2022年8月16日 更新
黒澤明の究極の映画監督作品ランキング!死因と生涯最後の作品
黒澤明は戦後の映画界が誇る世界的映画監督
黒澤明が、生涯で撮った映画作品は、全30本。映画全盛時代に、プログラムピクチャーを撮っていた監督ならば、黒澤明の倍は作品を撮っていることから考えると、黒澤明は、極めて寡作な監督といえます。しかし今でも、その作品タイトルのほとんどが、一般の人にも知られていることからは、黒澤明が、いかに人気があり、優秀な監督であったかが分かるでしょう。
その代表作を1本といわれれば、やはり、黒澤明の名を世界に知らしめ、リメイク版だけでなく、数多くの作品のヒントとなった「七人の侍」です。そして、それに続く豪快な娯楽時代劇として、「隠し砦の三悪人」や「用心棒」「椿三十郎」が挙げられます。サスペンス作品には、男臭い三船敏郎の魅力にあふれた「野良犬」や「悪い奴ほどよく眠る」「天国と地獄」が。この作品のキモともいうべき仕掛けが、織田裕二主演映画「踊る大捜査線」の第1作目で使われたことは有名な話です。
一方、ヒューマン作品としては「赤ひげ」が。名優・志村喬がブランコに乗りながら歌う「ゴンドラの唄」が感動的な「生きる」もありました。芥川龍之介原作の「羅生門」や、ドフトエスキーの「白痴」は、文芸作品の代表作です。
これら作品はすべて、戦後から1960年代にかけて撮られた作品で、1970年以降に撮られた作品には「影武者」などがありますが、話題にはなったものの、映画そのものとしては、作品としての評価がわかれるところです。
黒澤明の最期の作品は随筆家内田百閒がモデルのヒューマン作品「まあだだよ」
黒澤明の最後の作品は、1993年、監督生活50周年・通算30作目の記念作品として制作された、「まあだだよ」でした。1980年代後半に再ブームとなっていた随筆家の内田百閒をモデルにしたヒューマン作品でしたが、この作品も、かつての黒澤明人気に及ぶことはありませんでした。その後、黒澤明は、次回作の脚本を書いている最中、転倒して骨折。療養生活を続けますが、1998年9月6日に脳卒中が原因で亡くなっています。
黒澤明監督に海外の反応は?「七人の侍」「荒野の七人」あらすじ!
黒澤明が今でも世界の監督にリスペクトされる理由とは
黒澤明はかつて、世界で一番名前が知られている日本人といわれるほど、海外での評価や人気が高い映画監督でした。1990年には、アカデミー名誉賞を受賞しています。受賞者を迎えるスピーチを行ったのは、ジョージ・ルーカスとスティーブン・スピルバーグ。黒澤明について、「現役の世界最高の監督です。“映画とは何か”に答えた数少ない映画人の彼にこの賞を送ります」と紹介しています。
海外の映画ファンのみならず、多くの有名監督たちが黒澤明を支持するのは、やはり黒澤作品の完成度の高さによるものでしょう。ストーリーの緻密さや、キャラクター設定の妙、ダイナミックなカット割りや、絵画のように美しい映像……彼らは、黒澤明作品の、1シーン、1カットに惚れ込み、自分の作品の中に、オマージュとして活かしています。有名な話としては、ジョージ・ルーカスの「スターウォーズ」シリーズのC-3PO、R2-D2は、「隠し砦の三悪人」に登場する太平と又七という百姓をモデルにしているそうです。
さらに、ダースベイダーのイメージは、三船敏郎。実際に出演依頼があったそうですが、三船敏郎は、そんな子供だましの映画には出ないと断ったとか。もし三船敏郎が出演していれば、「世界の三船」は、さらに映画史の伝説として名を遺したことでしょう。
名匠フランシス・コッポラも、「ゴッドファーザー」のトップシーンは、「悪い奴ほどよく眠る」の結婚式のシーンから着想を得たそうです。また、「タクシー・ドライバー」で有名なマーティン・スコセッシ監督の「荒野の用心棒」や、アクション映画の巨匠ウォルター・ヒルが撮った「ラストマン・スタンディング」は、「用心棒」のリメイク版に他なりません。
黒澤明の「七人の侍」は娯楽アクション映画のお手本
黒澤明作品へのリスペクトが示されたといえば、なんといっても「七人の侍」です。リメイク版の「荒野の七人」だけでなく、これほどシチュエーションが模倣された映画は他にありません。あらすじは、盗賊団におびえる農村に、流れ者の強者が現われ、農民たちに盗賊団退治を請け負います。
そこに新たに6人、戦闘のプロフェッショナルが集まると、圧倒的な戦力を誇る盗賊団との壮絶な戦いがスタート。ひとり、またひとりと仲間を失いながらも戦い続ける七人の男たち。さて、その結末は……という単純明快なストーリーの中で、巧みに練られたいくつかの伏線と、どんでん返しが、見る者を釘づけにします。
黒澤明「七人の侍」が「荒野の七人」を経て50年ぶりのリメイク「マグニフィセント・セブン」
黒澤明の1954年公開映画「七人の侍」が、「荒野の七人」としてリメイクされたのは、1960年。監督は、「OK牧場の決斗」などを撮った西部劇の名手、ジョン・スタージェスで、舞台を西部開拓時代のメキシコの寒村に置き換えかえ、西部劇として制作されました。
出演者は、ユル・ブリンナーや、スティーブ・マックイン、ジェームズ・コバーン、ロバート・ボーンなど、後の映画界を飾る豪華な顔ぶれでした。そして、それからなんと50年の年月を経た2017年の正月には、黒澤明の「七人の侍」をリメイクした「荒野の七人」を原案に、さらにパワーアップした「マグニフィセント・セブン」が公開されます。
監督は、アクション映画で知られたアントワーン・フークア。彼の作品「トレーニングディ」や「イコライザー」に主演したデンゼル・ワシントンが今作品にも出演。他にも、クリス・プラットや、イーサン・ホーク、イ・ビョンホンなど、国際色豊かな豪華キャスト7人が結集しています。
すでにオスカー賞レースの本命とも目されている「マグニフィセント・セブン」について、アントワーン・フークア監督は「今の時代に合ったウェスタンを創った」とコメント。戯曲や音楽だけではなく、優れた映画もまた、リメイク、換骨奪胎されながら、その原作ともども、永く人々に愛され続けるようです。