新房昭之監督のアニメ演出に賛否両論?”新房演出”の代表作品は?

新房昭之監督のアニメ演出に賛否両論?”新房演出”の代表作品は?

新房昭之監督のアニメ演出はワンパターン?「物語シリーズ」「荒川アンダーザブリッジ」の魅力とは?

新房昭之監督が手掛けるアニメは、個性的な演出法で多くのファンを獲得しています。たとえば、巧みなセリフの絡み合いが人気の西尾維新原作「物語シリーズ」や、電波なコメディラブを描いた中村光原作「荒川アンダーザブリッジ」は、”新房演出”が光る代表作品です。

デザイン性あふれるポップな色使いや、サイケデリックな背景。目まぐるしくカットが変わったかと思えば、止めのポーズ、時にはひたすらアップのまま、特定のキャラクターの超絶長ゼリフが始まります。この斬新かつ、どこか紙芝居的なノスタルジックさこそ、”新房演出”の真骨頂です。

しかし、その”新房演出”にも、「同じギミックを使い過ぎ」という否定的な意見が聞こえてきます。特に、テレビアニメ1話分に2人程度しか登場しない「物語シリーズ」では、アクションシーンを挟まないものになると、長時間の視聴に耐えかねるという声も挙がっているようです。

新房昭之監督の”新房演出”の裏にはアニメ業界の深刻な問題があった!

新房昭之監督の、一見トリッキー極まりない”新房演出”は、実はアニメ業界が抱える事情から生まれた苦肉の策だったといいます。近年、制作されるアニメの本数が急増し、業界は、圧倒的な人手不足に陥りました。そこで新房昭之が出した結論は、限られた作画スタッフと制作時間で、アニメーションのクオリティを保持するための安全策。

まずは、余計なカットやアングルを徹底排除し、生理的に気持ちがいいと思えるものだけを、画面に残すようにしました。そして、会話シーンでは、1人のキャラクターのアップで長回しするか、喋るキャラごとにカットを変え、2人以上を同じ画面に入れる時には遠景に。

こうすると、細かい動きを描く必要もなくなり、テンポにメリハリをつけることができます。賛否両論はあるようですが、最小のアニメーションで、最大のインパクトを生むことに成功した”新房演出”は、新しいアニメのジャンルを確立したといえそうです。

新房昭之監督は同じ声優を多用し過ぎ?学歴やプロフィールは?

新房昭之監督が多用するシャフト声優”新房組”が腐の象徴とは言えない理由

新房昭之監督は、2004年から、アニメ制作会社シャフトの中心人物として、同社のアニメ制作を手掛けてきました。その作品群は、「ネギま!?魔法先生ネギま!」「魔法少女まどか☆マギカ」「さよなら絶望先生」「物語シリーズ」「荒川アンダーザブリッジ」とそうそうたるものですが、ほとんどに特定の声優を起用し続けていることでも有名です。

斎藤千和、神谷浩史、櫻井孝宏、松来未祐、井上麻里奈らは、新房昭之が、初めてシャフトで制作したアニメ「月詠-MOON OHASE-」からの常連声優。この他、堀江由衣、野中藍、沢城みゆきらも多用されており、彼らは総じて”シャフト声優”および、”新房組”と呼ばれています。

「新房昭之監督は慣れあいの仕事をしている」「もっと適役がいるのでは?」と批判もありますが、実はここにも、多忙極まるアニメ業界の事情がありました。特にシャフトはスケジュールが込み入っているため、新房昭之監督と息の合った旧知の声優を起用したほうが、効率・質の両面に与えるメリットは大きいようです。

新房昭之監督は東京デザイナー学院出身!「幽遊白書」の演出が出世の転機に

新房昭之監督は、1961年9月27日生まれ、福島県伊達郡出身です。有名アニメ監督であるにもかかわらず、メディア等への顔出しは徹底して避けているため、細かいプロフィールも明かされていません。唯一の学歴として、東京デザイナー学院出身であることだけは分かっています。

1981年、「うる星やつら」でアニメーターデビューを果たした新房昭之は、いくつかの制作会社を経て、スタジオピエロで転機を迎えることになりました。1990年に同社で制作されたアニメ「からくり剣豪伝ムサシロード」で初演出を手掛けると、「幽遊白書」の第74話「テリトリーを打ち破れ!!」で高評価を受け、その名が業界に知れ渡ります。

それを機に、1994年の「メタルファイヤー♥MIKU」で、監督デビューを果たした新房昭之。2004年からはシャフトへ拠点を移し、斬新な”新房演出”で、次々と話題のアニメを世に送り出すヒットメーカーとなっていきます。

新房昭之監督の真価が問われる最新アニメ映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」

新房昭之監督の最新アニメ映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」が、2017年8月18日に公開されます。同作は、1993年に放送された岩井俊二の出世ドラマが原作。夏休みの花火大会を前に、クラスのアイドル的存在のなずなに想いを寄せる男子中学生・典道が、時間が巻き戻る不思議体験をする青春恋愛物語です。

脚本を担当したのは「モテキ」「バクマン。」などで知られる大根仁。声優陣は、いつもの”新房組”ではなく、広瀬すず、菅田将暉といった人気若手俳優や、宮野真守らが起用されており、新たな新房昭之ワールドを予感させられます。新房昭之監督といえば、「物語シリーズ」劇場3部作の完結編「傷物語Ⅲ冷血篇」の公開が、2017年1月6日に控えています。

この作品に見られる抽象的な描写や、歌舞伎的な見下ろしカット(通称・シャフ度)が新房昭之の全てだと思うと、「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」の世界観に、不安を抱く人もいるかもしれません。しかし、2016年10月期のNHKアニメ「3月のライオン」は、”新房演出”らしい心理描写やカット割りを取り入れつつも、原作の柔かな雰囲気は踏襲されていました。

脚本・演出会議では、原作者を同席させることを心がけているという新房昭之は、自らの演出と作品の親和性を何よりも重要視しています。2016年は、「君の名は。」をはじめ、劇場版アニメの豊作年となりました。制作がシャフトということで、「また紙芝居アニメ?」との声が聞こえてきそうですが、「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」には、気概が十分感じられます。”新房演出”の真価は、この作品で決するといっても過言ではないかもしれません。

関連記事

ページ上部へ戻る