片渕須直監督アニメ「この世界の片隅に」に高評価!あらすじネタバレキャスト!
片渕須直監督アニメ「この世界の片隅に」の感動が全国拡大中!興行収入、上映映画館もうなぎ上り!
片渕須直監督のアニメ映画「この世界の片隅に」が、2016年11月12日の公開から、猛烈な勢いで支持層を拡大しています。「この世界の片隅に」の原作は、太平洋戦争末期を舞台にした、こうの史代原作の漫画です。過去には、北川景子主演でドラマ化されたこともありました。しかし、アニメ版の「この世界の片隅に」は、キャラクタービジュアルから、地味で暗いイメージを受けた人も多く、片渕須直も監督としては無名だったことから、商業性の薄さは否めませんでした。
邦画歴代3位の興行収入を記録した「君の名は。」が、全国296の映画館で封切りされたのに対し、「この世界の片隅に」は63館と、控えめのスタートとなったのも、そのためです。ところが、蓋を開けてみれば、週を追うごとに映画興行収入ランキングが10位、6位、4位とジャンプアップ。「この映画には感動した!」「家族で観るべき!」という口コミが全国に広がり、公開4週目にして87館、年末年始には約180館での上映が決定しているといいます。
片渕須直監督アニメ「この世界の片隅に」戦時中の何気ない日常が温かい!声優キャストにも注目を
片渕須直監督アニメ「この世界の片隅に」の舞台は、太平洋戦争末期の”日本一の軍港の町”といわれた広島県呉市。主人公・北條すずは、絵を描くのが好きで、おっちょこちょいな性格の、どこにでもいる18歳の女性です。そんなすずが、20km離れた町から、日本海軍の本拠地だった呉市に嫁いできたのは、昭和19年のことでした。
あらゆる物資不足に困窮する中で、野草などの身近なものを工夫して食卓を賄う日々は、戦況の悪化で激化する呉市への空襲により、次第に形を変えていきます。それでもなお、笑い、夫に恋をし、時には悩んだり、怒ったりと、表情豊かなすず。どこか特殊な精神性を想像しがちな戦時中の人々が、人間らしく生きる日常が淡々と描かれているからこそ、心に刺さるのでしょう。
そんな「この世界の片隅に」は、実は声優キャストが豪華です。すず役には、本作で声優デビューとなった女優・のん(能年玲奈)、夫・北條周作には、話題作に引っ張りだこのイケボ声優・細谷佳正。小野大輔や潘めぐみら超売れっ子声優の他、「新生松竹新喜劇」の代表を務める喜劇俳優・澁谷天外が特別出演しています。
片渕須直監督の経歴!「魔女の宅急便」の監督は宮崎駿じゃなかった!?
片渕須直監督は宮崎駿の弟子だった!作品受賞歴は華々しいがメジャーになりきれず
片渕須直監督は、1960年8月10日生まれの、大阪府枚方市出身。母方の祖父が映画館を営んでいたため、幼い頃からアニメ映画は身近な存在でした。やがて、千葉県立船橋高校を卒業した片渕須直監督は、日本大学芸術学部映画学科映像コースに進学して、アニメーションを専攻。そこで指導を受けていた講師の紹介で、憧れの宮崎駿に出逢い、在学中から、脚本家としてジブリ作品に参加するようになりました。
高畑勲監督の演出助手、虫プロダクション劇場版映画の画面構成などを経験した片渕須直監督は、1998年に、初監督作品となった劇場版アニメ「この星の上に」を発表。ザグレブ国際アニメーション映画祭での入選を果たし、同作がアヌシー国際アニメーションの特別上映作品に選ばれるなどの快挙を達成しました。
他にも、片渕須直監督には、約8年にかけて構想を練った「アリーテ姫」や、2009年の「マイマイ新子と千年の魔法」で、国内外の受賞歴があります。しかし、そこそこの話題となった「マイマイ新子と千年の魔法」でも、業界の評価と興行収入は比例せず、メジャーどころとなることはできませんでした。
片渕須直監督作品となるはずだった「魔女の宅急便」!?恩師・宮崎駿との確執が原因か?
片渕須直監督は、誰もが知る1989年公開の宮崎駿監督作品「魔女の宅急便」のクレジットに、”演出補”として名前が挙がっています。しかし、この「魔女の宅急便」は当初、宮崎駿の愛弟子である片渕須直が監督として予定されていたとか。片渕須直監督のコラム記事によると、最終的に”宮崎駿監督作品でなければ出資しない”とスポンサーに言われ、降板せざるをえなかったとのことでした。
その後に”演出補”となったのは、アニメ誌編集部の人間から「あなたは現場に立ち会うべきだ」と勧められたからだそうです。そこで、片渕須直監督が、この人物について「宮崎さんが、こちらの現場に介入してくるのを防ぐために手を尽くしてくれた人」と説明していることに、ひっかからずにはいられません。
「当時の僕は、宮崎さんの模倣といわれる自分から脱却したくて反抗的だったかもしれない」とも言っています。また、片渕須直監督は、「魔女の宅急便」を最後にジブリを去り、「アリーテ姫」の構想に入りました。このことからも、2人の間に何らかの確執があったのではないかと勘ぐってしまいます。
片渕須直監督「この世界の片隅に」2016年映画各賞の本命作品に!資金調達法が画期的だった!
片渕須直監督「この世界の片隅に」が、2017年2月5日に開催される「第38回横浜映画祭」に先駆け、作品賞を受賞しました。審査員特別賞には、主人公・北條すず役ののんが選ばれ、同時発表された「2016年日本映画ベストテン作品」では、「君の名は。」「シンゴジラ」を抑えて1位を獲得しています。
この勢いのまま、年末の映画賞を総なめということも考えられますが、公開前には、こうなるとは、誰も予想しなかったでしょう。こうの史代の原作に魅了された片渕須直監督が、「この世界の片隅に」に着手したのは、2010年のことでした。業界や、玄人アニメファンからの評価を得ているとはいえ、ヒット作のない片渕須直監督は、まず、資金調達に苦心しています。
そこで、作品のプロデューサーが打ち出した策は、”クラウドファンディング”でした。”クラウドファンディング”とは、アイディアをネット上でプレゼンテーションし、賛同を得た者から出資金を得る近代的な資金調達手法です。これによって、約4000万円の資金を得たものの、目標額には大きく及びません。
しかし、その資金を利用して制作したパイロットフィルムが反響を呼び、予定していた半分の約2.5億円の資金調達に成功したといいます。こうした紆余曲折を経て、公開の日を迎えた「この世界の片隅に」は、瞬く間に感動の渦を拡げていきました。片渕須直監督によると、女学生たちが歌いながら駅前を行進する様子は、原作にはなかったそうです。
これは、戦時中に実際にあった風景ですが、彼女たちの多くは空襲で亡くなっています。それをあえて描きこんだのは、「そこに生かしてあげたかった」との想いがあったからだそうです。作り手のメッセージを声高に主張するでもなく、ただリアルな生命を描いたアニメ映画「この世界の片隅に」には、他の戦争作品にはない希望が感じさせられます。