民衆から「エビータ」の愛称で親しまれた大統領婦人、エバ・ペロンの33年という短い一生を描いた劇団四季のミュージカル「エビータ」。2019年8月25日から再び全国ツアーが幕を開けます。
今回の演出も、1982年に日本で初演した際の演出家・浅利慶太が手がけています。ブロードウェイミュージカルの演出家ハロルド・プリンスが手がけた「エビータ」は、貧困にあえぐアルゼンチンの社会的背景からエビータの人生を描き出す演出となっていました。一方の浅利慶太版はエビータの生涯を軸にした演出がなされており、より「エビータ」という作品名に寄り添った同作の決定版と言えるでしょう。
今回の「エビータ」は浅利慶太の追悼公演
演劇やミュージカルに詳しくないと、演出家・浅利慶太といってもピンとこないかもしれませんね。浅利慶太は劇団四季の創立メンバーの一人で、1970年代から劇団四季で海外ミュージカルの翻訳上映を始め、ミュージカルの代名詞「キャッツ」で、日本では初となる千秋楽の舞台を決めない無期限での公演を行い、成功に導いた立役者でもあります。
また、芸術志向の強さにより集客に苦労していた劇団四季に大鉈を振るい、ミュージカル公演を行う国内最大規模の企業型劇団へとシフトチェンジさせました。商業主義的と批判を受けることもありましたが、誰もが知るとおり、演劇で劇団員を養っていくには莫大な資本が求められます。今も多くの劇団では、演劇の収益だけで劇団員を養うことができず、アルバイトをしながら生計を立てる劇団員は、全国に何千人といます。
浅利慶太は、演劇で収益を立てるために演目をミュージカルに絞ったり、政治家の集客力を利用したりと、劇団員が公演に集中できるよう様々な策を講じ、劇団四季を10人で立ち上げた小さな劇団から、年間で約300万人の観客を動員する人気劇団へと成長させました。今日の劇団四季があるのは、浅利慶太の活躍あってこそといっても過言ではありません。
劇団四季を育て上げ、元代表取締役でもあった浅利慶太は、2018年7月13日に85歳で生涯に幕を下ろしました。今回上演される「エビータ」は浅利慶太追悼公演と題し、彼の演出で上演されます。
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「エビータ」はロック・オペラ・コンセプトアルバムから生まれた!
ミュージカル「エビータ」は1976年11月にイギリスでリリースされたロック・オペラ・コンセプトアルバム「エビータ」を基にしています。作詞はティム・ライス、作曲はアンドリュー・ロイド=ウェバー。ティム・ライスが、アルゼンチンの歴史にエバ・ペロンが大きく関わっていることに興味を持ったのが「エビータ」誕生のきっかけでした。
同アルバムのヒットによりミュージカル化された「エビータ」は、ニューヨークのブロードウェイに並ぶ劇場地区として知られるロンドンのウエスト・エンド・シアターのプリンス・エドワード劇場で1978年6月に初めて上演され、イギリスで演劇作品に贈られる賞では最も権威ある賞といわれる「ローレンス・オリヴィエ賞」の新作ミュージカル賞を受賞しました。
翌1979年9月にはニューヨークのブロードウェイ・シアターでも「エビータ」が上演され、1980年に「トニー賞」のミュージカル作品賞、オリジナル楽曲賞など6部門で受賞。イギリスで制作されたミュージカルでは初のトニー賞受賞作品となりました。全世界で愛される作品となった「エビータ」は、ここ日本では劇団四季が1982年3月に初めて上演しています。
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「エビータ」の主人公は実在したアルゼンチンの大統領夫人
「エビータ」は、民衆からエビータと呼ばれ愛された一人の女性、エバ・ペロンの33年に渡る激動の人生を綴った物語です。
「大統領夫人エバ・ペロン。我国の精神的リーダーが本日20時25分、永眠されました」という衝撃的なナレーションとともに、物語はエバ・ペロンの国葬から幕を開けます。そこには希望を失い悲嘆に暮れた大勢の国民と、この狂乱を冷ややかな目で見つめるチェがいました。
後にアルゼンチンの大統領夫人まで上りつめたエバ・ペロンですが、もとはブエノスアイレスから150マイルほど離れた寒村で生まれた私生児で、名をエバ・マリア・ドゥアルテと言いました。私生児であるがゆえに、幼い頃から貧困にあえぐ生活を余儀なくされたエバ。私生児であること、貧しいことを理由に周囲から蔑まれたエバの心には、中流階級への強い敵意が巣食っていきます。それと同時に彼女の胸を支配したのは、富と名声に対する渇望でした。
15歳の頃、生まれ故郷のナイトクラブで出会ったタンゴ歌手・マガルディとともに首都ブエノスアイレスへ渡ったエバ。人間の欲望が渦巻く大都会で女優として大成する夢を胸に抱き、マガルディのもとを離れて権力者を次々と渡り歩きます。男たちの力を利用して、エバはモデル、ラジオスター、そして夢だった女優へと駆けあがりました。そして、アルゼンチンの西部で起きた大地震をきっかけに、チャリティコンサートでフアン・ドミンゴ・ペロン大佐と運命的な出会いを果たします。
労働者の心をつかんだペロンは大統領となり、エバも夢に描いたファーストレディの座に収まります。しかし、エバの物語はまだ半ば。彼女の欲望は留まるところを知らず、国をも動かす力を手に入れようとします。周囲をも巻き込むエバの野望は、どんな結末を迎えるのでしょうか。
劇団四季「エビータ」の全国ツアー開幕!
夢に生き、野心に燃え尽きた女性・エビータの生涯を、フィクションを交えつつ壮大に描くミュージカル「エビータ」。2019年8月25日の神奈川県・相模女子大学グリーンホールでの公演を皮切りに、同年12月14日の鹿児島市民文化ホールでの千秋楽まで、約4ヶ月にわたる全国ツアーが開始します。あなたの街に「エビータ」がやってくるこの機会に、激動の生涯を駆け抜けたエバの物語を体感してみてはいかがでしょうか。
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