堀尾省太コアな漫画好きが注目!作品「ゴールデンゴールド」「刻刻」とは?

堀尾省太「ゴールデンゴールド」日常に侵食する怪異がおもしろ怖い!あらすじとネタバレ

堀尾省太「ゴールデンゴールド」孤島を舞台にした現代の怪異譚!あらすじ

堀尾省太「ゴールデンゴールド」は、「月刊モーニングtwo」で、2015年12月号より連載が開始されています。謎の存在に日常が侵食される様を描き、恐怖心がじわりと染み出してくるようなストーリーが、今、話題です。早坂琉花(はやさかるか)は、人の心の機微に聡い中学生の少女。そのため学校にうまく馴染むことができず、両親の元を離れて、瀬戸内の孤島・寧島に住む祖母の元へ身を寄せています。

ある日、海で不思議な像を拾った琉花。どうやら福の神の像であるらしいそれを、神社の荒れた祠に適当に祀ったところ、像が幼児くらいの大きさに変化しました。さらに、家にまでもついてきますが、祖母は、それを「フクノカミ」と呼び、一緒に暮らすことになります。フクノカミが来てからというもの、祖母の旅館はお客が増え、羽振りもよくなりました。しかし、祖母の顔が、フクンカミのように変化していってしまいます。

堀尾省太「ゴールデンゴールド」ネタバレ!キーパーソン・フクノカミって何?

「ゴールデンゴールド」最大の謎であり、恐怖の対象であるのは、琉花が拾ってきた像が具現化した存在、フクノカミです。岩場の隙間で波に漂っていた時は、手のひらサイズのぬめっとした像に過ぎませんでしたが、祠に祀ったところ、幼児サイズに成長。どこかねっとりした雰囲気と目元が印象的な、柔らかそうな質感の生き物に変化してしまいます。

表情は変化せず、黒目がちなところも不気味なフクノカミですが、人とお金を呼び寄せる能力があります。実際に、琉花の祖母に富をもたらすなど、良いこともありました。しかし、祖母の顔がフクノカミのようになると、洗脳されたかのように言動も変化。フクノカミのことを記事にしようとした編集者は、フクノカミについての記憶が消されるなど、徐々に日常が突き崩されていきます。

得体のしれない者への恐怖は増すばかりですが、注目すべきは、物語の冒頭に描かれていたフクノカミに顔がよく似た人々の屍と、刀を手に何かを探す侍がいるシーンです。侍は、「奴だけがおらん……どこだ?」とつぶやきます。作者自身が「侍が切り殺したと決めつけないでほしい」と語るこの場面が意味するものは何なのか。謎が深まります。

堀尾省太「刻刻」知っていれば漫画通!天才漫画家が描く時が止まった世界とは

堀尾省太「刻刻」あらすじ!時が止まった世界での戦いにあの妖怪漫画家も高評価!

「刻刻(こっこく)」は、「増刊モーニングtwo」で、2008年から2014年にかけて不定期連載された作品です。コミックスは全8巻。堀尾省太(ほりおせいた)の連載デビュー作品になります。28歳の佑河樹里は、家族7人で平凡な生活を送っていました。

しかし、兄の翼と甥の真が、帰宅途中に誘拐されてしまいます。身代金の受け渡し場所に向かおうとする樹里に、祖父(通称じいさん)は、「止界術」で時を止めます。時の止まった「止界」を通り、身代金の受け渡し場所に向かう途中、樹里たちは、複数の人間に襲撃されてしまいまいます。実は誘拐事件は、佑河家が所有する「止界術の石」を奪い取ろうとする「真純実愛会」の仕掛けた罠でした。

貧乏ながらも平凡な一家のはずだった佑河家と宗教団体の戦いを描いた本作は、「ゲゲゲの鬼太郎」の作者として知られる水木しげるや、直木賞作家・伊坂幸太郎らも絶賛。特に水木しげるは、近年の漫画の中では最高となった80点という高評価を付けました。

堀尾省太「刻刻」日常に侵食するSFファンタジー作品の設定がすごい

堀尾省太の「刻刻」は、SFファンタジー要素の強い作品です。時を止める術である止界術や、時の止まった止界という世界など、独自設定が目を引きます。敵が狙っているのは、佑河家の持っている止界術を発動させる「本石」です。石に、血や涙といった体液を流し込むことで、止界術を発動することができます。

止界にいるのは、クラゲ状の「霊回忍(タマワニ)」や、人の殺意に反応して出現し、止界の秩序を乱す者を排除する役割を持った神ノ離忍(カヌリニ・佑河家では管理人と呼ぶ)。人は、霊回忍と融合しなければ、止界で動くことができません。驚異的な能力を持った人々のバトル漫画と思われがちな本作ですが、異常な状態にあっても、なお家族で一致団結して難局に立ち向かうという、ホームドラマ的な側面のほうが強めの印象です。

特に、戦いに巻き込まれていく佑河家の鉄則が「(樹里の甥の)真の身の安全を図る」ことであるため、「普通」の家族が「異常」な状況に巻き込まれるという構図が、よりくっきりと浮かび上がります。

堀尾省太「ゴールデンゴールド」2017年マンガ大賞ノミネート!遅咲きの天才漫画家のプロフィールは?

堀尾省太は、広島県出身です。漫画を禁止された環境で育ったため、両親の蔵書に唯一あった白土三平作品を読みながら成長しました。高校生の時には、杉井サブロー監督のアニメ作品「銀河鉄道の夜」を音声だけ聞いて漫画に描き起こすほど、作品世界に没入した経験を持つ堀尾省太。アニメ業界を目指しましたが、周囲の反対にあって断念。

しかし、大学生だった1996年に、「磯助」で、講談社主催の新人賞「アフタヌーン四季賞」大賞を受賞します。他の受賞者の作品を読んで、自身の漫画家としてのレベルが足りないと感じた堀尾省太は、小学館「土竜の唄」作者の高橋のぼるや、小学館「月下の棋士」作者の能條純一らに師事し、アシスタントとして漫画制作を学びました。

デビュー作であり、初連載作品となった「刻刻」が雑誌に掲載されたのは2008年。新人賞を受賞してから、実に12年の時が過ぎていました。賞の選考を担当した編集者が、「天才過ぎてデビューできないと思った」と、遅すぎたデビューを喜んだという話も残る堀尾省太は、こだわりの強い性格です。本人曰くわがままだそうですが、「刻刻」では、特に「誰が何のために動くのか」という部分を大切に描いたといいます。

画力が高く、人物描写に定評がある堀尾省太。特に、知人の家族の正月風景を参考にしたという、「刻刻」1巻に登場する父と兄の生気のない表情は秀逸です。また、背景の描き込みが細かいところも見どころの1つ。「刻刻」は、デビュー作ながら「マンガ大賞2011」に、2作目の「ゴールデンゴールド」も「マンガ大賞2017」にノミネートされました。「マンガ大賞」は、マンガ大賞実行委員会が主宰する漫画賞で、書店員やマンガ通の著名人、有志の一般人らが「友達に薦めたい漫画」という選考基準で作品を選びます。

過去の大賞受賞作には、末次由紀「ちはやふる」や、荒川弘「銀の匙」など、アニメや実写映画化された作品もズラリ。2017年は、「ゴールデンゴールド」のほかに、「アオアシ」「ダンジョン飯」や、ドラマが話題の「東京タラレバ娘」などがノミネートされています。「ゴールデンゴールド」のキーとなっているフクノカミは、実はドラえもん的なマスコットが家に来る、という発想から生まれたとのこと。

そんなに可愛いものではない気はしますが、便利さと依存性の高さは、確かに似ていると感じられなくもないのかもしれません。天才漫画家が描く、孤島を舞台にしたホラーファンタジー「ゴールデンゴールド」。フクノカミの謎を考察しつつ、謎が明かされる時を待ちましょう。

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