数年は、今まで縦に掘り下げてきたものを横に広げるために、全国の里山にも目を向けるようになり、4年かけて全国200カ所の里山を巡りました。
それらを1つの作品にすることを構想している今森光彦。その作品は、日本各地の里山の美しさと共に、存在意義をも読者に訴えかけてくれることでしょう。次世代にも里山の原風景を残すためには、1人1人が身近な自然との繋がりや里山について考え、関心を持ち続けることが大事なのではないでしょうか。