筒井康隆のてんかん騒動の顛末は?断筆宣言したワケ!

筒井康隆のてんかん騒動の顛末は?断筆宣言したワケ!

筒井康隆の断筆宣言は、表現の自由を守るための孤高の戦い

筒井康隆が、SF作家として、すでに大家となっていた1993年のことです。角川書店発行の高校国語の教科書に収録されることになった「無人警察」で、癲癇の記述が差別的であるとして、日本てんかん協会から抗議を受け、数度にわたり交渉を行ったものの決裂。さらに、角川書店が、「無人警察」を無断で教科書から削除したことに怒って、筒井康隆は断筆宣言します。

以後、この問題は、さまざまな障害者団体や人権団体、文学界、出版社を巻き込み、「表現の自由とはなにか」という問題に発展、論議は紛糾。翌年には、筒井康隆個人と日本てんかん協会での合意が成立し、1996年末、筒井康隆は断筆を解除しましたが、この間、筒井康隆は、一表現者として、孤独な戦いを強いられました。

筒井康隆、星新一、小松左京は、日本SF界の御三家だった

筒井康隆は、1934年生まれの81歳。1960年代から1970年代にかけ、ナンセンスで反権威的な筒井康隆の作品は、大学紛争に明け暮れていた全共闘世代に大受けし、以後3度も直木賞候補になるものの、落選。直木賞を皮肉った「大いなる助走」も書いています。ハヤカワ書房が、「ハヤカワ・ミステリ」シリーズを刊行したのが、1953年。また1959年12月には、SFとファンタジーの月刊誌「SFマガジン」が発刊されます。

さらに1970年、「ハヤカワ文庫SF」が刊行されることにより、日本では、従来のミステリファンだけでなく、熱狂的なSFファンが生まれ、その後の日本における文学、映画やアニメに大きな影響を与えます。このSF人気をけん引したのが、SF御三家と呼ばれた、短編作家の星新一、「日本沈没」で一世を風靡した小松左京、そして筒井康隆の3人です。

筒井康隆おすすめ作品ランキング!「パプリカ」は入門者にも読みやすい!

筒井康隆を読むなら、まず初期の短編集から!

筒井康隆のデビュー当時の作品は、現代社会のさまざまな問題に対する、シニカルで鋭い批判、反権威主義的メッセージにあふれ、「東海道戦争」や「ベトナム観光公社」、「アフリカの爆弾」などの短編で注目を集めます。その後、時間やパラレルワールドなどをテーマにした本格SF「脱走と追跡のサンバ」で、その人気を不動のものとしました。

筒井康隆のヒロインものなら七瀬三部作と「パプリカ」

筒井康隆による、他人の心を読めるテレパスがヒロインの「家族八景」、「七瀬ふたたび」、「エディプスの恋人たち」の七瀬三部作は、何度か、映画やドラマ化されています。また同系統の作品として、他人の夢や無意識界へ侵入する夢探偵を描いた「パプリカ」は、漫画化され、人気再燃中です。1980年代に入ると、擬人化した文房具とイタチたちの星間戦争を形而上学的に描いた「虚構船団」のような大作を発表した筒井康隆。1990年代に入っても、文芸批評と大学機構をシニカルに描いた「文学部唯野教授」を発表し、その批判精神は、今も衰えていません。

SFファンというより、一般の読者にとっては、やはり筒井康隆の初期の短編作品のほうが、単純に楽しめ、またさまざまなSFのテーマやセオリーなどを知ることができるのではないでしょうか。21世紀になって久しい今、SFは、ファンタジーやライトノベル、漫画の世界に取り込まれてしまった感があります。筒井康隆らが切り開いた、本格的な日本SFの再興に期待したいものです。

筒井康隆の「時をかける少女」は4度よみがえる?!

筒井康隆には、七瀬三部作とともに、映画化され大ヒットした作品があります。1983年角川映画で映画された「時をかける少女」です。ヒロイン原田知世は、この一作で、同じく角川映画でデビューした薬師丸ひろ子とともに、80年代を代表する女優となりました。実は、この「時をかける少女」が、2016年の夏ドラマとして、日本テレビによって再ドラマ化決定、というニュースがネットに流れると、ひと騒動あったようです。2000年代の若い人たちにとって、「時をかける少女」とは、2006年、細田守監督によるアニメ映画。

細田守監督版が、アニメファンから高い評価を得ているため、テレビ局による安易な実写化に反対する声が多くあがったのです。しかし、それを言うならば、「時をかける少女」は、1983年の角川映画よりさらに10年前の1972年、NHKの少年ドラマシリーズで、「タイムトラベラー」というタイトルですでにドラマ化されていて、その頃の少年少女たちの間でかなり人気を得ていました。1972年、1983年、2006年、そして2016年と、テレビ、映画、アニメ、テレビとリバイバルされてきた「時をかける少女」は、SFとして、非常によくできた作品といえるのでしょう。

ちなみに、今回の日本テレビ版「時をかける少女」では、ヒロイン芳山未羽に、ウィルコム沖縄のイメージガールコンテストで「沖縄美少女図鑑賞」を受賞した黒島結菜が、また未来人ケン・ソゴルには、Sexy Zoneの菊池風磨がキャスティングされています。さてこの作品は、かつてのドラマや映画、アニメを超えることができるか、今では81歳になった原作者、筒井康隆も楽しみにしていることでしょう。

関連記事

ページ上部へ戻る