石塚真一がジャズを描いたワケ!漫画「ブルージャイアント」あらすじネタバレ感想!

石塚真一がジャズを描いたワケ!漫画「ブルージャイアント」あらすじネタバレ感想!

石塚真一がジャズを描いたワケ!漫画「ブルージャイアント」の魅力とは?

石塚真一漫画「ブルージャイアント」は、マンガ大賞2016の第3位に輝くなどして注目を集めていますが、石塚真一が、日本人にとってあまり馴染みのない「ジャズ」をテーマに描いた理由は単純明快。”ジャズが好きだから”です。「ブルージャイアント」は、楽譜すら読めない音楽経験ゼロの高校生・宮本大が、ジャズの生演奏に強く心を打たれて、世界一のテナーサックスプレイヤーを目指す物語。

作中では、宮本大が、”大人のオシャレな音楽でしょ?””気取った小難しい音楽”という人々に、「ジャズは熱くてハゲしいんだ!」と、意気揚々と語るシーンがたびたび登場しますが、これこそ石塚真一が本作で表現したかったジャズの魅力です。頭であれこれ考えず、魂ごと楽器にぶつける宮本大の姿勢は、まさに石塚真一のジャズ愛の結晶。画面から本当に音が聴こえんばかりの迫力には、思わず涙がこみ上げるほど魂を揺さぶられます。

石塚真一のジャズ漫画「ブルージャイアント」あらすじネタバレ感想!「宮本大」の現在は?

石塚真一の渾身のジャズ漫画「ブルージャイアント」は、現在8巻まで刊行されています。当初、地元宮城県仙台市の川原で1人、我流でサックスを吹き続けていた宮本大。初ライブで、無鉄砲な大音量で客にダメ出しを食らった後、ひょんなことから、音楽教室講師として燻っていたジャズプレイヤーに才能を見初められて師事し、その真っすぐで熱い演奏に磨きをかけていきました。荒削りながら、すでに大物の予感を匂わせる宮本大は、高校卒業後、ジャズプレイヤーを目指して東京へ。

現在、ピアノ・サックス・ドラムで構成された10代ばかりのトリオバンド「JASS(ジャス)」を結成し、いぶし銀のジャズマンたちをも震わせる熱いライブを展開している最中です。結論からいうと、実は本編の内容は回顧録であり、すでに宮本大は、世界的ジャズプレイヤーとして本場で活躍している模様。ただ、「音楽の頂はどこにあるか分からないから面白い」と言う宮本大にとって、そこが当初の目標である”世界一”かどうかは分かりません。

石塚真一プロフィール!「北狼ラストハンター」「岳」も熱かった!

石塚真一プロフィール!無気力人間から熱い漫画家になるまで!

石塚真一は、茨城県出身。1971年、父親は市場勤務で、母親は中学校教師という家庭に生まれました。高校時代の石塚真一は非常に無気力だったそうで、浪人生活を経て、現在は廃校となっている米国・南イリノイ大学に留学。その後、サンノゼ州立大学に再入学しています。何となく生きてきた石塚真一でしたが、留学中のルームメイトからロッククライミングに誘われて、垂直に切り立った氷の岸壁を登る経験をした時に、「きっとこの世界には深いものがある」と熱い気持ちに目覚めます。

漫画のマの字も見られない経歴を持つ石塚真一がペンを持つようになったのは、帰国後に就職したIT企業の経営が1年もしないうちに危うくなり、英会話学校の講師に転職したのがきっかけ。「経験したことを表現したい」との想いから、340円の漫画のハウツー本を手に、大好きな浦沢直樹や弘兼憲史の漫画を手本にしながら、30ページの作品を1年かけて描き上げたのが、漫画家・石塚真一の始まりでした。

石塚真一「北狼ラストハンター」「岳」の山への情熱が胸を打つ!

石塚真一は現在、小学館「ビッグコミック」で、「ブルージャイアント」を連載する他、「ビッグコミックオリジナル」でも「北狼ラストハンター」を連載中です。こちらの主人公は、書店アルバイト店員でありながら、狩人としての顔を持ち、人里に下りて来た熊、鹿などを駆るという、命の葛藤をテーマにした作品。

ジャズと同じく、ロッククライミングの経験から、山に対しても情熱を持つ石塚真一の死生観が詰まった熱さがヒシヒシと伝わってきます。その山への想いが生んだ作品といえば、2012年に「ビッグコミックオリジナル」で最終回を迎えた「岳」。石塚真一の米国での経験から、山岳救助隊の主人公を描いた「岳」は、第1回マンガ大賞、第16回文化庁芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した作品ですが、実はこれが、英会話講師をしながら1年かけて描いた作品だったとは驚きです。

「岳」で小学館新人コミック対象一般部門に入選し、いきなり漫画家デビューとなった経緯にも凄まじいエネルギーを感じます。

石塚真一「ブルージャイアント」CMで魅せたロングトーン!全作品に共通する骨子とは?

石塚真一が、「ブルージャイアント」のコミック8巻発売のラジオCMで、自らサックスのロングトーンを披露しました。石塚真一自身のサックスの技術は定かではありませんが、呼吸の限界まで楽器に吹きこまれる1音のロングトーンは、まるで「ブルージャイアント」の登場人物たちの真っすぐな生き様を象徴しているようでもありました。

また、力いっぱいサックスに息を吹き込む石塚真一の表情に、この作品への入魂ぶりがうかがえます。数々の、名作と呼ばれる架空の世界を描いたファンタジー漫画も、人々を感動させる強烈な創作意欲を感じさせられるものばかりですが、作者自身の内面のリアルを描いた作品ほど真に迫るというもの。

山登りの精神は山に登ったものにしか分からない、山の頂を経験した者にしか分からない景色がある、山には人の人生をも変えてしまうパワーがあるというのは本当だったようです。石塚真一の米国での経験が描かれているのは「岳」だけではなく、ジャズに果てしない頂を見た「宮本大」にも投影されているのでしょう。まだ見ぬ頂を目指して、岸壁にピッケルを打ちこむ研ぎ澄まされた精神こそ、石塚真一の全作品に共通する骨子といえそうです。

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