毒蝮三太夫の過去はウルトラマン隊員!本名やプロフィールは?
毒蝮三太夫になる前は「ウルトラマン」科学特捜隊のアラシ隊員で大人気!
昭和30年代の少年たちにとって、ウルトラマンの登場は衝撃的でした。それまでは等身大のヒーローしかいませんでしたが、正義の宇宙人が人間に乗り移り、おまけにでっかくなって、悪い怪獣や宇宙人と戦うのですから驚天動地です。さらに、ウルトラマンが地球上では3分間しか戦えないというスリルと、ウルトラマンの必殺技スペシウム光線のカタルシス。
今では身もフタもないネーミングですが、ウルトラマンとともに戦う「科学特捜隊」の装備や武器のかっこよさに、少年たちは一瞬で夢中になりました。今から考えると、特撮に費用がかかったためか、出演者は、脇役俳優や新人がほとんどで、「ウルトラマン」への出演は、彼らのその後の役者人生に、良くも悪しくも大きな影響を与えています。当時、本名の石井伊吉という名前で、科学特捜隊の中でも頼もしいジャイアン的キャラだったアラシ隊員を演じたのが、後の毒蝮三太夫でした。
毒蝮三太夫は子役出身でテレビ創成期の俳優だった
少年たちに慕われた毒蝮三太夫演じるアラシ隊員のキャラは、後年、どんなに口が悪くてもお年寄りから圧倒的支持を受ける「巣鴨のスター」として、今も健在です。毒蝮三太夫は、1936年生まれの81歳。浅草竜泉寺で育ったチャキチャキの下町っ子で、児童劇団に入り、1950年代のテレビ創成期にドラマデビュー。映画にも出演しますが、日大芸術学部に進むと、新劇を目指すようになりました。
このときの仲間には、声優界の重鎮である増山江威子や北浜晴子がいます。数々のドラマや、「ウルトラマン」にも出演し、俳優としてそれなりに活躍していた毒蝮三太夫こと石井伊吉が、新劇仲間の紹介で出会ったのが、落語界で颯爽と頭角を現してきた立川談志でした。この出会いにより、俳優・石井伊吉は、毒蝮三太夫という芸名を得て、人生を一変させます。
毒蝮三太夫のトンデモ芸名の由来!ババアいじりの暴言が人気!?
毒蝮三太夫という芸名は立川談志と五代目三遊亭圓楽の合作?!
立川談志と石井伊吉は、本当に気が合ったようです。1967年には、「笑点」の司会を務めていた立川談志直々の提案で、二代目の座布団運びに石井伊吉が選ばれて、さっそく出演が始まりました。とはいえ、石井伊吉は、まだ「ウルトラマン」に出演中。なんでアラシ隊員が、座布団運びなどしなくてはいけないのかと、日本テレビに苦情が殺到したのは有名な話です。そこで、石井伊吉に、新たな芸名をつけようということになりました。
立川談志が、「怪獣ドラマに出てんだから、マムシってのはどうだ?」と、勝手にマムシと呼び始めたら、五代目三遊亭圓楽が、「ただのマムシじゃ面白くねぇ、毒を付けろ」と、毒蝮に。続いて、立川談志と出ていた別の番組での、家老の田中三太夫というキャラから下の名前をとって、毒蝮三太夫という芸名が誕生したとか。ビートたけし率いるたけし軍団のネーミングを彷彿とさせますが、こんなにきついシャレによる命名は、立川談志師匠が嚆矢でした。
毒蝮三太夫が「巣鴨のスター」となった、TBSラジオ「毒蝮三太夫のミュージックプレゼント」
かつての俳優・石井伊吉は、毒蝮三太夫として、俳優兼タレントとして活躍し始めました。中でも、1969年にスタートしたTBSラジオ「毒蝮三太夫のミュージックプレゼント」は、途中、他の番組のいちコーナーとなったりしながらも、2017年現在も放送が続く長寿番組となっています。
そして、この番組こそが、毒蝮三太夫を、爺さん婆さんのアイドルにしました。「汚ねえババアだな」「ジジイ、まだ息してっか」「もう先はねーなー」「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……」。毒蝮三太夫が老人たちに放つこれら罵詈雑言が、垣根のないコミュケ―ションを生み、彼らから絶大な信頼を得ることとなっています。
毒蝮三太夫が大いに歓迎した日本老年学会の研究発表とは?
最近、日本老年学会などの研究機関が、後期高齢者である75歳以上を「高齢者」、前期高齢者に位置付けられている65~74歳は「准高齢者」と捉え直すべきだという提言を行いました。70歳前後の人たちの活躍こそが、明るく活力ある高齢化社会につながる、という見解に基づくものです。
しかし、「朝まで生テレビ」で有名な田原総一朗は、「年金の支給が先延ばしになったり、医療費が抑制されたりする可能性がある」と、さっそくその悪影響を指摘しています。高齢者たちを元気づける立場だった毒蝮三太夫も、今や80歳を迎え、自分が「ジジイ、だいじょうぶか」と言われる年齢になってしまいました。
しかし、毒蝮三太夫は、今も老人たちと接する中で、「昔の70代はおじいさんやおばあさんに見えたが、今はまだ若い」と指摘。「能力のある年寄りから教わることは多い。定年が早いと認知症にも悪影響がある。社会保障費が抑制されれば、国にとってもありがたいはず」と、この提言を大いに歓迎しています。
確かに、医療技術が進み、健康に対する意識が高まった現代、老人と呼ばれる実年齢は、ますます高くなってきました。しかし、それに伴い、心豊かに暮らす精神年齢はと言えば、まだまだ低いようです。毒蝮三太夫には、爺さん婆さんたちの生活を明るく照らす、ウルトラマンのようなヒーローとして、がんばってほしいものです。